2026年5月22日金曜日

327. FFT画像を用いたノイズ測定の手法比較

先月、TS-990 のバンドスコープ(FFT画像)を用いてノイズ低減効果を評価する際、マルチモーダルAIで画像の“見た目の変化”を観測した。

その後、同じ画像をプログラム言語の Python を用いて解析したところ、算定した数値(px/dB)に差異があり、また、ノイズの変化量自体が小さいため目視との比較でどの程度の変動があったのか判り難かった。

そこで今回は、肉眼でも明確に差が見える画像を用いて、
①目視、②AI視覚推定、③Python解析
の三手法でどの程度一致するのか(変化を捉えられるのか)を検証した。

■使用画像


使用した画像は、TS-990 で 50.350 MHz を受信した際の FFT 表示で、 上段がダミーロード終端、下段がアンテナ(CL6DXZ)接続時のもの。

ダミーロード接続時は無線機の内部ノイズ(スパイク成分)のみであり、 アンテナ接続時は内部ノイズに外来ノイズが加算され、ノイズ床全体が持ち上がっていることが肉眼で確認で
きる。


測定条件は以下のとおり。
・測定時間帯:深夜 1 時(信号の入感がなく伝搬状態が安定している)
・TS-990:AGC Off / P.AMP On / NB・NR Off / Filter 2.4 kHz
・SCP:Grid 10 dB / Span 20 kHz / Averaging 2 / REF LEVEL 固定
・アンテナ系:コモンモードフィルタ、フェライトコア装着

■目視による観測


撮影した2枚の画像を拡大して凝視すると、 ダミーロード時のノイズは最下段の基準グリッドから 1 グリッド(10 dB)以内に収まっており、全帯域(2,000Hz)の面積でみるとノイズが占める割合は2 割程度。

アンテナ接続時は同じ領域でノ
イズが 8~9 割を占め、 さらに 1 グリッドラインを超えるノイズ成分もある。感覚的には 7~9 dB 程度ノイズレベルが上昇しているように見える。


■AI による視覚推定


AIはFFT画像のノイズ帯を画像認識で検出し、横方向の各位置ごとにノイズの“上端”を読み取って、その高さを線として可視化する。AIの推定結果にはわずかな揺らぎが生じるため、同じ条件で2回観測し、そのばらつきの範囲を確認した。

・FFT下端を基準(0 px)として評価
・青色ノイズ帯+白色波形線・白色ピーク線をノイズ成分として扱う
・10 dB/div(1グリッド=30px)を基準とし、1 px = 0.33 dB として換算
・「中央値包絡線」「90%包絡線」「高レベル側包絡線」の3軸で比較
 ※包絡線=各列のノイズ上端を統計的に代表させた線


■Python による解析


AIによる視覚推定と同じ基準となるよう算定条件を定め、FFT表示領域(ROI)からノイズ成分の上端位置を抽出して統計処理を行った。

包絡線の定義や換算条件はAI側と同一で、各列の上端位置から中央値や上位側の代表値を求め、複数の指標で比較した。

■算定結果


AI/Pythonの両者によるノイズ差分(DL→ANT接続時)測定結果は以下のとおり。



どの指標軸を用いるかにより結果が異なるが、AI/Pythonともノイズ差分は5〜9 dB前後となった。これは、ノイズ帯のどの部分を“代表的な高さ”として読むか(中央値・上側の高さなど)の違いによって数値が変動するためで想定内といえる。

■まとめ


AI視覚推定およびPython解析とも、肉眼で感じられたノイズ増加傾向と概ね整合する結果となった。

この範囲内で更に精緻な値を求める場合は、ノイズレベル(dBm
)を直接測定できる安価なスペクトラムアナライザ (例:TinySA Ultra)を使用するのが妥当であろう。

今回の主な目的は、AI による画像分析手法と Python解析に慣れることであった。学術的な研究ではないにせよ、AIを用いて定量的な評価を行う場合、AIは過去の算定結果やこちらが目指そうとしている方向性を会話から敏感に読み取り、アンカリングやハルシネーションを起こす可能性が高い。これはAIが“学習”しているわけではなく、あくまで会話の流れに引きずられる傾向が構造的にあるということ。

そのため、先入観を排除する指示を冒頭に必ず入れることが不可欠であり、検出した結果の再現性を確認(複数回、同じ条件で実施)したり、結果を他のAIで検証するなど二重三重の安全策が必要あった。

因みに今回使ったAIは Chat GPT Plus (GPT-5.4 Thinking 標準)である。最新の推論モデルでコーディング・数学・資料作成に強いとのこと。

前回試した他のマルチモーダルAI(無償版)では、AIが作成したPythonコードをPC側のPython環境(事前インストール・パス設定・コマンド操作が必要)で動かす必要であったが、ChatGPT PlusではAI側にPython実行環境(サンドボックス)があり、プロンプトだけで解析が完結した。

2026年5月10日日曜日

326. ローバンド用アンテナチューナーの導入

1.9MHz帯(160m)の運用を始めるにあたり、アンテナチューナー(MFJ-989D)を改めて導入したので纏めておく。
MFJ-989D

■経緯


昨年末、80m用 Inv-Vee の高SWR(2.0前後)対策としてMFJ-986 を導入したが、奥行き45cmという大きな筐体は現行のラックからはみ出し、使用頻度の少ない常設機材として置いておくのがためらわれたので一旦手放して
いる。

4月に160m用の短縮型 Inv‑Vee を新設するにあたり、低地上高による低インピーダンス化が予想されたため、より広い整合範囲を備えかつ筐体の奥行が短い同機種を探していたところ、状態の良い中古品を入手できた。

■特長

既に無線機材の製造を終了しているMFJ社がネット上で公開している 986 と 989D のマニュアルをAIを用いて比較検証。その結果、ローバンド運用における 989D の特長としては以下の点が挙げられる。

① 広範なインピーダンス整合範囲

両者のインピーダンス整合範囲(公称値 / 抵抗成分R)は次のとおり。

・MFJ‑986 :35〜500Ω(1,500W PEP時)
・MFJ‑989D:6.5〜3,200Ω(1,500W 定格時)

160m短縮型 Inv-Vee のSWR、インピーダンスを改めて測定した結果は下表のとおり。

この実測値は、以前使用していた986の整合範囲にも収まっているものの、160m帯の短縮アンテナは、抵抗成分とリアクタンス成分が同時に現れる負荷になりやすく
、より広い整合範囲を持つ 989D の方がマージンが大きい。

② 回路構成と整合能力の差異

989Dは、大型エアバリコン(12cm×9cm)二基と高Qローラーインダクタ(10cm×5.5cm)を組み合わせた、オーソドックスなTネットワーク構成を採用している。

一方、986は一つのノブで操作可能な「差動コンデンサ(Differential Capacitor)」を用いる独自のディファレンシャル・T回路であり、調整の容易さが特長だが、構造上、両方の容量を同時に最大化することができない。そのため、160mの低インピーダンス負荷に対しては、追い込みの幅に限界が生じる。

