2019年8月25日日曜日

35. FT8運用日誌(4)

<8/24>
朝7時半過ぎに14MHzでH44MI(Solomon Islands)をF/HモードでWkd。その30分ほど前に通常モード/-18〜-24dB程度で入感しており、一度リターンがあったものの尻切れで終わっていた。その後、14.070MHzにQSYし再度コールしてRR73を無事に受領。尻切れの原因はQSBでフェードアウトしたか、終盤のシーケンスにおいてオンフレでJA局がコールし始めたことで上手くデコードできなかったことが考えられる。

<8/25>
●DX局が普段、Tx Freqをどのように設定してオンフレ若しくはスプリットでコールしているのか、ふと疑問に思って試しに14MHzでヨーロッパと北米がオープンしているそれぞれの時間帯にCQを出して確認してみた。結果は以下のとおり;

3回に分けて合計90分程度のCQランにより国内を含む50局からコールいただいた。サンプル数としては少ないかも知れないが、結果は、予想に反してほぼイーブンとなり、意外にオンフレで呼ばれることが多いと感じた。
地域別に見ると北米は全てスプリット設定であった一方、イタリアやドイツはオンフレの数が上回っており、ヨーロッパはオンフレの高い傾向が見られたが、何といってもコールする相手はJAであり、こちら側のTx Freqを比較的高い周波数(2,500Hz以上) に設定していたことから混信影響は無いであろうと考えて、オンフレでコールしてきたのかも知れない。

●この週末は、VP8LP(Falkland Islands)ほか、中南米方面で12局ほどQSO。FT8でのNewを含め、目新しいエンティティは以下のとおり;

<8/26>
22時過ぎ14MHzでMW3FLI(Wales)と交信。続いてNewエンティティとなるCU7AA(Azores)をWkd。いずれも、最初はスプリットでコールするもリターンが得られないためオンフレに切り替えた直後にリターンが得られた。
Tx Freq(DF) は固定しておくべき−との考えもあるようだが、相手地域(例えばヨーロッパ)でQRMにより全くデコードできない周波数で呼び続けていることも想定される。一方、QSYした周波数が、別のDX局のTx Freqと被っていた場合、そのDX局を呼んでいるJA局の邪魔をしてしまうこともあり(何度か同じ目に遭っているが..)、臨機応変に対応すべきであるが、その判断は難しいところ。
 

<8/29
早朝、7MHzでS79HP(Sao Tome & Principe)が-10dBで入感。スプリット・オンフレで呼ぶもリターンが得られず、CQingが続くうちにタイムアップ。夜になって14.080MHz/FT4でスポットがあったがソフトウエアが対応していないためデコードできず。21時半頃にFT8ではNewとなるGJ0KYZ(Jersey)とA41KB(Oman)をWkd。


2019年8月17日土曜日

34. FT8運用日誌(3)

<8/15>
21時過ぎに TO5M(Saint Pierre & Miquelon)をF/HモードでWkd。
このペディション局は、一昨日14MHz/CWで微かにに聞こえていたがQSBが深くコールするもQSOに至らなかった。本日、14.085MHz で-10dB程度で入感。当初Tx Freqを1,520Hzでコールしていたが10分ほど応答なく、先にリターンがあったJA8局が送信していた2,000Hz付近にQSYした後、2〜3分で応答が得られた。QSYが奏効したのか、たまたま順番が回ってきたのかは何とも言えない。


<8/16>
●朝の6時過ぎに7MHzでBand Newとなる5T5PA(Mauritania)を-20dBで確認。先方からR-22のリターンを得るもRR73がデコードできず、後からCLUBLOGでQSOを確認したがNot Foundであった...アフリカはこのほかにも9G2、ZSが-10dB程度で入感していたが、先にSV9RGI(Crete)とQSOしたところでタイムアップ(出勤時間..)。夏場のこの時期にロータリーダイポールでアフリカが入感しQSOのチャンスがあるのはFT8ならではかも知れない。

