2021年12月26日日曜日

183. ハイパワー変更(追加)申請①

5月より3.5MHzとWARCバンドの運用を開始したが、200W未満では3.5/10MHzのDXingにおいて力不足を感じることもあり、改めてハイパワー変更申請(空中線電力200Wを超える指定変更)を行うことにした。以下、時系列に纏めておく。

<11/7>
変更申請は前回同様、電子申請システムを利用。今回の変更は、現在ハイパワー免許を受けている7/14/21/28/50MHzに加え、3.5/3.8/10/18/24MHzを1kWとする内容。1.9MHzは3.5MHz用のInverted-Vにローディングコイルを付加する場合、耐圧の課題があり、また例え免許を下ろしてもこの住宅環境下でハイパワー運用は現実的ではないと判断し対象外とした。

設備構成はアンテナを除いて3年前
の申請当時と変わらないため、添付資料の大半は、前回使用したものを一部修正するだけで事足りた。

申請に用いた文書は以下のとおり;
1.変更申請書 ※電子申請システムで作成
2.無線局事項書及び工事設計書 ※電子申請システムで作成
3.添付資料
(1)送信機系統図
(2)他の無線局の設置状況を示す図面
(3)設置場所でのTV・ラジオ放送の受信状況一覧表
(4)アンテナの道路越境に係る確認書
(5)電波防御指針に基づく基準値に適合していることの証明書
  ①電界強度計算表(南側道路/最短近接住宅/南西住宅
  ②アンテナを中心とした平面図(広域図/詳細図)
  ③アンテナを中心とした立面図(南北面/東西面)
  ④アンテナの垂直面指向特性図(俯角減衰量計算用)
  ⑤アンテナの利得・エレメント寸法に関する資料
  ⑥給電線損失(フィルター挿入損失含む)に関する資料

添付資料は合計で15種類。全てExcelシート(A4/縦)で作成し、システム送信時のファイル容量制限を考慮して2ファイルに分けて添付した。
以下、新規作成したアンテナに関する資料。


<11/25>
補正依頼のメールが来着。思いのほか早く審査されているようであり、指摘はいずれも軽微な内容であった。要約すると以下のとおり;
●電界強度計算表への記載は、今回の変更申請分だけではなく、既にハイパワー免許を受けている周波数も併記すること
●アンテナを中心とした平面図(詳細図)に電界強度の計算を行なった3地点をプロットすること
●3.5MHzアンテナに係る空中線地上距離(平面)および地上高(立面)の測定は、給電点(バラン位置)ではなく、エレメント(ワイヤー)が地上および隣家に最も近接するポイントから測ること

11/28に上記を補正した上で添付ファイル(全て)を再送。

<12/8>
補正申請から10日ほどで「審査終了」のメールが来着。前回のハイパワー変更申請では審査終了時にメールは来ておらず(毎日ステータスが変わるのをチェック)不可解に思いつつメールを読むと、審査終了後の免許状交付に関する案内であった。
もしかして設備構成が何ら変わらず周波数の追加のみであれば、これで免許されるのか..と考えたが(検査事業者からも同様のコメントあり)翌日、関東総通局に電話で確認。

「このようなメールが届いたが、このまま免許されるのですか」と尋ねると「その内容ならば多分そうであろう・・」と曖昧な返答。理由が解せないので電子申請番号を伝えて調べてもらうと「確認したところ変更検査が必要でした・・」との事。

メールは電子申請システムからの自動配信のようであり、ハイパワー申請であっても「審査終了」のフラグが立つと一般の変更申請と同じ内容のメールが飛ぶらしい。真偽のほどは定かではないが..

翌日に120円切手を貼付した返信用封筒(角形2号)を同封して関東総通局に「無線局変更許可書」等の書類送付を依頼。

<12/14>
関東総通局から以下の書面が来着。
・無線局変更許可書
・アマチュア局変更申請者(200W超)に対する指示文書
・電波障害調査等の提出について
・アマチュア局検査申込書(様式1)
・アマチュア局検査事前点検表(様式2)
・電波障害調査依頼書/回答書(様式3)

無線局変更許可書の日付は12/8。電子申請開始から1ヶ月で指定変更工事の許可を得ることができた。
指示文書を含め様式類は、3年前と同じ内容であったが、唯一、国の検査を希望する場合「コロナ禍の影響で(検査までに)半年程度時間を要する場合がある」と朱書きされており、検査は前回同様「登録検査等事業者制度」に基づき検査事業者に依頼することにした。

翌日(12/15)関東総通局に「試験電波発射届」を郵送。試験開始日は12/18として、年内に電波障害調査を終わらせる段取りとした。


2021年12月12日日曜日

182. VERSA Beamのトラブル対応


今年4月末に設置したVERSA Beam(KA1-404Lite)のトラブル対応について纏めておく。不具合の原因はコントローラケーブル(36芯)の一部断線であったが、原因を特定し工事を終えるまでに3ヶ月を要した。

<発覚経緯>
9月初旬、7MHz/FT8でDX局をコールした際、リターンがなかなか得られない
と感じていたが、DX局はいつもどおり入感しているので特に気に留めずにいた。しかしながら流石に何日も続くのでこれはおかしいと思い、無線機のオートチューナーを外したところSWR値が跳ね上がった
アンテナアナライザーで全バンドをチェックしたところ、7/10MHzのみSWR値が無限大を示しており、KA1コントローラでラジエータのエレメントを伸縮させても一向に変化がない状況。