対して989Dは、二基のバリコンが独立しているため調整には慣れを要するが、各々の容量を最大限に活用して、今回のような負荷に対しても、最適なマッチングポイントを追い込める自由度がある。

160m/80mのようなローバンドでは、整合のために大きな容量(C)と損失の少ないインダクタンス(L)が求められるが、989D の重厚なパーツ構成はこの帯域で真価を発揮する。特に80mでハイパワー運用する場合、この物理的な「大きさ
」がそのまま耐圧性能と運用上の安心感に直結する。

MFJ-989D

③ 高耐圧・高信頼性のバラン内蔵


989D は 1:1 電流バランを内蔵しており、今後、ロングワイヤ系や不平衡アンテナを使う際にも外付けバランを追加せずに運用できる。


④運用性と設置性


・内蔵ダミーロード

989D は300W の非誘導ダミーロードを内蔵しているため、送信機のプリチューンや出力確認が単体で行える。


・ピーク/平均パワーメーター

989D のメーターはピーク電力(PEP)と平均電力を切り替えて測定できる。なお、メーター駆動には外部電源(12V)が必須である。一方、986 は外部電源なしでもメーターが動作するため、この点は989D のデメリットと言える。

・適正な筐体サイズ

989D の筐体は奥行きが35cmであり、986 よりも10cm短い。縦/横幅は986よりも4.5cm大きくなったが、ガラスキャビネットの上に設置しているFRG-7の上に乗せたところバランス良く収まった。
MFJ989D、FRG-7

■マッチング状況・総評


各バンドにおける整合時(VSWR:1.1)のダイヤルポジションは以下のとおり。

160mの短縮型 Inv-Vee はインダクタンスが「37」(カウンター値)と少ない値で整合しており、アンテナ側が1.840MHz付近で良好に動作していることを示している。

実運用ではチューナー側で軽く補正するだけで整合が取れており、回路内の損失も最小限に抑えられていると考える。

80mの Inv-Vee においても妥当なインダクタンス値「71」で整合しており、バリコン側にも十分な操作上の余力を残している。

実際の調整では、ローラーインダクタのハンドルを回してゲージをマニュアルに記載されているプリセット値に持っていったところ、その周辺でストンとSWRが落ちて、あとは二基のバリコンを微調整するだけで完了した。いわゆる「追い込み」操作は不要であり、極めて素直な挙動であった。

以上により、MFJ-989D がどちらのアンテナに対しても無理なく動作しており、広い整合範囲と低損失なTマッチの特性が実測値からも裏付けられた。

また、整合時の各ダイヤルポジションは、今回の実測インピーダンスから想定される調整位置と一致しており、測定値とチューナーの動作が矛盾なく対応していることを確認できた。

2026年5月2日土曜日

325. 3/4月のレビュー

■サマリー

QSO数は162となり前年同期(167 QSO)とほぼ同水準。QSOの中心は相変わらずDXペディション局で全体の7割弱にあたる110 QSOを占めている。4月には DXCC Challenge AwardがWkdベースで2,300を超えたものの、LoTWベースでは2,257に留まっている。


■エリア別/バンド別状況

エリア別ではDXペディション局のXX9WとS21WDをオールバンド/オールモードで追いかけたことでQSO数が増え、アジアが3割強を占めた。バンド別では特筆すべき偏りは見られなかった。


■エンティティ別状況

3Y0KをはじめとするDXペディションによりBand Newの積み上げに注力し、16エンティティを追加した。内訳は以下のとおり。


■50MHz DXing

春シーズンのF2伝搬による南米方面からの入感は確認できなかった。また、近隣アジアを除いて未QSO局が入感した際は基本的にコールしているものの、QSO数は12に留まった。

一方、4/5に T31TTT と FO5QB の2つの Band New を得られたのは幸運だった。特にタヒチ(FO)は、高校生の頃にCWでアクティブだった FO8DR を連日コールした思い出
が鮮明に残っており、今回ようやくQSOできたことは感慨深い。

■WAZ Award

28MHzで Z81D をCfmできたことで、5 Band WAZ まで残すところは 3.5MHz の5ゾーンとなった。いずれもこれまで一度も入感を確認したことがない難関ゾーンであり、達成にはまだ時間を要しそうである。

参考までに50MHzを確認すると、こちらは7ゾーンが残っている。このうち3つは過去に入感実績があるが、残る4ゾーンは伝搬的にもかなりハードルが高い。
それでも何が起こるか分からない ”Magic Band” であり、サイクル25のピークを過ぎた今、今後数年間は夏季シーズンでのマルチホップEsによる入感に期待したい。

2026年4月25日土曜日

324. AI解析の差異について

フェライトコアのノイズ抑制効果を生成AI を使って検証した際、 AI によって分析結果が異った。ノイズを定量化する際の基準となるパラメーターであったため、 その差異がどこから生じたのかを整理しておく。

■差異発生箇所

TS-990のメインディスプレイ(FFT表示/7インチ/800×480)のグリッド縦1マスあたりのピクセル数


AI①:40 px (1px = 0.25dB)
AI②:30 px (1px = 0.33dB)


1マス=10dB(10dB/div)であるため、1ピクセル当たりのノイズ量を算出する際の基礎値となる。

■AI①の回答

「この画像の垂直解像度は 480px である。GUI設計の一般的な定石に基づけば、表示エリアはキリの良い 400px 程度に設定されるのが通例であり、それに合わせてグリッドも 40px 間隔(10分割) または 20px 間隔(20分割)で配置されるのが最も合理的。」

「画像全体のレイアウトから推測しても、目盛り幅が 40px であると考えるのが統計的に最も妥当である。」

■AI②の回答

「提示された画像データの垂直軸を解析した結果、グリッドの配置には明確な幾何学的規則性が確認できる。」

「具体的には、y座標 100px 地点に第1グリッド、y座標 130px 地点に第2グリッドが位置しており、その座標差は正確に 30px である。この 30px の間隔は画面内の全グリッドにおいて一貫しており、画像の解像度(800×480)に対する相対的な位置関係とも完全に整合する。」

「したがって、1マスに相当する値は統計的な推測に頼るまでもなく、物理的に 30px であると確定できる。」

■AIの特性

AI①:推測ベースの判断(LLMの特性)


膨大なテキストデータを基盤とする LLM(大規模言語モデル)であり、画像を厳密な数値として処理するプロセスが不得手。そのため、全体の解像度や過去の学習パターンから「このサイズなら目盛りは 40px 程度が妥当だろう」といった統計的推測を優先したと考えられる。

実際には計測できずとも、指示に応えるために“測ったような体裁”を整えてしまう傾向がある。一方で、こうした特性は、曖昧な情報からでも即座に大まかな見立てを提示できるという強みの裏返しでもある。

AI②:視覚ベースの判断(マルチモーダルの強み)

