2026年7月11日土曜日

332. FT8運用における電波品質調査(2)

<第2回>観測結果と品質評価

■ 観測概要


① 観測項目

Case1~3において、距離に応じて以下の観測を行う。
送信DFを中心として左右等間隔に現れる不要スペクトラム(子・孫)の有無
・DF近傍のスペクトラム(スカート)の広がり

②観測地点

アンテナ(CL6DXZ 18mH)から直線距離で500m離れ、アンテナを目視できる場所。電波反射の影響をできるだけ少なくするため、周囲に大きな障害物がない場所を選定。


③観測距離・回数

距離による減衰を確認するため、500mに加え、アンテナからの直線上に障害物のない1kmおよび2km地点でも同様の測定を行い、計9回観測。


④観測手法

スマートフォン操作によるリモート運用を行い、50.328MHzでテスト送信(600W)。アンテナは測定地点に向けて固定。その電波を車載の設備で受信し、JTDXの表示画面を記録。

■ 観測結果

観測結果は以下のとおり。なお、1kmと2kmでは同様の傾向であったため、代表例として1kmの結果を掲載し、2km画像は割愛。

Case1:ALCが全く動作しない状態(AF波形:飽和なし)



Case2:ALCはブルーゾーン内で動作する状態(AF波形:飽和あり)



Case3:ALCがレッドゾーンを超えて動作する状態(AF波形:飽和あり)



■まとめ


全てのケースにおいて、送信DFを中心として左右等間隔に現れる不要スペクトラム(子・孫)は認められなかった。

・500m地点では、いずれのケースでも送信DF近傍にスカートが観測された。一方、ALC動作レベル差によるスカートの広がりの違いはわずかであり、明確な差異は認められなかった。

・1km・2km地点では、500m地点で見られたスカートはほとんど認められず、通常受信されるFT8信号と同程度の表示となった。

<参考>SDR受信機による送信RFスペクトラムの観測


Case2 / 500m地点での観測時、SDR受信機(RSPdx)を用いて送信電波のRFスペクトラム(SPAN: 15.6kHz)を確認した。
SDR受信機に表示されたRFスペクトラムでは、主信号の両側になだらかに広がる裾野(スカート)が認められた。一方、主信号を中心として左右等間隔に現れる離散的な不要スペクトラムは観測されなかった。

■考察


今回、最も厳しい条件である Case3においても、子・孫は観測されなかったことから、本設備構成では不要スペクトラムの発生は考え難い。

また、今回の観測では500m地点ではスカートが認められたものの、1km・2km地点ではほとんど認められなかった。このことから、少なくとも今回観測したスカートだけをもって、送信品質に問題があるとは言えない。

一方で、スカートの見え方は送信条件だけでなく、受信条件やWideGraphの表示特性など複数の要因が関係する可能性があることから、Wide
Graphの表示だけで送信品質を判断するのは難しいと感じた。

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今回の検証を通じて、自局設備の送信品質を客観的に確認できたことは、今後のFT8運用に対する一つの自信につながった。


331. FT8運用における電波品質調査(1)

<第1回>電波品質の考え方と測定条件

FT8を運用する上で、普段から他局に妨害を与えない「綺麗な電波」を送信することを心掛けているが、先般、50MHz FT8でDX局をコール中、Free Messageにて「JA1AFR DIRTY」というメッセージを受信した。

「DIRTY」が具体的に何を意味しているのかは不明であり、発信者も確認できないため、そのメッセージ自体を気にすることはなかったが、以前から計画していた検証実験を行うよい機会と捉え、自局設備から送信する電波の品質を実際に観測・評価することにした。

まず、今回の検証対象となるスペクトラムと、その発生要因および現在実施している対策について整理する。

 ■ WideGraph上の特徴的なスペクトラム


 FT8運用では、WideGraphに表示される受信スペクトラムを見ながら、以下を視覚的に判断している。
・おおよその信号強度
・他局との被り具合
・マルチスレッド運用の有無
・バンド全体の入感状況や空きDFの選定

その中で、時折、以下のようなスペクトラムを示す局が見られる。
・送信DF近傍で左右に広がって見えるスペクトラム(以下「スカート」)
・送信DFを中心として左右等間隔に現れる不要スペクトラム(俗に「子」、さらに外側に現れる高次成分は「孫」と呼ばれている)

特に後者は、本来使用していない周波数領域にもエネルギーを放射することで、近接したDFで運用するDX局のデコード性能を低下さ
せる要因となりかねない。

一方、スカートと子・孫は、いずれも送信DFを基準として現れるものの、その性質や発生要因は必ずしも同じではない。このため、今回の検証では両者を区別して観測することとした。

 ■ 不要スペクトラムの発生要因

 
不要スペクトラムの発生要因として考えられるものを整理すると、概ね以下のとおりである。

① RF回り込みの影響

・AFラインへの高周波回り込み
・電源ラインへの高周波回り込み
・USB・LANケーブル等への高周波回り込み

② AF入力レベル過大

以下の設定値が過大
・PC Sound Volume
・JTDX Transmit Digital Gain
・TS-990 Optical Audio Input Level
・TS-990 Speech Processor In / Out