●夜になって、引き続き7MHzで南米のCE2BMW(Chile)、オセアニアのFK8HM(New Caledonia)、北極海のJW4PUA(Svalbard)をWkd。この他、ZS、W、HSともQSOして、FT8で 1day WAC を完成。また、この日、FT8DMC Special Event Stations の残り2局、TM8FTDM(France)、LX8FTDM(Luxembourg)と交信できた。

●FT8DMCからメールで Member Certificate が来着しており、早速、HPからAward申請用のソフトウエア(Ultimate AAC v2.3.41)をダウンロードし、試しに現時点で入手できる幾つかのAwardsの手続きを行った。FT8DMCのAwardsはWSJT-Xのログデータ(Adif)を用いてソフトウエアを介して申請するため、時間と手間が(費用も)かからない。
 

<8/17>
●昨日に続き、早朝から7MHzで9G2HO(Ghana)が入感。S/N -15dB程度であり、またDTが-2.1にシフトしていたためQSOは厳しいと思っていたが、数分前にQSOされていたJA局のTx Freqを調べ、その少し下辺りで何度かコールしたところリターンがあった。レポートは、-19dB/-20dBでありギリギリのところ。これがオンフレに集中してパイルになっていれば、リターンがあったとしてもRR73のデコードは困難であったかもしれない。QSB以外で、尻切れのQSOの原因(の一つ)は、同一Tx FreqでのQRMによるデコード不調だと思われる。それを運用でどうカバー(回避)するのか、まだまだ奥が深い...


●14MHzではEA8EN(Canary Islands)をWkd。+500Hzのスプリットで3分ほど呼ぶも無応答。その後、一旦、送信を中断して他の周波数を探したりしていると、1分ほど経ってからリターンがあり、慌てて戻ってレポートを交換した。Tx Freqを変えた次のシーケンスでリターンされるケースも何度かあり、中々先が読めない。

●19時頃より7MHzで北米の中西部、カリブ海から南米が多数入感。HH(Haiti)、PJ2(Curacao)を-15〜-20dB程度でデコードするも、大パイルとなり太刀打ちできず。Cuba3局、ColombiaとQSO。Cubaは7MHzだけで既に10局以上と交信できているが、カリブ海地域で、Cubaだけがこれほどにアクティブなのかは謎。Phone/CWで、一生懸命にCubaを追いかけた苦労は何だったのか...と感慨にふける。

<8/18>
●FTDMCの Award Manager からメール来着。申請したAwardsが専用URLからダウンロードできますよ−と言う案内。先ずは、Special Event Stations 全局QSOを記念して、FTDMC Anniversary Award(Bronze)を選択してダウンロード。シリアルは138番であった。

続いてALPA(Arab League Prefixes Award)。アラブ地域の22カ国のうち10以上(Level:1)の異なるプリフィックス局とQSOするもの。

最後は、OHCA(One Hundred Countries Award) 。FT8版DXCCといったところ。


●お昼前に14MHzでKH8C(American Samoa)をWkd。W局がQSOしているのを見つけビームを向けるもS/N -24dB程度であり、デコードできたりできなかったりの状況であったが、-19dB程度に上がってきたのを機に、Tx Freqを-100Hzに設定してコール。直ぐにR+01でリターンがあり、先方のシグナルも-06dB程度に上がっていた。
 



2019年8月13日火曜日

33. FT8運用日誌(2)

<8/10>
●22時過ぎにA91FTDMC(Bahrain)をWkd。このイベント局のマネージャーであるA91AAを数日間追いかけてきたが、-3dB程度で何度も入感するも「カラ振り」が続いていたので一先ず安堵。スプリット幅やオンフレへの変更、送信出力の調整(増減)と、様々な工夫を凝らすもリターンを得られずCQを出し続ける−という状況であった。

●A91FTDMCは+700Hzのスプリットでコールしてリターンがあったが、必ずしもスプリットが奏功するとは限らない。しかしオンフレで数局が呼びあった場合(Tx Freqが一致)QRMにより先方のデコード率が落ちると考える。DX局がオンフレで取っている場合でも少しTx Freqを上下にシフトした方がリターンの確率が上がる気がする。