画像の形状や比率を比較的正確に読み取ることができるマルチモーダルAIモデル。画像の形状・密度・規則性を直接読み取り、グリッド線の間隔やパターンを構造的に把握する能力を持つ。
厳密な座標計測を行うわけではないが、画面上の相対的な位置関係を正しく捉える点で、推測ベースのAI①とは本質的に異なる。この特性により、FFT表示のような規則構造を含む画像では、実際の画面表示に整合する値を返しやすい。

■差異原因の深堀り

両者の主張をそれぞれにフィードバックし、反証を求めるやり取り(議論)を数回繰り返した結果、 AI①も最終的に「1 マス=30 px」であることを認めた。さらに別の AI に全てのやり取りを検証させて整合性を確認。
注:画面の実寸(14.9×8.9cm)から求めたピクセルピッチと TS‑990 の画像データ(800×480px)は計算上一致する。

この検証過程を踏まえ、正解は視覚的に読み取ったAI②の回答(30px)と断定できる。そしてAI①の誤回答は単なる計算ミスというよりAIの構造的な違いに起因している。改めて
整理すると以下のようになる。

AI①は 言語モデルとしての「推論能力」を基盤にしており、 画像を数値データとして扱わず文脈や過去のパターンから “もっともらしく見える答え”を組み立てる(推測する)言わば
「文系AI」

AI②は 画像を映像的に扱える画像解析エンジンを備えており、 ピクセル位置や座標差といった物理量を直接扱うことができる。 そのため、視覚に基づく判断を積み上げた言わば「理系AI」
 同じデータ解析を指示したことで、両者の個性がより明確になった。

■AI活用のポイント

今回の検証で明らかになったのは、生成AIは同じ画像を見ても、その内部構造によって “見え方” や “考え方” もまったく異なるという事実である。

検索・言語モデルは、曖昧な状況でも素早く結論を提示できるが、長さや座標といった「物理的な数値」の扱いには「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」が混じりやすい。

対して画像解析に長けたモデルは、測定において圧倒的な信頼度を誇るが、情報の取捨選択や文脈の解釈には別の知能が必要となる。

AIそれぞれの特性を理解し、状況に応じて「どの知能」を使うか。その選択の重要性を、今回の実験は改めて示してくれた。


2026年4月23日木曜日

323. フェライトコアの効果検証とノイズ対策の再構築

現在、HF帯~50MHzのアンテナ系にはコモンモードフィルター(CMF)を挿入し、補完的にフェライトコア(FC)を数ヶ所にクランプしている。しかしFCについては、必ずしも明確な根拠に基づく設置とは言えず、よく揶揄される“おまじない” の域を超えていない可能性もある。

そこで、FCの効果を定量化するためにAIを活用し、フロアノイズ低減(SNR向上)を目的とした環境の再構築を行った。








■CMF/FC の役割整理


①コモンモード抑制

CMFは特定帯域(HF帯など)で高いインピーダンスを得るよう設計された専用フィルターであり、アンテナ系に乗るコモンモード電流を大きく抑える。

FCは広帯域で緩やかに効く素子で、複数個を直列にすることでインピーダンスを積み上げられる。CMFで取り切れない残留コモンモードを追加で抑える役割を担う。

②ノイズ抑制(SNR向上)

CMFはアンテナ(同軸外皮)に付着したノイズを入口で遮断する一次対策であり、SNRに対して大きな効果を持つ。設置はアンテナ直下が最適だが、タワー上での障害切り分けが煩雑になるため、現在は屋内側のみで使用している。

FCはCMFでは遮断しきれない「別経路のノイズ」、すなわち長尺の制御線に途中で付着するノイズ、シャック内の電子機器からケーブルを介して放射されるノイズなど、アンテナ(主線)とは異なる経路で入り込むノイズに対して広帯域で効果を発揮する。

■FCの設置計画

現在のCMF設置状況を踏まえ、最適なFCの設置場所と数量をAIとの対話により決定。
設置計画は以下のとおり。

これまで特に対策を講じていない多芯・長尺の制御線(Versa用コントロールケーブル、ローテーターケーブル)は周囲のノイズを取り
込み易いため同軸ケーブル同様、ケーブル取り込み口に集中配置した。

ケーブル取り込み口の直下で5本のケーブルにFCをクランプすることは物理的に困難であり、また並列にした場合、FC同士が磁気的に接触し効果が薄れるため、直列配置にしつつ最短でも互いの距離を3cm以上(コア1個分相当)離すよう設置。デスク裏の壁面が少し雑然となるが止む無しとした。

次にシャック内で無線機に繋がるLAN、USBケーブルもPC側/TS-990側双方の端子にFCを取り付け、更にノイズを発生させるモニター2台に繋がるHDMI、ACラインにもFCを追加した。

■観測方法・概要

ノイズの定量測定にはスペアナが必要であるが所有していないため、TS-990のバンドスコープ(FFT表示)を簡易測定器として活用。

TS-990 の FFT はノイズレベルを絶対値(dBm)として表示しないものの、縦軸が 10 dB/div の固定スケールで描かれるため、フロアノイズの相対的な高さを読み取ることができる。

ただし肉眼では微小な差異を判別できないため、 FCあり/なしの各状態で FFT 画像を撮影し、
AI に読み込ませて高さの差分から dB差(効果)を推定することにした。


■観測条件・プロセス


測定の再現性を担保するため、以下の条件を固定。

・周波数:3.520MHz(家庭内/近隣ノイズの影響を受けやすい最もシビアなバンド)
・TS-990設定:AGC Off / P.AMP On / NB・NR Off / Filter 2.4kHz
・SCP設定:Grid 10dB / Span 20kHz / Averaging 2 / REF LEVEL固定

FCはあらかじめ決めた順序で “引き算方式” により取り外し、10分以内に全ステップを完了させることで伝搬変動の影響を最小化した。

観測プロセス(5ステップ)は以下のとおり;


■観測結果・効果


①分析基準


解析にあたり、以下の3つの基準を設定。

・固定スケールの確認(10dB=30px)

TS-990のFFT表示は 10dB/div の固定スケール。画像解析により「縦1マス=30px」が一定であることを確認。これが定量比較の前提となる。

・換算レートの算定(1px=0.33dB)

 10dBを30pxで割り、1px ≒ 0.33dB と換算。ピクセルの最小単位は整数(1px)だが、繰り返し測定した結果を平均することで、小数点以下の微細な変化も反映させた。

・ノイズ重心の定義

ノイズ波形は常に上下に揺れるため、波形の上側平均と下側平均の中点を「ノイズ重心」と定義。複数箇所のサンプリングと2枚の画像による平均化を行い、ノイズの「塊(かたまり)」としての動きを把握した。

② 観測結果

画像分析(注)の結果、各対策によるフロアノイズの抑制量を観測した。

注:グリッド変化値(px)はAIによる視覚的分析に基づく。Python等による定量的な画像解析は行っていない。

この観測結果からはでは、全ての対策によるノイズ削減効果は 5dB となり、無線機に届くフロアノイズを電力比で 約1/3(約32%) まで抑え込んでいる計算になる。

