2021年1月31日日曜日

140. FT8 False Decode

FT8でDX局をコールした際、実際にはリターンがないにも関わらず、あたかもリターンを得たように表示されてしまう現象、所謂 "False Decode" に遭遇するケースは少なからずある。これまでにFalse Decodeと思われる例は以下のとおり;



いずれの場合も次の特徴が見られる;
①SNR値が-24dB程度と低く表示されていること
②リポート値「R-**」が前回のシーケンスと異なること

過去、この二つの条件が重なった状況で「73」まで辿り着いたケースは殆どなかった気がする。後からCLUBLOGなどでチェックしてもNIL(Not in Log)となることが大半であり、
何局かにメールで問い合わせて返事をいただいた場合も結果は同じであった。以下、Falseではないか..という返信の一例。

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Hi Ken-san
I was working JA at that time, but I never heard you nor replied to you. The claimed QSO is not in log. The message you decoded is not from me but an false decode made by your software. This is a known "artifact" of FT-8 programs, as they are doing their best to decode. Unfortunately the software sometime use the information you have entered DX call and your call to do "qualified guessing" and do wrong. This results in false decodes.
Hope to work you next time.

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FT8 の挙動として先方がこちらの「RR73」が受信できない場合は、手動で数値を変えない限り「R-**」のシーケンスは同じレポートが繰り返されるのが基本。以下のケースでは先方局は「R-06」を4回送信しており、先方側のQRMでこちらの「RR73」が受信できないと判断し、Tx Freqを50Hz QSYした次のシーケンスで「73」を受領している。
各バンドをワッチしている時も、ごく稀にコールサインが文字化けしたりDTが大きくズレたものが見受けられるが、やはり厄介なのはリターンシーケンス(R-**)のFalse Decodeであり、見た目は通常のシーケンスと何ら変わらず、また得てしてNEWエンティティ局などをコールしている時に起きるため「今回のリターンはホンモノかも..」との期待あり、仕切り直すには躊躇するところ

しかしながら、未だ信号が届いていない相手に「RR73」を送り続けていると思うと、やはり徒労であり「RR73」を5回送出でタイムアウトすることは理に叶っていると考える。なお、SNRが比較的高く同じ値のリターンシーケンス(R-**)を繰り返した後で尻切れになった場合は、相手局のポリシー次第だが In-Logの可能性はある。


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False Decodeの原因は”Hint” デコード機能に因ると考えられ、JTDXユーザーズガイドにも以下の記載がある。


There are unavoidable false ‘Hint’ decodes caused by high sensitivity of the ‘Hint’ decoders, all of them have really existing callsigns in the decoded message. Similar to CW/SSB weak signal reception it is up to user to make own decision if received message is the wrong one.

「Hintデコーダーの高い感度ゆえ、デコードメッセージ内にあるコールサインを誤ってデコードしてしまうことは避けられないので、CW/SSBの弱い信号を受信する時と同じように、正しいかどうかはご自身で判断してください・・」といったところ。
微弱なデジタル信号の処理による通信という "scientific"なモードではあるが、最後はヒトの経験と勘で判断ーというアナログ的な要素もFT8の魅力ではあるが..

JTDXの現行バージョンでは ”Hint” ボタンはデフォルトでOnとなっており、疑わしい場合は上記2つの特徴から見極めていくしかない。特にSNRが低くデコードレベルギリギリで入感する局をコールしている時に起きる傾向があるため、早めに仕切り直しすることが肝心であろう。


2021年1月30日土曜日

139. DX運用日誌(85)

<1/26>V51WW (Namibia)on 20M
夕方17時すぎに14MHz FT8で9J2MM(Zambia)が入感しコールしていたところ
、15分程して同局が入感。両局とも何故か円滑にQSO(シーケンス)が進んでおらず、そのうち9J2MMが見えなくなったので同局を15分程コールしているとオランダ局からのコールと同時にリターンを得た。
アフリカ南西部のナミビアは、比較的アクティビティが高く同局で6局目となった。

<1/27-30>ZD8HZ (Ascension Island)on 20M
●1/27
今年になって何度かQRVを確認しておりチャンスをうかがっていた局である。
朝のショートパス伝搬に期待して、6時半頃よりPSKreporterで入感状況をチェック。7時前に18MHzから14MHzにQSYし北米局とのQSOを始めたことを確認しワッチしていると7時半になって-19dBで入感。
直ぐにコールしたところ「R-06」でリターンを得た。しかしながらシーケンスが続かず「RR73」を3回送信した後で「R-20」を受信。その後も異なる「R-**」をデコードするも他局へのリターンが見えないことやSNRが低い値であることから "False Decode"の可能性が高い。
8時過ぎまで他のJA局もコールされていたがこちらで再入感することはなく、CLUBLOGでもNIL(Not in Log)であった

