2023年6月18日日曜日

250. サブ機導入・ベランダアンテナ設置

無線設備の冗長化に向けてサブ機を導入。それに合わせてベランダにアンテナを設置した。

<サブ機の導入>
これまで無線設備としてはTS990一台で運用してきたが、購入から8年が経ち故障発生に備えて(DXペディション中の不測の事態に対処するため)サブ機を用意しておくことにした。

機種選定にあたっては、単に予備用とするのは勿体ないので、144MHz/FT8で近隣アジアを狙うことと、リニアアンプ(IC-PW1)を繋ぐ前提として、ICOMかKENWOODで検討したが、両者とも現行モデルでは候補機がないことから(ここ数年、発売を待っていたが)YAESUのFT991AMとしてネット通販で購入。

FT8運用で接続するPCはTS990と共有するため、操作で混乱しないようソフトウエアはWSJT-Xを使用して使い分けすることとし、JT-Linker経由で共有するTurbo HAMLOGにログデータを送る設定。

<アンテナの選定>
144/430MHzはタワー中腹のアームバーに設置したグランドプレーン(GP-5)に繋ぐが、HF~50MHzについては、既存のアンテナシステムから切り替える構成とせずに、モニター用途として2階のベランダに新設することにした。

アンテナの選定については、隣の敷地にはみ出さない形状と大きさ、台風時に撤収できること、そしてなるべく多くのバンドに対応(同調)していることとし、COMET社のUHV-9にカウンタポイズを取り付ける構成とした。セット品としてHAM通販大手で購入し併せてアンテナ基台(コネクタ付き)をamazonで調達。

<アンテナ設置・調整>
組み立てそのものは数十分で終わったが、各バンドのエレメント長の調整に時間を要した。
ステンレス製のエレメントは、予備品が付属してあるものの切断が必要となる調整が難しく(切りすぎると戻せない)、針金で代用してアンテナを定位置に上げてアンテナアナライザーでSWRを測定し調整を繰り返す手順で、これを各バンドで実施。

エレメントの調整に先立って、カウンターポイズ(5m×5本)をアンテナ基台から垂直に降ろして、ベランダに無造作に放置。長さをもう少し伸ばしても良いかも知れない。

各バンドともディップ点はピンポイントとなるため、全てFT8の標準周波数で調整。3.5MHzは、数ミリでも大きく変動するために追い込みきれず、ステンレス製エレメントを少し切りすぎたためディップ点が高めとなったが、実際に送信する機会はないであろうと考えて一旦終了。

50MHzは無調整でも使用可との説明があったが、HFの調整後に測定すると全帯域を通じて5を下回らない..ここから調整を行うと既に調整した他のバンドに影響する可能性があるのでそのままとした。
SWR値は以下のとおり;
  3.573MHz:6.0(3.610MHz:1.0)
  7.074MHz:1.1
14.074MHz:1.0
18.100MHz:1.7(18.000MHz:1.0)
21.074MHz:1.5
28.074MHz:1.7
50.313MHz:5.6 無調整
144.47MHz:1.4 無調整
432.17MHZ:1.1 無調整

給電点は地上高5mであり家屋からも近いため、7~28MHzのSWR値も落としきれないと思ったが使える範囲には治まった。


<運用所感>
設置後、14MHzで伝搬の良い時間帯にFT8をワッチしてみると、北米(東海岸)、カリブ、EU、中東が入感している。28MHzでは南米、50MHzでは、XV,DUもデコードできた。

メイン設備と同時受信して比較すると当然ながら入感局数は少なく総じてSNRは低いが、中にはマイナス一桁台を示す局もおり、全長2メートルの
短縮ホイップにカウンターポイズを付けただけで、これほどデコードできるとは思わなかった。

Newエンティティを追いかけず、単にFT8でDX QSOを愉しむことに特化するならば、この設備構成でも十分であることが判った。

2023年6月15日木曜日

249. VERSA Beamのポール折損 ②

VERSA Beam(KA1-404Lite)のグラスファイバーポール(以下、ポール)が折損した原因等について纏めておく。

ブームから取り外したAEU(Ra)や部材を見ると、焼け焦げや変形が随所に見られる。特にエレメントに直接触れる「ガイドパイプ」の焼損は激しく、炭化が進んでいる状態。




AEU(Ra)をメーカーに送り、想定される原因等について問い合わせ、1週間ほどで内部の写真とともに点検結果の報告を受けた。
メーカーによると、焦げたエレメントの位置から推測して7MHzでの送信時に高いSWR値で高電力の負荷がかかり、スパークしたのであろうとの事。

高いSWR値(2.0以上)のまま送信した場合、パワーメータ(KP1)のプロテクト機能により瞬時に送信ラインを遮断する構成にしているが、上記以外にスパークを誘発する要因がないことから
、例えばKP1の電源を入れ忘れた状態で7MHzに切り替え、その直後に誤って最大出力(400W程度)で送信したのかも知れない。※これも現実的には考え難いが..