入力信号レベルが一定の条件下での測定であるため、このノイズ低減分はそのまま SNR の向上に寄与している筈だが、実運用でどの程度体感できるかは今後の確認となる。

■総括


今回の検証では、FC を用いた「多経路対策」の効果が明確になった。特に未対策だった制御線への FC 追加は、ノイズ床の低下が肉眼でも確認でき、同軸・制御線・周辺機器といった複数の侵入経路に対して段階的に対策を積み上げることの有効性が示された。

これにより「CMF で大元を遮断し、FC で周辺経路を封じる」という多層的なノイズ対策の方針が、実際の運用環境でも有効であることを再確認できた。

また、AI を用いた画像解析により、従来は感覚的だった FC の効果を視覚的に比較できた点も収穫である。ただし AI は得意・不得意があり、時に“もっともらしい誤答(ハルシネーション)”を返すこともあるため、一つのモデルに依存せず、複数の AI を使い分けて結果を照合することが解析の信頼性を高めるうえで重要となる。

<後記> 2026/5


今回、マルチモーダル AI による FFT 画像のピクセル差分からノイズ削減効果を推測したが、 後日、Python を用いて画像解析したところ、算定した数値は当初より小さい値となった。

この背景には、AI は見た目のノイズ床の高さを広く捉えて変化を評価するのに対し、 Python はノイズ分布の重心位置のみを数値化するため、変化が小さく算出されやすい。このように評価指標が異なるため、同じ画像でも結果が一致しない結果となった。

いずれにせよ、FFT 画像だけでノイズ低減量を定量的に求める方法には限界があり、反対に実際のノイズ減衰量が画像に十分反映されない場合も考えられる。実際に肉眼でノイズ床の低下は確認できるものの、 数ピクセル単位の変化量から算出した数値は、あくまで参考値として扱うのが妥当だろう。


2026年4月19日日曜日

322. タワーアース工事

先般、1.9MHz帯アンテナを検討する中で、タワーの接地について改めて調べたところ、周囲への落雷による誘導雷のリスクが無視できないことが分かった。そこで安心して運用を続けるためにタワーのアース工事を行うことにした。

■ 周囲環境と落雷リスク

自宅は第一種低層住宅地で周囲に高い建物はないが、タワーより高い構造物として以下がある。
東方向 90m:野球場のネットを支えるコンクリートポール群
西方向 130m:高圧線鉄塔
南方向 400m:地上高60m超の高圧線鉄塔

タワー自体の高さは15m(マストを含めると18m)なので直撃雷の可能性は低いと考えていた。しかし、周囲の鉄塔などに落雷した際、静電誘導や電磁誘導による誘導雷および接地電位上昇のリスクは否めない。

タワー建設から8年間、近隣で落雷被害の話は聞かなかったため深く考えていなかったが、通勤で利用する駅舎(2階)から見ると、タワーが周囲より頭一つ抜けて見える。この状況を踏まえ、リスク低減と安心のためにアース工事を行うことにした。

■ 業者選定と工事方針

以前、ハイパワー変更工事の際に200V配線とアース工事をお願いした電気工事店(ご隠居)に連絡。その日のうちに現地調査に来ていただき、以下の方針で進めることにした。

・被雷対策としての保護接地のため、接地抵抗はA種接地相当(10Ω程度)を目標とする
・アース棒(1,500mm)を連結して「深打ち」することで低い抵抗値を確保する
・タワーの3本柱それぞれにアース線を繋ぎ、どの柱に雷が落ちても大地へ逃がせるようにする

3日後「今から工事しますが・・」との連絡が入り、急遽、立ち会いながら(手伝いながら)作業を進めた。

■ 作業工程

①掘削

タワー東側の柱から約1.2m離れた地点を70cmほど掘り下げる。

②配管ルートの確保

掘削地点までの経路を掘る(深さ30cm程度)。そこにPF管に通したアース線(22sq)を配線。

③アース棒の深打ち

連結式アース棒(Φ14×1,500mm)を電動ハンマで順次打ち込んでいく。
電動ハンマー

④接地抵抗の測定

アース棒を打ち込む毎に抵抗値を確認。
接地抵抗

⑤タワーとの接続

タワー基部(東側柱)のボルトにアース線端子を装着し、他の2本の柱とリンク接続して終了工事時間は2時間強であった。
タワーアース

■ 接地抵抗の推移

アース棒を1本打ち込んだ段階(先端深さ2.2m)での測定値は 21.0Ω。 その後、測定しながら4本まで深打ちした結果は以下のとおり。
接地抵抗
最終的にタワー本体から測定した接地抵抗は3.9Ωとなった。
この値から逆算(並列合成抵抗の計算)すると、タワー単体の接地抵抗は 約12.8Ω。もともと地中の湿り気や土質が良く(軟弱地盤であるが)、タワー基礎の鉄筋がしっかりと大地と結合していることが証明された。

今回、接地抵抗として「3.9Ω」という極めて低い値を得られたことで、Low Band運用における高周波的な安定も期待できるため、タワーそのものを輻射体とするシャントフィード等の検討もしたい。


2026年4月14日火曜日

321. 1.9MHz帯アンテナの設置

DXingに復帰して 8年目。伸び悩むDXCC Challenge の打開策として1.9MHz帯へのQRVを試みるためにアンテナを設置した。

■アンテナ選定

1.9MHz帯のアンテナはその固有長から住宅地での設置はハードルが高い。候補としてはタワートップに短縮型ハーフスローパーを設置する方法があるが、タワー建設時にアース棒を基礎に埋設・接続しておらず、この状態ではタワー単体で静電容量による「疑似アース」として多少は効くものの、実用的なRFアースとしては期待できない。

また、給電点インピーダンスが低くSWRの整合が取りにくくなることが想定され、疑似アースが弱いことと相まって同軸ケーブルの外皮(網線)がアース代わりとなりコモンモード電流が発生しインターフェアの原因となる可能性がある。

そのためハーフスローパーと比べ高仰角(DX不向き)で大地の影響を受けやすくなるが、設置・調整が簡単な短縮型ダイポール(Inv-Vee)を試すことにした。

商品としては第一電波工業から1.9MHz/7MHzの2バンド対応アンテナ「W719」が2021年に発売されており、ローディングコイルを介してワイヤーエレメントがそれぞれ15メートルなので、途中でベントする(折り曲げる)前提で設置することができる。これをネットで注文した。

部材は以下のとおり。バラン(BU-50A)が同梱されており、耐入力は1.2kW(PEP)。FT8では250W以下で使用するよう注意書きがあるが、1.9MHz帯の最大出力(免許)は200Wなので許容範囲内に収まる。但しアンテナがしっかりと整合していることが前提であるが・・
W719
ローディングコイルはずっしりと重い(346g)
W719