<8/11>
●JTAlertXのWeb Services機能で、WSJT-Xのログデータをe-QSLに自動転送しているが、LoTWやCLUBLOGへのデータアップロードは、HAMLogからAdifファイルを抽出して転送している。
WSJT-XでQSO成立後の情報をJT_Linkerで、一旦HAMLogにデータを送り、その際、時刻などを調整している場合があり、必ずしも完全一致していない。
このためeQSLへのデータ転送もHAMLogからのデータを定期的にアップロードすることで統一した。

●FT8で改めてWASを追いかけるためARRL WAS Map をダウンロード&プリントして手書きで進捗を確認。7エリアが殆どできていない(これまで全くコールしなかった..)ので、急いで呼びに回る。


<8/13>
●早朝から東海岸〜南米が入感しており、6時過ぎにPZ5RA(Suriname)を確認。オンフレ近くでコールしてリターンがあるが、R-5〜R-8を送るも先方からの「RR73」がデコードできず暫くして他局と交信を開始。その後、再チャレンジで呼び続けていたらRx Frequencyに「IN LOG」のメッセージが返ってきた。DTのズレ( 0.4)が同局と同じであったためQSO成立として記録。

●FT8/WASのためにデコードできた局をQRZCQ.com でチェックするも、なかなか新しい州が見つからない。そうこうしているうちにTO8FTDM(Guadeloupe)が見えてきたので、こちらにシフト。先ずこの局とQSOしているアジアの局がどの辺りのDFで呼んでリターンを得ているのかを探して、その近辺でコール。(主にEUとQSOしているがこちら側には見えない)暫く呼ぶも無応答が続きデコードレベルも下がってきたので諦めかけたが、+750Hzのスプリットに再設定しコールした結果、R-17でリターンがあった。
蛇足だが、パイルアップの中、コールしている最中に他局からのコールを受けて「レッドバー」が表示されて思わずぬか喜びすることも結構ある。。。

反対の立場で考えると、ヨーロッパのとある局が未Wkdのペディション局を一生懸命にコールしている最中にJAからコールされたらどう思うか..
タイミングをよく考えてコールしないと、せっかく相手側でデコードできていてもリターンが返されないかも知れない。

●FT8の各種アワードを発行している「FT8 Digital Mode Club」が FT8DMC ANNIVERSARY ACTIVITY WEEKS 2019 として、8/24までQRVしており、これまでにA91(Bahrain)、OD5(Lebanon)、OE19(Austria)、ZL6(New Zealand)、II8(Italy)そして今朝方のTO8(Guadeloupe)をWkdし、このイベント局でNewを2つ伸ばせた。残る2局と交信できれば、Bronze Awardが入手できるらしい。。。




2019年8月10日土曜日

32. FT8運用日誌(1)

FT8運用での気づき(デジタルモードではあるが感覚的な話)をDX局との交信状況と併せて日誌的に記録しておく。

<7/24>
WSJT-Xをインストールして4日間ほどは、パラメータ設定、動作の確認とQSOの様子を眺めていたが、14MHzでNewエンティティである3D2MP(Fiji Islands)をデコードしたことをきっかけに最初のQSOを行った。結局、この日は16局と交信したが、その中でようやく8J1RL(南極昭和基地)をWkd。その後もE44WE(Palestine)、4S6NCH(Sri Lanca)、TF5B(Iceland)と、初日で5つのNewを増やすことができた。


<7/25>
夜の21時頃から中近東、ヨーロッパが開けており、先ずはOD5ET(Lebanon)をWkd。その後、23時過ぎにV51DM(Namibia)とQSO。当初の数分間は+1,500Hzのスプリットで呼び続けていたがリターンが得られないため、一旦オンフレに戻してコールしたところ「R-06」でリターンがあった。
次のシーケンスでこちら側から自動送出する「RR73」でソフトウエアの「Log QSO」画面がポップアップするが、この動作でQSOが成立したものと安心してしまい、先方から「73」を受領したかどうかよく確認せずにQSYしてしまった。詰めの甘さは、まだまだ不慣れな証拠。

