2020年8月2日日曜日

115. FT8運用 一年間の振り返り

2019年7月末からFT8の運用を開始して1年が経過したことから、DXを中心にこれまでの状況を振り返っておく。

<総括>
1年間でWkdしたエンティティは229、CfmはLoTWのみで216エンティティ(94%)となった。バンド毎の実績
は以下のとおり;

NEWエンティティをどのバンドでWkd(1st QSO)したのかをチェックすると、14MHzが全体の73%を占める一方、アフリカ、カリブなどQSOの難易度の高い地域では7MHzでのWkdが効いている。

7MHzだけでWkdできたエンティティは以下のとおり。ロータリーダイポールにもかかわらず、早朝のアフリカ、ヨーロッパ、夕方のカリブ、南米などがよく入感したこともあり、Band NEWとしては194エンティティまで伸ばすことができた。

同じダイポールアンテナを用いている21MHzについては、ハイバンドのコンディションがボトム時期であることから殆どワッチしていなかったが、今年4月に複数のアフリカ局(以下)と立て続けにQSOできたことを契機に、現行設備で先ずは100エンティティを目指すことにした。

50MHzは、NEWエンティティの殆どが今年5月から7月末のEsマルチホップによる成果である。詳細は下段に記載。

今年3月頃からコロナ禍の影響で、幾つものDX Peditionが中止(延期)となった一方で、在宅ワーク等によりワッチする時間を確保できたことでWkdできたエンティティもあった。

<QSO数>
DXのQSO局数を増やすことは特に意識しておらず、ワッチを重視してCQを出すことも殆どなかったが、QSO数は全体で2,300を超えた。これは、FT8運用以前の1年間のQSO数と比較して2倍となる。
Wkdしたエンティティと局数をエリア別に見ると、ヨーロッパが最も多く60エンティティで499QSO、次にアフリカが35エンティティで299QSOであった。

アフリカとカリブは、基本、未交信局はコールすることにして、結果、交信局数も伸びた。QSO数が最も多いエンティティは、アフリカではZS(South Africa)の132 QSO、カリブではCO(Cuba)の79 QSOであった。

ヨーロッパは珍しいエンティティを除いてコールすることは少なかったが、HB9(Swiss)については一年間でどの程度QSOできるのか試してみることにして、入感局を積極的にコールしたところ計76 QSOとなり、最多のUSA(236QSO)、South Africa、Cubaに次いでの局数となった。

50MHzでは、近隣のアジア地域(Asia❶)であるHL,BY,BV,VRについては、5月中旬頃からは入感してもコールすることは控えたが(ワッチに専念するため)、その他のエンティティは未交信局であれば基本コールした結果、QSO数は500を超えた。

<50MHz>
①サマリー
今年の5月〜7月とそれ以前に分けてWkdしたNEWエンティティとQSO数の分布を見た。
統計的には5月からの3ヵ月間でBand NEWを65エンティティ増やしたことになるが、近隣のアジア局を除き、実態としては、5/7のKG6DX(Guam)から7/22のEI2CN(Ireland)までの2.5ヵ月間で60エンティティをWkdしたと言える。

入感したもののQSOに至らなかったエンティティは以下のとおり。ヨーロッパ、アフリカの未Wkd局は、総じてSNRが低く数回のデコードに留まったことが原因として挙げられる。

OM諸氏のブログを拝見すると、今年のコンディションは昨年と比べかなり優れていたと異口同音に評されており、6エレ八木シングルでありながら、多くのエンティティをWkdできたのは、良好なコンディションに依るところが大きいのかも知れない。

送信出力は、DX局の地域やSNRの高低にかかわらず、総じて600W程度とした。先方のSNRが-20dB以下の場合やQSBが激しい状況でリターンを得た際には、有効であったと考える。
但し何度かリニアアンプの電源を入れ忘れてコールし、30W程度の出力でも難なくリターンを得たケースもあり、先方にシグナルが届いてさえいれば、QSOのチャンスは送信出力に大きく依存しないと考える。

②エリア別状況
ヨーロッパは36エンティティをWkdし251局とQSOできた。エンティティ別のQSO数は以下のとおり;

オープンの頻度としては北欧、東欧が多かったものの、QSO局数はアクティビティの高いドイツ、イタリアが上回った。
5/18の夕方に初めてのヨーロッパ局となるSV9CVY(Crete)が入感した時は、これほどのオープンになるとは予想だにしなかったが、6月後半になると「またイタリアか..」などと贅沢なことを思ってしまうほど連日の賑わいであった。

アフリカは、現行設備では入感することは無いと思っていたが、4エンティティをデコードし、そのうち2エンティティをWkdできた。特にアフリカ大陸の中部に位置するTR8CA(Gabon)とQSOできたことは今季6mDXでの大きな収穫であった。
北米については、夏至前までは、北東部からフロリダ辺りがオープンすることが多く、後半は西海岸に偏っていた気がする。短く深いQSBが特徴でありリターンを得ても「73」をなかなか受領できないQSOが散見された。WASの進捗は28/50であり、まだまだ先は長い。

カリブ、南米については、何度かHI(Dominican Rep)、
HC(Ecuador)をコールされているJA局を見かけたが、こちらでデコードできたのは、ZF1EJ(Cayman Islands)のみであった。

③運用所感
HFでのFT8運用と比べて異なるのは、近隣アジアを除き、入感している時間が短く且つ地域が限定的(流動的)であることから「いち早くDXを見つけてコールする」常套手段が通用しないことであった。

地域性なのかアンテナ特性(フロントゲイン/入射角)に依るものか不明であるが、往々にしてパイルアップになり始めた頃にようやくデコードできるケースが多く、直ぐにデコードレベル以下に沈む状況では、コールしてもリターンを得ることは厳しかった。

また、リターンを得ても「73」未受領で終了するケースも散発し、既にフェードアウトしている場合は、再トライができない。
自然現象に左右される要素が強いことも6mDXの難易度を高めている。

オープンの予兆から気が抜けず、入感する(かもしれない)数分程度のチャンスを見逃さないように集中しているのは神経を使う。しかもチャンスを逃すと次にいつ訪れるかは解らない..それ故、設備面と運用面で工夫を凝らし、NEWエンティティをWkdできた時の達成感は大きい。この辺りが
6mDXの魅力だと考える。