■アンテナ設置

タワートップには3.5MHz用のInv-Veeを上げており、ここに共存させると互いへの干渉が気になる。気軽に試すことを優先し2階ベランダからマストを伸ばして地上高7m弱の位置にバランを設置。そこから南北方向にワイヤーエレメントを張り、北側は5m、南側は8m辺りで90度にベントさせる計画とした。

ベント構造は効率低下を招くものの、限られた敷地で実用的な長さを確保でき、3.5MHzでもそれなりに楽しめているので(143エンティティとQSO)今回も期待したいところ。

北側のワイヤーエレメントを中継/固定するため、敷地の角2ヶ所に新たにアンテナマストを設置(高さは3m)。南周りには80mのワイヤーエレメントに使用しているアンテナマストと共用した。

W719を一旦マニュアル値どおりに設置してSWRを測定。7MHzはフルサイズのダイポールとして動作しており、ヒゲ長を調整し7.074MHzで1.6程度に落ち着いた。帯域幅も割と広くDX局も入感しているのでサブアンテナとしても使えそうである。

肝心の1.9MHz帯では、その近辺はおろかアンテナアナライザーの計測範囲(下限1.71MHz~)ではディップ点を見いだすことができなかった。

アンテナが地面に近いため、地面との静電容量(浮遊容量)が増加し、エレメントが物理長以上に“電気的に長く”見えている。その結果、ディップ点はアンテナアナライザーで測定できない1.7MHz以下にあると考えられる。

■アンテナ調整

①バラン無しでアンテナ単体の共振点を確認
推測に頼っていきなりワイヤーエレメントをカットするのは無謀なので、まずバランを外してアンテナ固有の共振点を探ることにした。結果、1.802MHz付近でディップしていることが判明し、そこからエレメント長の調整に入った。

3.5MHzのInv-Veeを設置した際、左右のワイヤーエレメントのカット幅とSWRの推移を見ながら感覚的に作業してしまい、後からワイヤーを継ぎ足す羽目になった反省がある。最終的に左右のエレメント長の正確な値が判らなくなってしまった..

今回はこの反省を踏まえてAI(Copilot)にアンテナの設置環境、現在の共振周波数、SWR値、リアクタンス(R)/インピーダンス(X)、目指す周波数(1.840MHz)を伝えエレメント調整幅、調整方法を求めた。

AIによるアドバイスをベースに作業を進めることで、余計な思い込みに左右されず論理的に進めることができる。また、いきなり計算上の数値までカットすることを求められることはなく慎重なアプローチを提案してくれる。

何度も測定値をAIにフィードバックしながら調整した結果、1.840MHz近辺でディップを得ることができた。しかしながらSWR値は5.7と高く、このままでは実用には適さない。

②バラン装着後に再測定・調整
ここからはバランを取り付けて実運用に向けた調整を行う。バラン装着後、ディップ点は再び計測範囲外となったが、下限周波数(1.71MHz)付近でカーブが見えていたため、慎重にワイヤーエレメントを切り詰めていくと、1.72MHzにディップ点が現れ、SWRは1.7となった。

この現象は(AIの解説によると)バランの無い状態では同軸ケーブルの外皮(網線)がアンテナ(放射体)として一体化し動作していた可能性があり、アンテナエレメント調整後にバランを付けることでアンテナ固有の共振点が見え、且つ同軸ケーブルの外皮を流れるコモンモード電流が遮断され同軸ケーブルは本来の伝送路となり、アンテナ固有のSWR値が現れてきたらしい。

③ 1.840MHzへの追い込み
あとはこれまでの工程を繰り返すだけだが、ワイヤーエレメントの上げ下げ(ロープ牽引)と調整、そしてAIとの対話を繰り返すうちに気づけば夜の19時になっていた。それでも最終的に1.840MHz付近でSWR1.5まで追い込むことができた。

ローディンコイルの端子からエレメント先端までは双方382cm(ヒゲ7cm含む)となり、規定の460cmから78cmカットした計算となる。

SWRの測定結果は次のとおり。予想どおり帯域幅は狭く「1.840MHz/FT8専用アンテナ」という趣きである。1.820MHzあたりのCWならばアンテナチューナーで対応できるが、1.90MHz以上はSWRが非常に高く強制的にチューナーで整合させてもバラン自体に負荷がかかり、ほとんどが熱として消費されてしまうため実用的な運用は難しい。



■インターフェア対策

アンテナの地上高が低く家屋が近いため、コモンモードの発生は極力抑えたいところ。幸い給電点から無線機までの同軸長は10m程度であり、対処ポイントは絞られる。

まずバランの直下にコモンモードフィルター(CMF2000)を挿入。これは自宅保管していたものを活用。屋内対策はアンテナチューナーの後にフェアライトコア(ZCAT2032-0930)を8個装着した。
W719
これ以上の対策は思い浮かばず、AIに確認しても送信側としては充分との見解。あとは実際に運用し、インターフェアが出た場合はその機器側で対策を講じるしか無さそうである。

1.9MHz帯の運用では、コモンモードに限らずインターフェアを完全に防ぐことは難しい。特に住宅地では、隣家の方が安価な(シールドが弱い)AMラジオを聞いている場合など、強電界で抑圧される可能性が高く、他バンド以上に注意が必要である。

2026年3月22日日曜日

320. WSJT-X(v3.1.0)のインストール

FT8運用時のソフトウエアであるWSJT-Xについては、Super F/H Modeを使う時に限り使用してきたが、少し古いバージョンであったことから最新版をインストールしJTDXと併用することにした。

■概要

今回インストールするバージョンは ”WSJT-X v3.1.0 improved PLUS edition"。WSJT-XおよびImproved版の開発者であるUwe Risse氏(DG2YCB)が公開しているもの。

WSJT-Xは既にデコード性能が大幅に改善されてJTDXと比べても遜色がない-とのネット情報が多数見受けられるが、新たにFDR(False Decodes Reduction)機能が搭載されており期待が高まる。

このimproved版では、これまでに慣れ親しんだJTDXに近いGUIも用意されており、更にはFT2 Modeを試すこともできる。

■セッティング

●ダウンロード
WSJT-X Improved のサイトからwidescreen版をダウンロードしインストール。
WSJT-X Improved
●言語変更
インストールした際、使用言語はWindowsと連動することから日本語で表示されるが、DG2YCBご本人が解説しているyoutube動画や同サイト内のDiscussionなどを参照するために英語表記に変更。
手順は以下のとおりWSJT-Xフォルダのショートカットにあるプロパティのリンク先に追記(--language=en)してOKボタンを押下。

●パラメータ設定
これまでにWSJT-Xで設定していた一部のパラメータはそのまま踏襲されているが、改めてデコードに係る設定を全て最大となるように各パラメータを選択。