メーカーに問い合わせたところ、おそらくラジエータAEU(Ra)内部のコイルまたはリレーが損傷しているか、KA1コントローラの不具合が考えられるとの事。
KA1-404Liteの耐圧(カタログ値)は7MHzではFT8で600W(SWR:1.2以下)のため、リニアを用いる際には500W未満となるよう注意していたが、Band切替えの際にエレメントが伸びきっていない状態で送信しコイル等を損傷したのかも知れず、またエレメントの伸縮で容易にSWR値を1.1程度に調整できるにも関わらず、常時、オートチューナーを点けていたことが災いした。

<原因調査>
KA1コントローラをメーカー点検に出したところ「異常なし」とのことで返却。同梱されてきたケーブル断線の有無を点検する検査器具にコントローラケーブルに接続してメーカーが指定する導通テストを実施。

その結果、AEU(Ra)のライン(1-2/3-4番)および各AEUへの+24V給電ライン(32-35/33-36番)は正常であることを確認。一方で、ディレクタAEU(D1)のライン(9/10番)の導通がなく、KA1コントローラを操作してもディレクタのエレメントが伸縮しない(エレメントが伸び切っている)ことが新たに判明した。
上記より、7/10MHzのSWR値が無限大となる原因はAEU(Ra)の故障が濃厚となったが、ディレクタエレメントの伸縮不具合ついては、ケーブル断線が主な原因と考えられるものの、アンテナ新設(ケーブル敷設)から半年も経っておらず、また今年は台風被害もなくエレベーターによるアンテナの昇降も殆どしていない状況から、ジャンクションボックス内のコネクタ接触不良若しくはAEU(D1)の故障の可能性も想定した。

<AEU交換工事>
メーカーに交換用のAEU(Ra)、AEU(D1)の送付を依頼し併せて工事業者に連絡して工事日程を調整。
1ヶ月半ほど時間を要したが10月末に事前調査を兼ねて一度お越しいただき、ケーブル交換工事に先立ってAEU(Ra)を交換してみることに。これで7/10MHzのSWR値が改善すると思いきや、全く変化が見られない。ジャンクションボックス内でのコネクタ類の接触不具合もなく、再度、ケーブルの導通を確認したが問題ないことから、ここにきて振り出しに戻ること(原因不明)になった。

ちなみにタワー上からコントローラケーブルを揺らしたところ、KA1コントローラのホームポジションの表示「1234」の「34」が何度か消えたことから、ケーブル(芯線)の一部が断線していること(不安定)は疑いないことは判った。

<原因特定>
翌日、工事結果についてメーカーに伝えて原因調査を依頼。
後日、メーカーからメールにより回路図面が来着し、当初点検していなかったコントローラケーブルの19-35/20-36番も7/10MHz動作時にはAEU(Ra)内のリレー/コイルに+24Vを供給していることを確認、正常時には1.2kΩ程度の値(導通)を示す筈なのでチェックして欲しいとの事。
ケーブル検査治具で測ってみると、この部分の導通がないことが判明。併せてホームポジションにあるセンサー3/4のライン(27-35/28-35)も導通がないことが判った。

結果として、コントロールケーブル(芯線)の断線が全ての事象の原因である可能性が高いことから、ケーブルを部分的に置換しそれでも改善しない場合は、改めてKA1コントローラ、AEU(Ra)をそれぞれ交換する対応を取ることにした。

<ケーブル置換工事>
11月下旬にメーカーよりコントローラケーブル(15メートル/コネクタ付き)、ジャンクションボックス、予備用としてKA1コントローラ、AEU(Ra)が到着。
工事日は当初、11/30で予定を組んでいたが先方都合により12/11に延期。当日は二名でお越しいただき9時半頃より作業開始。

既存のコントローラケーブル(全長35メートル)を全て交換せずに、シャックからタワー中腹にあるアンテナアームまで敷設したケーブルはそのまま残して、そこに新たにジャンクションボックスを取り付け、そこからアンテナブームに設置しているジャンクションボックスまでのケーブル(可動部分であり、断線していると考えられる区間)の約15メートルを置換。その際、再びケーブル断線が起きないよう以下3点の補強を実施。
❶アンテナ廻転によるケーブルの捩れを緩和するため、アンテナブームのジャンクションボックスとローテータ間のケーブル円弧をこれまで以上に大きく取る。
❷ローテータ台座のケーブルガイドに沿ってケーブルに二重管チューブで巻いて補強。
❸アンテナアームの先端にPF管を取り付けて、それにケーブルを沿わせることで、エレベータによる昇降時に鋭角に曲がらないよう工夫。
ケーブル置換後、チェックリストを用いてケーブル検査治具で全ての導通を確認。

これで完治と思いきや、アンテナアナライザーで測定すると7/10MHzのみならず14MHzのSWR値までも悪化しており、ラジエータエレメントを伸縮しても数値が一向に変化しない.. 念のため新しいKA1コントローラでチェックするも変わりなく、AEU(Ra)を再度置換しても
改善しないことから、改めてジャンクションボックスの配線を点検したところ誤配線が判明。
配線を正すと全ての事象が改善されていることが確認できてようやく工事を終えた。

取り外したケーブル(約13メートル)の外観からは大きな傷などは見当たらず、断線箇所は特定できないがケーブルの捩れが原因であったと考える。工事業者によるとVERSA Beamを含め巻尺式のアンテナのコントローラケーブルの断線は(リリース当初は特に)少なからず発生したとの事。今後、不具合発生時に備えケーブル検査ができる準備を進める。