●1/29
本日も早朝からPSKreporterをチェックしていると7時過ぎに18MHzから14MHzにQSYするいつものパターンで7時17分に-18dBで入感。DF:1445Hzに対して425Hzでコール開始。
SNRは次第に上昇してピーク-5dBとなるが一向にリターンが得られない..QRMを避けるため何度かTx Freqを変えてコールするもリターンはなく7時36分のデコードが最後となった。

後から確認すると、入感していた19分間にQSOされていた局は16局で、そのうち10局がJA局。コールしている途中で何度か送信を停止しeven側の状況をチェックすると、ピックアップされていたJA局のTx Freqが判ったものはDFを中心に±50〜100Hz以内が多く、
±1,000Hz以上離れてコールする局へのリターンは見当たらなかった。
同局が受信帯域幅を狭めているかは不明であるが、ピックアップの傾向として次回の参考としたい。

●1/30
5時半頃にPSKreporterをチェックすると既に18MHzでのQRV確認。その後、21MHzにQSYし6時45分頃から14MHzでのQRVを確認。北米の東海岸を中心に南米、ヨーロッパまで広範に多くのSpotが上がっている。
予めDFをチェックしTx FreqをDF-100Hzに設定して待ち構えるも、昨日の入感時間を過ぎても入感してこない..
今日はJAまで到達しないのかも..と思っていると10分ほどして-18dBで入感。DTが1.2secと高いため-1.0の補正を入れてコールしたところ4回目でリターンを得た。前回の”False Decode”が頭をよぎったが今回は無事「73」を受領。
これからコンディションが上がってくるかと思いきや、次に北米局をピックアップしたシーケンスを含め、デコードできたのは4シーケンスのみであった。8時頃まで複数のJA局がコールされていたが、同局の日課なのか8時前にQRTした様子でPSKreporter上のSpotも全て消えた。

入感時間は総じて短かかったものの、毎日ルーティン化した運用は狙っている側からすればとても助かる。今回、3日間集中したおかげで今月2つ目のNEW エンティティ(ATNO)をWkd&Cfmすることができた。





2021年1月23日土曜日

138. DX運用日誌(84)

<1/18>Caribbean's on 20M
朝8時前に14MHz FT8でキュラソー島のPJ2CFが入感。先週来よく入感しているが、なかなかリターンが得られずにいた。本日はSNRも良好であり10分程でリターンを得た。
その直後、ドミニカ共和国のHI8VJSが-20dBで入感。こちらも4回程コールしてリターンを得た。
その他にも、HI3AA、FG5FI、KP2B、8P8QA、PJ2MAN、WP4IRV、CO'sなど8エンティティが入感。カリブ側では日曜の夜の時間となるためかアクティビティが高い気がする。

<1/19> EP2HAM(Iran)on 40M
早朝5時前に7MHz FT8でEU局がコールしているのを確認。こちらでは入感しなかったが20分ほどしてイタリア局へのリターンが-20dBで入感。イタリア局が250Hz辺りでコールしていることを確認し470Hzでコール開始。
暫くデコードできない状況が続いた後で「R-09」のリターンを得た。しかしながらシーケンスが続かず、その3分後再び「R-20」でリターンがあり次のシーケンスでようやく「RR73」を受領。SNRは-23dBとギリギリであったが、QRZ.comによると先方は30Wライセンスにホイップアンテナとの事。よく電波が届いたと感心する。

<1/21> HH2MK(Haiti)on 20M
朝8時40分に14MHz FT8で入感。SNRがピークで-1dBを示しており、カリブ局ではあまり見かけない強さ(しかもハイチ)のため、当初 "Pirate" ではないかと疑念がよぎるが北米局にもリターンを返しており、そのままコール。
10分ほどでリターンを得て、その後も途切れる事なくQRVが続き、翌日にはLoTWにも反映された。ハイチのCfmはRemote Ham Radio(RHR)のHH2AAに続いて2局目となった。