スレッド数はマルチスレッドながらこの最新バージョンでもJTDXの半分、最大12スレッドに留まっている。

気になる”Reduce false decodes”(FDR機能)については、感度を下げることなくFalse Decode数を大幅に削減できるらしいが「一部の特殊なメッセージフォーマットに対してのみ信頼度レベルを引き上げる」(It only increases the required confidence level for some unusual message formats.)とあり、JTDXで散発しているFalse Decode(=SNRが低く近接QRMがある際に発生し易いリターンシーケンス) に効果があるかは実運用で試してみないと判らない。


■JTDXとの比較

●画面構成・配色
右側のRx Frequncy ウインドウで周波数等の操作パネル表示が下段になったが、視線の移動でそれほど違和感はない。

配色はJTDX同様にシンプルに設定するもリターン時など自局のコールサインが表示される際にフォント色または背景色が全て変わってしまうのが難点。また”QSO B4”を配色で区別する方法が見当たらず暫く調整に時間を要する。
-JTDX-
JTDX
-WSJT-X-
WSJT-X Improved
●使い勝手
JTDXではBand Activity ウインドウにLag値が表示され、デコードした各スレッドにはHint decoder 区分(*/●/○)とリターン時にはその表示の上にポップアップ()で告知する機能があるが、WSJT-Xでこれらの機能が無いのは(特に後者は)やはり使い辛い.. 

一方、バンドセレクトボタンが用意されており、左クリックで標準周波数、右クリックでDXペディション周波数をダイレクトに選択できるのは便利。また操作パネルにある”H"ボタンを押下しF/H の状態から右クリックでSuperF/Hに設定できる。

●デコード性能
使い始めて間もないため優劣については何とも言えないが、3.567MHzでDXペディション局のCY0S(Sable Islands)をコールされているJA局(50局ほど)のデコード数を比較する限り特に変化はなかった。※CY0Sはいずれもデコードできず

暫くはJTDXとの比較においてどの程度違いがあるのか(ないのか)試すことにする。


2026年3月20日金曜日

319. DX運用日誌(157)-3Y0K-

3年ぶりとなる3Y0/B(Bouvet Island)でのDXペディション。前回同様、日々の運用メモを残していたので纏めておく。

■概要

3Y0KのWeb siteおよび公式facebookによるとチームはLA7GIA,KO8SCAなど著名なDX Peditioner を中心にサポートメンバーを加え20名を超す体制。無線機材(十数台の無線機/リニア等)と物資を砕氷船からヘリコプターによる空輸で行い、離れた2つの拠点を設置し同時に6バンドでQRVするとの大がかりな計画。

QRVは日本時間で3/1 夜半からスタートしQRTは3/18-20頃の予定であったが、天候との兼ね合いで3/14には撤収するとのアナウンスがあった。それでも2週間のQRVで2.5万局と10万QSOを達成するなど前回の3Y0J(1週間で1.8万QSO)とは桁違いのDXペディションとなった。

当初、レガシーモードに集中するとの告知があり、再びCWを中心とした熾烈なパイルアップを覚悟していたが、FT8でのQRVがメインとなりCLUBLOGのStatisticsを見ると全QSO数の6割以上をFT8が占めている。

大陸別QSO数ではアジアが全体の20%で同時期に行われたDXペディション、カリブ(KP5/NP3VI)やアフリカ(J51A)と比べその構成比は倍以上となっている。ちなみにグリッドロケーター別で世界で最もQSO数が多かったのはPM95(東京/神奈川以西)の4,000QSOで群を抜いている。

ブーベ島は南アフリカと南極大陸の中間(亜南極)に位置し日本との距離は約1.6万km。伝搬的には比較的良好なようであり、どのバンドでもQSBは激しかったものの信号のピーク時はCWでRST579、FT8では6スロット(12ライン)で入感することもあった。先方が500~1kWに八木アンテナという構成も強力な信号が届いた要因であろう。

Xなどの書き込みを見ているとベランダ設置のモービルホイップでwkdされた方もいるようで多くの局にATNOを提
供してくれたようである。

■QSOサマリー

3年前の3Y0Jでは2バンド(18/21MHz)2モード(CW/FT8)の3QSOに留まったので、少しでもBand Newを増やしておきたいところ。今回、QRV期間が3週間との告知で余裕があったため、基本は確実にFT8でBand New を追いかけることに専念し、CW/SSBはタイミングがあえばコールするというスタンスで臨んだ。

果は8バンドで11QSOとなり、Band Newを6つ増やすことができた。QSOの履歴は以下のとおり。

バンド別では14~24MHzが比較的easyであったように感じる。7/10MHzそして28MHzは1時間以上コールしてもリターンが得られない局面もあり、特に10MHzはFT8/CWともに最後まで激しいパイルアップであった。最後の3.5MHzのwkdは幸運以外に他ならない。

モード別の特徴としては、FT8はマルチスロット運用且つ激しいQSBと相まって、短時間のうちに現れて直ぐにデコードレベル以下に沈むパター
ンが多かった印象。また、WSJT-XのF/H機能である”Three strikes, you're out” いわゆる「三振ルール」が緩和されたこと(5回までOK)で何度も助けられた。

CWは総じてパイルアップが激しくDQRMもあるため参戦を控えたり、コールしても集中できずに断念する局面が多かった。SSBは特に意識してワッチしなかったことでQSOを逃したのは残念であった。

■運用日誌

●3/3 Tue
20時半頃にHamspotで14.090MHz/FT8のQRVを確認しワッチすると-20dBで初デコード。コール開始するもデコードは散発的なので暫くして静観することに。

22時前には信号は上昇しており最大で6ストリーム/11ラインとオセアニアのDXペディション並みの強さで入感。

コールを再開し暫くしてリターンを得たが「RR73」が返らずにTX Freq(DF)を変えながら4回目の「R-18」でようやく受領。いわゆる「三振」は起きなかったのでMSHV運用と考えたが、どうやらWSJT-Xの新バージョンではF/Hモードの機能改修がされていたようである。


●3/4 Wed
帰宅後、20時頃から24.910MHz/FT8をワッチするとWide Graph上に光点は見えるもデコードできない。ネット情報でQRVを確認した18.072MHz/CWを聞きに行き、暫くして24MHzに戻ると最大6ラインで入感。QSB
は激しいがコール開始後、程なくしてリターンを得られた。

JTDX上で”Antarctica”の表示をそのままにしていたが、やはり味気ないので city datファイルを最新版に更新。

その後、再び18.072MHz/CWに戻るとピークでRST579程度で入感するもQSBで沈むと419程度となる。信号が上昇したタイミングでコールし続けて23:20にリターンを得た。

●3/5 Thu
朝の時間帯は10.110MHz/CWでのQRV確認するも信号が弱いため静観。
7MHzでのFT8運用はなかった様子。

15時頃から7.090MHz/FT8でQRVを確認するも入感せず。30分程してコンディションが上昇し入感するも妨害行為が始まりデコード不可となりフェードアウト。

16:30頃から28.090MHz/FT8でQRVを確認。そのまま静観していると17:17頃に4ライン/-19dBで入感。QSBが激しいがピークで4ライン/-8dBまで上昇。18時頃に見えなくなるが18:30頃から再び上昇。19時頃まで断続的にコールするもフェードアウト。