<7/26>
昨日に続き、14MHzで中近東からヨーロッパが良く入感しているので、試しにCQを出してみた。直ぐにポーランドからコールされて、その後、ロシア、ドイツと続く。またCQを出さずとも、最後のシーケンスを待たず、若しくは未だこちらがDX局を呼んでいる最中にコールされることも多々ある。こうした交信スタイルが普通のことなのかは不明である。
この日はZONE34のZ81D(South Sudan)とも交信でき、WAZ(MIX)完成まであと一つとなった。

<7/27>
夕方の7MHzで東海岸、カリブ、南米が開けている。Phone/CWでは中々QSO出来なかったCO(Cuba)と4局続けてQSO。その後、C6ADX(Bahamas)をWkd。直ぐにLoTWにUpしてくれた。この辺りのスピード感もFT8の特長。

<7/28>
●早朝、0454時に7X2TT(Algeria)をWkd & Cfm。続いてZD7MY(Saint Helena)とQSO。この時「R-18」のリターンがあったが「RR73」の受領未確認のまま終了。先方が送出していないのか、こちら側でデコードできていないだけなのかは不明。「RR73」「73」が未確認でもQSOが成立している場合もあるようだが、相手次第ではある。

●FT8開始後、4日間で立て続けにNewが増えるため(後になってビギナーズラックであったことを思い知るが..)、この土日は、Phone/CWは殆どワッチしなかった。また、深夜や早朝もよく入感しているため、ここ暫く寝不足気味が続いている。。。

<8/3>
お昼頃からオセアニアが開けておりVK9APX(Lord Howe Island)をWkd。
夕方には、50MHzでHong Kongが入感しVR2ZXPと1st 6m QSO。今季、6mでのEsマルチホップによるヨーロッパ方面のピークは過ぎており、いつもながら「もっと早くやっていれば良かった..」というところ。
19時頃から7MHzで北米の中西部、東海岸が入感し始めたので、LoTWのWAS Account を見ながら未交信州の「マス埋め」を開始。

<8/4>
日曜日の朝9時、WAZの最後の一つとなったZONE2のVY0ERC(Nunavut Canada)をWkd。同局は昨日にQRVを確認しており、また、朝方の真北方向でCY9Cが入感していたため、この時間帯にこの方面のパスがあると考えて、早くからビームを向けてワッチしていた。デコード確認後、2回ほどのコールでリターン。QSO後、最難関ZONE?のせいか、けっこうなパイルになっていた




<8/5>
早朝6時過ぎに5T5PA(Mauritania)をWkd。FT8運用開始時に初めてコールした局であったが「-11」のレポートを受領後「R-10」を送るも尻切れとなっていたので、今回、交信できて安堵。

<8/6>
FT8では多くのZS(South Africa)が見えてくる。この日、試しに見つけてはコールしていった結果、8局と交信できた。ZSに限らず、FT8では、A4、CO、HB9、TA、VUなどがアクティブな気がする。CO(Cuba)も複数局が同時にQRVしているのを何度も見かけるが他のカリブは確認できない。

<8/7>
CY9Cのペディション最終日。これまでCWでは微弱かつQSBでとても呼べる状態ではなく、FT8でも中々デコードできないため半ば諦めていたところ、20時前に帰宅してDXクラスターを見ると14.090MHz でスポットされており、かねてからの練習どおりF/Hモードに設定変更して呼んだところ2回ほどでリターンがあった。こちらから「-16」を送ると先方からは「R+06」が返ってきた。これは、先方が複数局同時に信号を送っているためと推察する。その後、CWでもQSOが出来た。CLUB LOGでQSOを確認してドネーションを含めてQSLを請求。


<8/8>
FT8は、ソフトウエアからログデータの連携が容易のせいかeQSL発行も盛ん。FT8運用開始後、複数のSWLからもレポートが寄せられてきたり、各局ともデザインに工夫を凝らしたカードが多いことから(Phone/CWで受領したQSLと比べると)、メンバーシップをBronze Member にアップグレードし新デザインのカード(夏バージョン)を作成した。もっとも、受領したQSLカードがDXCCでカウントされないので見て終わるだけだが。。。