<1/22> ZC4GR(SBA on Cyprus)on  40M
朝5時半頃から7MHz FT8をワッチ。いつもと比べてEU局があまり見えてこないと思っていたところ、ドイツ局へのリターンシーケンスを-20dBで確認。数日前に同局をコールするEU局は確認していたがデコードできたのは今回が初めて。
DFが454Hzと低かったが、EU側でのQRMを避けるため更にその下でコールしたところ、2局待ってリターンを得た。
SBA(Sovereign Base Areas)on Cyprus は昨年1月に14MHz SSBでZC4UWとQSOしているが、今回、7MHz FT8でのWkdはBand/Mode ともにNEWとなった。

<1/23> VP2ETE (Anguilla)on 20M
7時前にDXSCAPEでW局によるスポットを確認。FT4のためデコードは厳しいと思いつつPskreporterでJAの入感状況をチェックすると3局程がデコードされている。
7時半前から同局をコールされるJA局が見え始め、10分ほどして-13dBで入感。AutoTXで直ぐにコールしたところ「R+04」のリターンを得た。しかしながらデコードレベル以下に沈みシーケンスが続かない。5分経って再チャレンジし4コール目で「R+03」を得た。その後「RR73」を4回送出した後で「73」を受領できた。
FT4ではSNR-15dB前後がデコードできる限界でありギリギリでのWkdであったが、その後、コンディションが上昇しSNRは一桁台をマーク、小一時間ほど入感が続き、多くのJA局がQSOされていた。

アンギラの同局は昨年3月から狙っていたが、ようやくQSOできて今年初のNEWエンティティWkd&Cfmとなった。



2021年1月17日日曜日

137. DX運用日誌(83)

<1/10>8P6PE(Barbados)on 20M
朝6時過ぎに14MHz FT8でCQシーケンスを捉えた
。SNRが低かったもののコール開始後2分ほど経って、こちらのTx Freq(420Hz)にQSYするパターンでリターンを得た。


<1/11>PJ2SM(Curacao)on 20M
朝8時頃から14MHz FT8でPJ2CF,PJ2SMが入感。キュラソー島はカリブでは比較的アクティブなエンティティであるが、未交信局が同時に入感するのは初めて。SNRが良好なPJ2SMを選んでコールし10分程してリターンを得た。
PJ2CFに取りかかる直後、HH2JR(Haiti)のCQingが-20dBで入感。直ぐにコールするも、SNRが上昇し始めたこともありパイルアップが激しくなってフェードアウトするまでリターンを得ることはなかった。ハイチは既にHH2AAでCfmできているもののアクティビティは低く、同局はこれまで3回ほど確認しているがいずれも逃している..


<1/13>FG5GP(Guadeloupe)on 20M
朝8時前に14MHz FT8で入感。CQシーケンスの後デコードが続かなかったが、3分ほどコールしてリターンが得られた。比較的高いDF(2800Hz)でのQRVは、コールする側も高いTX Freqを選び易い。結果としてQRMが避けられるためか早い段階でリターンを得る確率が高い気がする。


<1/17>
●6Y5DN(Jamaica)on 20M
朝8時過ぎに14MHz FT8で入感。SNRが低くコールされているJA局も見当たらない。デコードレベル以下の状況が続くも諦めずに5分ほどコールしていると「R-11」でリターンがあり、無事「73」を受領できた。


●HLs / BY on 6M
15時半に50MHz FT8でHL2DAA(ソウル近郊)を確認。アンテナの向きが90°サイドにも関わらず、+1dBと強力に入感した。
17時半頃には複数のHL局と共に,BD2EI(ハルピン/1,600km)が+5dBで入感。夏のEsシーズンは近隣アジア諸国とのQSOを控えているが、この時期の入感は珍しいのでコールしてリターンを得た。



2021年1月10日日曜日

136. 50MHz DX Open

日曜朝のルーティンとなっている14MHzのカリブ狙いを終えて10時過ぎに何気なく50MHz FT8に切り替えると、Wide Graphの至るところで光影が刻々と赤く染まり始めた。
急いでアンテナを南方向に廻しているとVK1/2/3/5/7,ZL,KG6が入感。午前中のこの時間からオセアニアがオープンするのは初めての経験であり、一度に10局もデコードできるシーケンスがある一方、短い周期でSNRが乱高下するなど、いつもながら不安定な伝搬状態ではあったが、結果として3時間以上もオープンが続いた


●ZL7DX(Chatham Islands)Not Wkd
ワッチ開始当初からZL局が複数入感しており、昨日初めてデコードできたチャタム諸島のZL7DXのQRVに注視していると、期待どおり10時51分に-18dBで入感。
直ぐにコールするも、1エリア以外にこちらには見えないJA2/3/6局もピックアップされており、激しいパイルアップが予想される。また、次第にデコードレベル以下に沈むシーケンスが増え15分後には全く見えなくなってしまった..