28MHzを諦めて21.090MHz/FT8に移ると8ライン/-14dBで入感しており3コール目でリターンを得た。Hound側のDFとして3,200Hz程度も拾っており、3,000Hz辺りでコールしたのが奏功したのかも知れない。

その後18.090MHz/FT8をワッチするも信号は弱いため、入浴と食事を済ませ20時前からワッチ再開。4ライン/-18dB程度で入感しておりコール開始。7分ほどでリターンを得られたが「RR73」
は未受領となった。

21時頃から21.025MHz/CWをワッチするもRST419~529程度のため途中から静観。

●3/6 Fri
5時前に起床し7.090MHz/FT8をワッチすると4ライン/-14dBで入感。主にEU局をピックアップしており、DFを3,150Hzに設定しコール開始。先方のDFは800~920Hzと高い設定で1,000Hzを超過しているスロットもある。

ピークで8ラインまで見えるが、EU/JAの激しいパイルアップでリターンが得られない。時折り送信を中断しWide Graphを確認しながらDFを変えようとするも、バンド中がほぼ連なった状態であり何とか空きを見つけコールを開始し途中で確認すると被っている状態..

この状況ではあまり頻繁にDFを変えることは得策ではないと考え2,700Hz辺りに固定してコールを継続。

6:45頃になるとフェードアウト気味になりデコードできないシーケンスも増え7時前にはSSB局の被りも出てきたので終了。結局2時間近くコールするもQSOに至らず。

その後、10.131MHzをワッチすると30局ほどのJAがコールされているが、こちらには入感せず。

午後から10.131MHz/FT8で北米局がコールしているのをワッチしていると14:40に-20dBで入感。直ぐにコール開始するも引き続き北米もピックアップしておりクラスターにも情報が上がったことから激しいパイルになっている様子。ピークで4ライン/-10dB程度。

1時間ほど3,150Hz辺りでコールするもリターンがないため2,633HzにQSY。コール3回目でリターンを得るも次のシーケンスで「RR73」が返らず手動でDFを623Hzに変更したがデコードが途切れる。なんとか5回目のリターンシーケンスでようやく「RR73」を受領。今回も「三振」ルールがないことに助けられた。

QSO後に暫く様子を見ているとWide Graphを3,500Hzまで広げているせいかJA局だけで120局ほどがコールされているのが見える。コール開始後、1時間ほどでリターンを得られたのは幸運だったのかもしれない。

その後、15:55に7.090MHz/FT8をワッチすると2スロット/-12dBで入感。コール開始するも5分ほどでQRTした様子。

17時過ぎから28.010MHz/CWでQRVを確認。ピークでRST579程度まで上昇するも激しいパイルアップ(+20KHzまで広がっている..)で太刀打ちできず。30分程で諦めて入浴・食事。20時を過ぎても529程度で入感しているがEUもピックアップしておりコール開始するもリターンの気配がないので断念。

●3/7 Sat
5時前に起床し7.090MHz/FT8をワッチ。5時半頃に2ライン/-12dBで入感。3コール目でリターンを得たが、よく見ると先方はodd側(15/45)で送信しており、そうなると告知しているWSJT-XのF/Hモードではない筈。DTも-1.0とズレており、時折りCQを連発するなど挙動が怪しくpirateの可能性も捨てきれない。3.5MHzを少しワッチした後で戻ると見えなくなっていた。Livestreamがあれば真偽が直ぐに判ってよいのであるが..

その後、6:22に-16dBで再入感。今度はeven側(00/30)で送信しており、DTは+0.9なので先ほどとは別の局に見える。多くのEU局にもリターンをしており再チャレンジすることに。出始めのせいかそれほどパイルにはなっていないようで8回目のコールでリターンが得られ、3回目の「R-17」で「RR73」を受領した。
※翌日のログ更新で両者ともrealであることが判明

20時頃から28.090MHzでQRVを確認。JA20局ほどがコールされているもこちらには入感はない。JA側もリターンシーケンスを返しておらずHamspotではEU局のデコードが目立つ。

20:42になって5ライン/-19dBで入感。コール開始するもデコードは安定せず、リターンは引き続きEU局が多い。21時近くになってWide Graph上も4スロットがはっきり見えて7ライン/-12dBで入感。QSBが激しく次のシーケンスはデコードできないケースが散見。リターンはJAとEU半々というところ。21時過ぎがピークで、その後、デコードできないシーケンスが増えて21:08のCQシーケンスが最後となった。

●3/8 Sun
残す28MHzに集中すべく17時頃から28.090MHzをワッチ。Hamspotを見るとEU局がデコードしておりQRVしているようだが、こちらには見えない。次第にJA局もコールし始めて多い時で20局ほどがコールされている。

19時半頃にはSSBに移ったようで、そのまま静観していると20:04にCQシーケンスが-20dBで入感。コール開始すると直後にFalse Decodeにひっかかかる。信号は上昇し6ライン/-16dBで入感するもQSBが激しくデコードは続かない。Wide Graphには光点が3ライン薄く見えているのでコールを続けるもそのうち見えなくなる。その後、21:22に-23dB、21:42に-13dBでCQシーケンスをデコードするも後が続かないため終了。

●3/9 Mon
28MHzの二日目。17:10に28.030MHz/CWで入感。QSBが激しく当初は弱かったがピークでRST579程度まで上昇。パイルは+15KHz辺りまで広がりカオス状態のためリターン得られる気配はしない...先方も1回でコールを取りきれず何度もコール打ち返しておりQSOレートが低い。ここはFT8に出てきてほしいところであるが。

2時間ほど経ってQRXした様子のためFT8のワッチに切り替える。待ち構えていると19:40にCQシーケンスを-6dBで捉えてコール。次のシーケンスでは3分割しシングルスロットのみデコードするもリターンは得られなかった。その後、JA/EUのパイルが始まるがデコードできない状況が続く。

10分ほどコールするも光点も消えて終了。クラスターでSSBのスポットが上がっており、頻繁にQSYしているようである。

20:15頃にクラスター情報で21.030MHz/CWをワッチ。ピークRST539で入感。コールするも10分ほどでSSBに移るとのアナウンス。今夜はどうもタイミングが合わない..