<8/9>
当初、DXCC(MIX)におけるNewエンティティとLoTWで未だコンファームできていないエンティティを選んでコールしていたが、せっかくなのでFT8だけで、どの程度エンティティを伸ばせるのかを意識し運用を行った。実稼働ベース14日間の交信実績は以下のとおり。

この時期にNewエンティティを21も増やせたことは大きい。特に最初の4日間で、アフリカを含む14のNewエンティティとQSOできたのはビギナーズラックの感がある。
FT8での合計エンティティは120Wkdであり、夏場のコンディションでこの出来高からすれば、秋のDXシーズンに更に期待が高まる。

2019年8月9日金曜日

31. FT8運用開始

7月後半からFT8運用を開始。導入時のポイント・所感などを纏めておく。

<運用に至る背景>
●SSNのボトム期および夏場コンディションのため、遠距離、特にヨーロッパ、アフリカ、カリブ方面のコンディションが悪く、DXクラスターにスポットされる未交信のエンティティは、FT8ばかりの状況。。。

●追いかけていた1A0C(マルタ騎士団)は、14MHz CWで入感するもコールできる強さではなく結局逃してしまうが、FT8では多くの局がQSOできていた様子。

●FT8を始める上でのハードルは殆どなく、無線機とPCをUSBケーブル一本で接続しソフトウエアのインストールとPCのパラメータ設定のみ。免許は既に電波型式F1Dを受けており、また関東総通局において2018年3月に工事設計書における記載の簡略化が行われ、無線設備系統図にPCとの接続図と諸元表を追加した資料を提出すれば完了。

●「マウスクリックによる自動交信は、醍醐味に欠ける・・」と言った意見はあるものの「食わず嫌い」のままでいるのも惜しい。。。

<セッティング>
●無線機とPCの接続は、USBケーブル(A-Bタイプ)一本。当初、自宅にあった2mものと30cmものを継いで接続したが、後日、秋葉原で5mケーブルを購入。変調信号を無線機との間で授受するため、回り込み防止用に両端にフェライトコアを5回巻きで仕上げた。


●ソフトウエアは、DXペディションモードが搭載されているWSJT-X(v2.0.1)をダウンロードし、ネットの解説記事を参考にしてパラメータを設定。併せて、ログデータをHAM Logに転送できるようJT_Linker(v2018.08.08a)と、QSOの重複チェックが可能となるようJTAlertX(v2.14.1)をインストール(後日)した。

<ファーストインプレッション>
●バンドがオープンしている時は、さながらDXコンテストのようなひしめき合いーという印象。

●交信相手を探し、コールしてリターンを待つ−というQSOの流れ、なかなかリターンが得られずにやきもきしたり、コールバックがあった時やQSOに至らなかった時の一喜一憂は何ら変わりない。

●コールするタイミング(間合い)や、相手国・地域でのバンドの混み具合を想像しながら、どの辺りにTx Freqを設定してコールするかを考えるなど、FT8独自の工夫・知験が求められる。

●CWでは(微弱・高速の)モールス信号を聞き取ってコールサインを確認するーといった「先ず相手を確かめる」というプロセスが必要であるが、FT8では一切不要。即ち、コールサインを確認するための手間や間違ってしまう虞が無い分、とても効率的に交信を進められる。「相手が見える」とは、このことであり、FT8モード最大メリットのような気がする。

●約15秒に一度、入感(デコード)した局がリスト表示される。JTAlertXを用いると最大27局を同時に確認できるため、目当てのエンティティを探すのが便利。むしろ表示されている数秒間で相手を特定してコールするのはなかなか忙しい。また、Band Activity画面からは、どの地域でどの方面が開けているのかが一目瞭然。さながらDXクラスターの画面を見ながら相手を選んで交信している感覚。

●自動シーケンスでレポート交換される信号レベル(S/N +22dB〜-24dB)は、ほぼ実測値であり、Phone/CWのように定型レポート(59/599)を交換しないため、交信相手や他のJA局とのデコードレベルの差異から色々と推察できる。