上記を踏まえ、本事象の流れを整理すると以下のとおり;
昨年9月頃に7MHzで送信した際、高SWR値で高電力(400W程度)がかかる状況となり、最初のスパークが発生。
スパークは「ガイドパイプ」内のエレメント(7MHz位置)と「ポールサポート」を固定している六角ボルト(M6)間で起きたと考えられ、その結果「ガイドパイプ」の筒部分が焼け焦げた。
スパークしたもののAEU内部の電子回路は損傷しておらず、その後も通常どおりエレメントは伸縮し、SWRは1.2程度に留まっていたため異変に気づくことはなかった。
最初のスパークで焦げた「ガイドパイプ」の一部が炭化(導通化)したことで、その後の送信時(平常のSWR値であっても)に同一箇所で同じようなスパークが発生し「ガイドパイプ」以外にも「パイプラバー」「ポールサポート」そして「グラスファイバーポール」にまで焦げおよび発熱による変形が徐々に広がった。
「ガイドパイプ」の筒部分が焼け焦げて変形したため、エレメントを収納しようとした際、エレメントトップがAEUの定位置まで戻らず、結果、ホームポジションエラーが発生。
その後、更に焼け焦げ(炭化)が進んだことでエレメントトップの動線が再び確保され、結果的にエレメントトップがセンサー位置まで戻ることができ、同エラーは解消した。
その後もスパーク/発熱による変形が繰り返されたことで、最初のスパークから半年以上経って(今年5月)ポールの焦げた部分の強度が弱まったところに強風の影響で負荷がかかり折損した。

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再発防止としては、このモデル(Liteタイプ)の鬼門?である7/10MHzでの運用時、カタログ値の耐圧(600W/SWR1.2以下)を上限とせずに、基本はベアフット(200W以下)とすることが何よりであろう。

今回の折損で約3週間、HF帯(7-28MHz)の運用停止を余儀なくされたが、大きなDXぺディションがなかったことが不幸中の幸いであった。これが2月のBouvetの前に起きていたと思うとぞっとする。

<参考>部材名称








2023年6月14日水曜日

248. VERSA Beamのポール折損 ①

2021年4月に設置したVERSA Beam(KA1-404Lite)について、今回、ラジエーター左側のグラスファイバーポール(以下、ポール)が根本から折れるトラブルが発生。以下、経緯について纏めておく。


<2022年9月末>
AEU(Ra)のエレメントをホームポジションに巻き戻した際、KA1コントローラーの表示が「_234」となり、ステップモーターが空回りした後で停止(タイムアウト)する事象が発生。

メーカーに問い合わせたところ、エレメント伸縮時に何等かの影響でエレメントの先端部分が湾曲しAEU(Ra)のホームポジションセンサー位置まで戻らなくなったか、センサー回路の不具合が考えられるとの見解。

前回の不具合発生時と同様、ケーブル治具を送付してもらいケーブル断線等の可能性を探るも問題はない様子。

普段の運用には影響はないので、工事業者には都合の良い時に(近隣で工事があるついでに)点検していただくよう依頼。その後、同事象は散発的に発生したが、年が明けた頃には安定したため、特段、気にかけることもなくなった。
※結果論ではあるが、この時点でAEU(Ra)を点検し一部の部品を交換していれば、
ポールが折れる事態までには至らなかった..

<4/14>
何気にアンテナを見上げた際、ラジエータ左側の
ポールがビーム方向に僅かに曲がっていることに気づく。
例えば大きな鳥が飛来してポールに長く留まった場合、荷重が下方向に加わって歪曲するのであれば理解できるが、前方への曲がりは原因不明のため、工事業者にメールで連絡し先の不具合を含め点検を再要請。

<5/6>
朝から強風が吹いており、エレベーターでアンテナを降下させるかどうか思案していると、外からカンカンと何かを叩く音がする。
庭に出てみるとラジエータ左側のポールが折れて垂れ下がり、風で煽られてタワーに当たっている事が判明。

直ぐにエレベーターでアンテナを降下させ、強風の中、タワー中腹まで登って折れたポールを取り除いた。

ポールが折れた位置は、AEUとポールを固定する2か所の「ポールサポート」の中間部分であり、ここに外部から力が加わることは構造的にあり得ない。

当初、AEU側の「ポールサポート」のボルトが緩んだか、ヒビ割れが生じたことでポールの先端が抜けてしまい、もう片方の「ポールサポート」がテコとなって強風の力が加わり折れたのではないか-と推察したが、折れたポー
ルの断面を見ると、その一部が焦げており、単に物理的な力が加わったことが原因ではないことが判った。



メーカーおよび工事業者に連絡を取り状況を伝えたが、折損が起きた原因はAEU(Ra)を取り外して検分しないと判らないことから、ポールの交換品とAEU(Ra)の置換も想定し関連部材を送付するようメーカーに依頼。

数日後、メーカーから部材が到着し、後は工事業者と日程を決める段取りとして、暫く待機することにした。



<5/29>
5月末に工事業者から連絡があり、工事日は週明けの5/29で調整。当日は台風2号接近の影響で前線が停滞しており朝から雨の中での作業となった。

作業は効率的に時間をかけずに終わらせるため(タワー上での点検等は行わない)、ブームベース上のラジエータ部分を全交換することとし1時間ほどで終了した。


想定される原因等は別頁②に記載