20:45にクラスター情報で21.260MHz/SSBをワッチ。カスカスなのでコールせずに静観しつつ終了。

●3/10 Tue
28MHzのトライ三日目。16時頃から28.010~030MHz/CWと28.090MHz/FT8をデュアルでワッチ。

17時過ぎに28.090MHz/FT8で20局ほどのJA局がコールされているのが見えるがこちらでは入感はない。静観していると17:17にいきなり5ライン/-15dBで入感。コール開始後、信号は急上昇し始めてピークで11ライン/-10まで見える。今回は流石にEasyかと思いきやQSBが激しく直ぐに落ち込んで5分程度でデコードレベル以下に下がる。

18時を過ぎた頃にはWide Graphから光点も消えたため28.010~030MHz/CWをワッチしていると21.010MHzで微かな信号に気づき+2KHzでJA局がコールされているのを確認。

信号が上昇するのを待って18:20からコール開始。未だ大きなパイルにはなっていないせいか3分程でリターンを得た。その後、信号はRST579程度に上昇。ようやく28MHzをwkdでき7MHz~28MHzまでを埋めることができた。来週からは暫くシャック不在となるので事前にwkdできて安堵。

入浴と夕食を済ませて20時頃から28.090MHzをワッチすると19:42にCQシーケンスを-20dBでデコードしており、早速コール開始。デコードは散発的でFalse Decodeも何度かくらったが、20:12頃から6ラインで見え始め3分後にリターンを得た。DFを変えずに「R-15」を4回目送信で「RR73」を受領。その後は強力且つ安定して入感。

その後、24.892Mhz/CWをワッチ。RST539程度で入感しておりコール開始。途中何分かQRXがあり、復帰した後、数分でリターンを得た。最初JA1AFAでコピーしていたので、フルコールを打ち返すもその途中で何故か599を返してくる。改めてフルコールを返すと ”JA1AFR TU”で終了。

●3/11 Wed
朝5時半頃から3.567MHzをワッチしていると5:47に-19dBで入感。ピークで4ライン/-18dBまで上昇。4分割すると見えないシーケンスが多く6時半頃にフェードアウト。

●3/12 Thu
朝5時から3.567MHz/FT8で待ち構えていると5:32にCQシーケンスを-11dBでデコード。コール開始するも直ぐにマルチスロットになりデコードレベル以下に沈むシーケンスが増える。

コール開始後、4分ほど経ってリターン。しかしながらSNRは-26dBでありFalse Deocdeの疑いが濃厚。先方のDF(500Hz/560Hz)がレーダーノイズと被さっているせいか、その後もFalse Decodeを散発するが、真偽の判断は困難なのでリターンシーケンスを何度か送信することに。

最初の入感から10分程すると2~3ラインで安定して見え始める。QRMチェックのために途中で送信を停めると3,200Hz辺りまでびっしりと光点が現れパイルアップは激しいようだが、その一方でCQingも目立つ。

その後、一旦信号は落ちるが6時半頃にも2ライン/-16dBで入感。しかしながらデコードは続かず、その時点で60局ほどがコールされているため静観。

翌日、ログが更新されてIn logを確認
。後日、M0OXOのLog search & OQRSをチェックすると最初のリターンが本物であったことが判明。

●3/14 Sat
6時過ぎに7.022MHz/CWでQRVを確認。ワッチしていると次第に信号が上昇し始めRST539程度になった頃にコール開始。既にパイルは激しく+15KHzまで広がっており、Jammerも現れたので静観することに。7時過ぎにはRST559程度まで上昇しコール再開するもリターンは得られず7時半頃にはフェードアウト。これが最後のコールとなった。

16時過ぎに10.106MHz/CWでQRVを確認。信号は微弱で近接周波数からの被りが酷く殆ど聞き取れないため静観していると30分程でパイルも止みQRTした様子。

その後、HamspotsやクラスターでQRV情報がアップされないことから現地(朝の9時頃)では本格的な撤去作業が始まったと推察。翌朝になって、公式facebook上で日本時間の23時過ぎにQRTしたとの情報が更新されていた。

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DXCCの最難関エンティティの一つであるブーベ島をオールバンド(80M-10M)でQSOできたことに感謝。チーム全員の無事帰還を願ってやまない。


2026年3月1日日曜日

318. 1/2月のレビュー

<サマリー>
2ヶ月間のQSO数は僅か74に留まり、前年同期(342QSO)対比で2割程度となった。主に2つのDXペディション局を追いかけることに注力し、出来高としてはATNOを1つ解消しBand Newを17スロット積み上げた。


<バンド/エリア別状況>
QSO数が少ないため特段の傾向は見られないが、エリア別では50MHzでのVK,ZL局とのQSOによりオセアニアが27%を占め、DXペディションが行われたアフリカ、カリブがそれに続いた。


<エンティティ別状況>
DXペディション局であるKP5/NP3VIおよびJ51Aとそれぞれ複数バンドでQSOできたことでBand Newを増やすことに繋がった。
主なエンティティは以下のとおり。
●Desecheo Island(KP5/NP3VI)
デセチュオ島はプエルトリコ本島から約19km西にある無人島であり、自然保護区に指定されていることから、今回のDXペディションでは島に人が滞在することなく遠隔操作ユニット(RDUs)を用いたフルリモートオペレーションが行われている。

電源はバッテリー駆動で全て太陽光発電で補われることから、送信出力は必要最低限に抑えられており(数値は公開されていないようである)且つFT8ではMSHVによるマルチスレッド運用のため実効送信出力は数ワット程度に留まっていると推察。そのため運用開始直後は、どのバンドをワッチしてもWide Graphに僅かな光点さえも見い出せない状況であった。

同チームからは予めモード別のQRV&QRT(充電)スケジュールが告知されており、それに従って朝と夜間の時間帯でワッチを続けていると、1/20の夜20時前に3.5MHzで初デコード。そして1/22の同じ時間帯で7MHzで初QSOに成功した。実際のところリターンシーケンスのSNRが-26dBのためFalse decodeなのか判らない状態のまま「R-26」を返し続けているとLivestreamでQSOを確認できたという状況であった。

その後もデコードが困難な状況が暫く続き、2nd QSOは1週間後の21MHz。これもLivestreamに依存したQSOとなった。2月に入っても状況は好転することなくこのままペディション終了かと思いきや、運用期間を3/3まで延長することに加えJA/アジアにフォーカスするとの情報が入り、2/13に3.5/14MHz、2/17には18/24/28MHzで立て続けにWkdでき、結果として3.5~28MHzまで埋めることができた。

今回の運用ではQSOデータがLoTWを含め各種サーバーにリアルタイムでアップロードされており、OQRSせずともATNO解消と8つのBand Newが得られた。


●Guinea-Bessau(J51A)
ドイツチームによるDXペディション。過去、このチームは 3G0YA, PX0FF, VP2VIでの大規模な運用を行っており期待が持てる。西アフリカに位置するギニアビサウ共和国は2021年に行われたJ5HKTのDXペディションでは10~18MHzの3バンドQSOに留まっているため、幾つかスロットを増やしておきたいところ。

初日は2/25朝の14MHz/FT8からスタート。最大6レーン/12ラインながら強力な信号を送ってくる。

これを皮切りに4日目で7~28MHzまで7バンドをWkdし、結果としてBand Newを4つ伸ばすことができた。
先方は5×Radio/Amp構成の同時運用であり、運用開始か
ら7日間で10万QSOに達してる様子。運用期間も3/14迄と長いことから残す3.5MHzを狙っていきたい。