●DXCCを追いかける手段としてFT8を用いる場合、Phone/CWと同様「耳の良さ」が最も重要。端的に言えばデコードできなければ何も始まらないということ。例えば、今年のトップシーズンは終了した50MHzのマルチホップDXでイタリア、ロシアそれぞれ一瞬だけデコードできたが、この時期でもヨーロッパと難なくQSOしている各局は、8エレ以上の構成が主流のようである。

●これまでPhone/CWでは、あまり聞こえなかったエンティティがFT8ではアクティブにQRVしている気がする。具体的には、CO(Cuba)、HB9(Swiss)、VU(India)、TA(Turkey)、ZS(South Africa)、VK6/8といったところ。既に5局以上交信できたところもある。


●ソフトウエアを用いたデータ通信のためかQSO終了後、LoTWへの反映が早く、またeQSL発行対応の局が多い。

<運用面の気づき>
●微弱なDX局を狙う場合、アンテナの僅かな向きで信号レベルやでデコードの可否が変わるため、ローテーターを頻繁に操作するようになった。

●受信しているDX局と同じシーケンスで強力局(+15〜+22dB)が現れると、DFが離れていても、そのDX局がデコードができなくなる場合がある。また、JTAlertXで見ているとデコードしている局数が減少する。強い局の影響で微弱なDX局がかき消される構造はPhoneの運用に近い。
対策としてAGCをFastとし時定数を最も早い設定(Level:1)としているが、AGCを
オフにしてRFゲインを絞った方が有効となるケースが多い。どの程度までRFレベルを下げても微弱局がデコードできるのか(限界レベル)試したところ、Sメーターで10dB程度まで絞ってもデコード自体に影響は出なかった。結果として、FT8ではAFゲイン(ボリューム)よりもRFゲインを操作することが増えた。

●JAの強力局が送信するシーケンスの反対側や近いTx Freqではコールしないよう注意しているが、Newエンティティを狙っている場合でない限り、そもそもバンドを変えた方が賢明。あとDX局と
交信中のJA局の後半シーケンスで、同じTx Freq、例えばオンフレで被せないよう注意が必要。DX側がQRMでデコードできなくなり迷惑がかかり、交信時間も延びてしまう。

●QSOの成立は、相手からの「RR73」「73」がデコードできていれば確実ではあるが、呼んだ相手から例えば「R-14」受信し、こちらから「RR73」を送信したタインミグで自動的に「Log QSO」ウインドウが立ち上がり、OKをクリックすればQSO成立と(こちら側では)記録されるが、相手にこちらの「RR73」がデコードできているとは限らない。特に微弱局には注意が必要。

●相手をコールする際、GL(QM05)から送るシーケンス(Tx1)を省略し、レポートから送るシーケンス(Tx2)が選択でき、交信時間の短縮となるが、この場合、先方からの最初のシーケンスは、例えば「R-8」であり、それを受けて次にこちらが「RR73」を送出すると先方からの最後のシーケンスは「73」となる。しかしながら、なぜかこの「73」が返ってこない(或いはデコードできない)ケースがあり、結果、手動で「RR73」を送り続けることになるため、かえって手間がかかる。Tx1からのシーケンスの方が順序として先方から「RR73」が返ってくるため、交信を確実にしたい場合、こちらを選ぶことが得策かもしれない。

●送信出力は、ある程度のS/N(-10dB以上など)でデコードできていれば、100W以上の出力は大差がない。また、交信相手と送受する信号レベル差が大きすぎると(相手に-16dBを送って、こちらには+00dBをもらうなど)気まずい感じはするが、信号レベル差は単に送信出力の違いとは限らず、また反対のケースもあるため、どの程度の出力が適正なのかはケースバイケースといったところ。
変調レベルについては、ALCを振らす・振らさないの議論があり、メーカーによってもALCに対する説明は多少異なる。微弱なDX局をコールする際は、ソフトウエアのPwrインジケーターを10段階のうち3レベルにしておき、無線機で15W程度でドライブをかけ出力250W程度にしていれば、信号レベルのバランスが取れている感じがする。