2026年10月14日水曜日

340. JTDX Contest Edition v3.0.0






FT8のソフトウェア「JTDX」の派生プロジェクト(A free fork of JTDX)として、CE3TSK(Tihomir Sokcevic 氏)が開発した「JTDX Contest Edition」が公開されている。

これは、オリジナルのJTDXをベースにFT8のデコード性能の向上や新機能の追加を目的としたもので、GPL v3ライセンスに基づくオープンソースソフトウェアである。

今回、JTDX v2.2.159からJTDX Contest Edition v3.0.0に移行して運用を開始したので、主な特徴と実際に使用した所感をまとめておく。


<デコード処理の特徴>


JTDX Contest Editionの大きな特徴の一つが、Pipeline(パイプライン)と呼ばれる処理方式である。

従来のJTDXでは、15秒間の受信周期の終盤から受信終了後にかけてデコード処理を行い、その結果を基に次に送信するメッセージを決定している。

一方、JTDX Contest Editionでは、まず次の送信メッセージを決定するために必要なデコードを短時間で完了させ、その後もバックグラウンドで追加のデコード処理を継続する。

この追加処理では、異なる条件での再解析や複数のデコード手法を組み合わせることで、最初のデコードでは検出できなかった信号の検出を試みる。追加解析は次の受信周期まで継続され、自局送信中の時間も活用することで、最大約29秒にわたって追加の信号探索を行える。

さらに、追加解析で得られた局の情報を4周期分保持し、後続のデコードに活用する Hint Memory 機能も搭載されている。

つまりPipelineとは、単純にデコード回数を増やす仕組みではなく、まず交信継続に必要なデコード結果を得た上で、その後も追加解析を継続することでデコード性能の向上を図る処理方式である。

<微弱信号のデコード性能>


FT8運用で個人的に重視しているのは、1ピリオドでのデコード数を増やすことではなく、デコード限界に近い微弱信号(SNR:−24~−26 dB)のデコード率を高めることである。

開発者による比較試験では、従来のJTDX v2.2.159に比べ、FT8のユニークメッセージ数が約27.5%増加したとあるが、この数値は特定の録音データを使用したベンチマークの結果であり、−24~−26 dBの微弱信号に限定したものではない。それでも、デコード率の向上を示唆する結果と言える。

なお、FT4では従来SNR-14dB前後が実用的なデコード限界であったが、JTDX Contest Editionでは、-20dB程度の信号もデコードできている。

FT8において、実際にどの程度デコード率の改善が見られるのかは信号強度や混信状況、デコード設定などに左右されるため、実運用を通じた検証が必要であろう。

<機能と操作上の特長>



❶SuperFoxモード対応


DXペディション向けのSuperFoxモードに対応するデコーダーが実験的に実装され、SuperFox信号の受信・解析が可能となった。これにより、SFHモード時にWSJT-Xに切り替える手間がなくなったのは大きい。

❷FT2の実装


FT4よりも短い周期で通信する高速デジタルモードであるFT2が実装されている。

❸GUIの進化


JTDXの慣れ親しんだ操作性を維持しながら、日常的な運用の使い勝手も改良されている。
・Band/Modeボタン: ワンクリックで切り替えられ、操作性が向上。
・アメリカの州表示: WAS Award に便利な州表示(例:DE)が実装。

❹多様なデコード設定


デコード性能とCPU負荷のバランスに応じた複数のプリセットが用意されている。処理負荷を抑えた設定から、デコード数を最大限に増やす設定まで選択可能。さらに、個別に条件を調整するカスタム設定にも対応している。

<気になる点>


特に課題とまでは言えないが、気になる点としては以下の2つ。

・Phantom Decode(ファントムデコード)の発生


従来のJTDXでは殆ど見られなかった Phantom Decod
e( ※実在する信号の誤読ではなく、存在しない信号をデコーダーが生成してしまう現象)が増えた印象は否めない。ただしFalse Decodeとは異なり、明らかに不自然なデコード結果である場合が多く、また赤色の下線で表示されるため、判別は比較的容易である。

・CPU負荷の増加

デコード設定を高く(深く)すると、CPU負荷も増大。FT8 decoding presetsの「O:Most results」のような高設定では、バックグラウンド処理などによるCPU使用率が上昇する。

ただし、今のPC環境では、処理能力そのものに問題はなく、高負荷時にはCPUファンの動作音が少し大きくなる程度。

<まとめ>


JTDX Contest Edition を使い始めてまず感じるのは、やはりGUIの改良によって使い勝手が向上したこと。一方、 Phantom Decode の発生は気になるものの、実用上の大きな支障はない。

今後は、デコード設定による違いも含め、微弱信号をどの程度デコードできるようになったのか、実際の運用を通じて検証していきたい。