コールを停止して暫くVK,ZL局に取りかかっていると11時37分に再び入感し、2回目のコールで「R-09」のリターンを得た。しかしながらSNRが-23dB程度と低いせいかシーケンスは続かず、その後何度かリポートを受領するも「73」は未受領
のままフェードアウトし再浮上することはなかった。

Log-Inされているかどうか不明であるが、QSLマネージャーが運営するOQRSの結果を
待つことにする。

年明けから何度かオセアニアがオープンしているが、これまでにデコードできたのは僅かな時間でありQSOに至ることはなかったが、本日は結果として、これまで未交信の21局とQSOすることができた。

夕方18時頃にはVK8,YB,BV,HL,KG6も入感するなど、久しぶりに賑やかや50MHz DXingとなった。



2021年1月4日月曜日

135. DX運用日誌(82)

<12/27> VK's open on 6M
午後14時過ぎに50MHz FT8でVK3OTが-22dBで入感。コール開始後、程なくして「R-06」でリターンを得た。その後、ポツポツとVK3が計5局ほど入感するも、その殆どがQSO済みであるためワッチのみ。VK5,VK7も入感しているようだが、こちらではデコードできなかった。

<1/1> New Year's Day
元日は8時頃から14MHz FT8でKP2B,HI3AAなどカリブ数局を確認するも"QSO B4"のためワッチのみ。
お昼過ぎからは50MHz FT8でZL,ZL7,VK3,4,5をコールされているJA局を確認するも、こちらでは入感せず。
50MHzは1年前と比べてこの時期のDXオープンの頻度が増えている気がする。本日はごく限られた方々がQSOされている様子であったが、やはりアンテナのグレードアップを改めて考える年明けとなった。

<1/3> YN1Y(Nicaragua) on 40M
16時過ぎから7MHz FT8で中米ニカラグアのYN1YをコールされているJA局が20局ほど見える。
こちらでは入感してこなかったが、40分ほど経過してようやく-19dBでデコード。しかしながら直ぐに沈んでしまう..更に8分ほどして-15dBで入感し、3コール目で「R-08」のリターンを得た。無事に「73」を受領した後、再び沈んでしまったことから信号がピークのタイミングで運良くQSOできたと考える。






2021年1月2日土曜日

134. 2020年振り返り

2020年はFT8でのDXを中心に一定のアクティビティを維持できた。コロナ禍の影響により、期待していたDX Peditionが中止・延期となる一方で、在宅勤務等が定着したことで結果的にNEWエンティティや50MHzでのDXを狙う機会は増えた。 

<QSO数>
一年間のQSO数は1,716となり、2019年のQSO数(2,254)と比較し3/4程度に留まった。要因は国内コンテストの参加が1つだけであったことと、狙ったDX局を呼びに回る運用がメインとなったことが挙げられる。
国内QSOの殆どは5月に50MHzで参加した東京コンテストでのQSOであり、DXが全体の9割を占めた。モード別にみると、やはりFT8が全体の約9割、DXに限定すると97%を占める結果となった。


<DXCC>
Mixedで259Wkd/251Cfmとなり、
2020年の期初目標とした250Cfmはクリアできた。
年間でのDXCCは特に追いかけてはいないが、結果として218エンティティをWkdした。

バンド別、エリア別のDX QSO状況は以下のとおり。QRVした4バンド中、奇しくも50MHzが最多となった。特にヨーロッパについては入感した未交信局は可能な限りコールしたことにより、260QSOまで伸びた。
エリア別には、50MHzを除きカリブとアフリカの未交信局をコールする運用スタイルがメインであったため、HFでのトータル1,007QSOの5割弱を占めた。

エンティティ最多は、アメリカで50MHzでのQSO数が要因。次いで南アフリカ、キューバとなった。

2020年にWkdできたNEWエンティティは、以下のとおり。FT8一辺倒と思いきやSSB/CWでのWkdが7エンティティあった。
入感&コールしたものの未Wkdとなったエンティティは、3V8SS(Tunisia)、EP3AA(Ethiopia)など。50MHzでは、JW7QIA(Svalbard)がNot in Log であったことが痛い..
今後、NEWエンティティを増やすチャンスは先細りの一方ではあるが、今年はMixedで270Wkdを目標としてアクティビティを持続させたい。