③ RF増幅系

・リニアアンプへの過大入力
・リニアアンプの定格出力近傍での運用
 ※
過大入力や定格近傍での運用により、増幅器が非線形領域で動作しやすくなる。

④ 受信・表示系の影響

・受信機内部での飽和・過入力
 ※受信信号が強すぎると、受信機内部で不要なスペクトラムが発生する場合がある。
・WideGraphの表示特性
 ※強い信号では実際より広く表示される場合がある。

 ■ 現在実施している対策 


① 物理対策

・PC→TS-990間のAF伝送路のSPDIF(光デジタル)化 
・TS-990およびIC-PW1の同軸ラインへのコモンモードフィルタ挿入
・TS-990およびIC-PW1の電源ラインへ高周波チョーク・フェライトコア挿入

 ② 設定・運用対策

・PCおよびJTDXのAF出力レベルを低めに設定
・TS-990のALCがほとんど動作しないレベルに調整
・TS-990内蔵オシロスコープによりAF波形が飽和していないことを監視
・IC-PW1のALCが保護領域(レッドゾーン)へ入らない範囲で運用
・50MHzでのリニア使用時の出力は600Wとし、最大でも800Wを上限として運用

 ■ 実証実験の前提条件


 ① 送信側(TS-990+IC-PW1)

・PC Sound Volume: 20 / 100 
・JTDX Transmit Digital Gain: -10.5 dB
・TS-990 Optical Audio Input Level: 30 / 100
・TS-990出力: 25W
・IC-PW1出力: 600W

普段から運用している上記設定のまま、Speech Processor In/Outを可変させTS-990のALCメータおよびオシロスコープでAF波形を確認しながら、以下の3ケースについて検証を行う。

Case1:ALCが全く振れない/AF波形が飽和していない


Case2:ALCが動作するがブルーゾーン内に留まっている/AF波形は飽和している


Case3:ALCが動作しレッドゾーンを超過している/AF波形は飽和している


※意図的にAF入力レベルを過大とした試み

② 受信側(FT-991)

・各種設定:ATT:Off AGC:Fast NB:Off IPO:AMP1 SHIFT:0Hz WIDTH:3000Hz
・アンテナ:Diamond HR5V(1.8mH)
・電源系統:Jackery Explorer 2000 + DM-330MV
・ハードウエア:DELL Inspiron 14 5405 (Ryzen5)
・ソフトウエア:JTDXv2.2.159-32A

受信側の設定は実運用を再現した状態のまま固定し、上記ケースと測定距離による違いのみを比較する。


 <参考> ALCについて

 ALC(Automatic Level Control)は、送信機(TS-990)へ入力されるAF信号が過大となった際に、送信出力を一定範囲内に保つための自動利得制御機能であり、送信系が過大入力や非線形領域へ入ることを抑制する役割を担っている。

 AF入力レベルが適正であれば、ALCはほとんど動作しない(メータはほぼ振れない)が、AF入力レベルが高くなるとALCが動作し、送信系ゲインを自動的に下げる。

 TS-990徹底解説集(24P)によると、ALCは終段PAを直接制御するのではなく、中間周波(IF)増幅段のゲインを制御することにより、結果として送信出力を一定範囲内に収めている。 

ALCが大きく動作する状態は、送信系が過大入力または非線形動作に近づいていることを示しており、その結果としてIMD(相互変調歪:非線形動作により本来存在しない周波数成分が発生する現象)や不要スペクトラムが発生する可能性が高くなる。

 KENWOODでは、ALCで出力を抑えるのではなく、適切な入力レベルに調整した結果としてALCがほとんど動作しない状態を推奨している。このためFT8では、PCのAF出力、TS-990 の Optical Audio Input Level、Speech Processor In/Outなどを調整し、ALCメータがほとんど振れない、または僅かに触れる程度となるよう設定することが望ましい。

 すなわちALCの表示は、送信品質そのものを示すものではなく、送信機が適正な状態で動作しているかを確認するための一つの目安である。

 参考までに、IC-PW1のALCは送信品質を直接制御するものではなく、リニアアンプを過入力から保護するための機能である。本検証で使用する600W運用では、ALCは保護領域(赤色領域)に達しておらず、過入力による送信品質への影響は考え難い。


 <第2回>観測結果と品質評価 に続く~

2026年7月6日月曜日

330. 50MHz DXing 2026(3)

7月に入っても北米、EUのオープンが散発的に続いている。特に7/1のEUオープンは今シーズン最大の収穫であった。

6/29(月)

 午後からリモートでワッチしていると、EU局(OM・F・I・YL・ES)をコールされている局が見え始めるがこちらには入感はない。16:20にスロベニアの S57RR が-16dBで入感するも一度限りであった。

7/1(水)- EU Big Open -

11時半に K0KKO(MN)が-15dBで入感。数回コールしてリターンが得られ、今期初の北米局をWkd。その後は入感はなし。

午後は13時半の早い時間帯からイタリア局が2局、続いてフランス局も入感。それぞれ”QSO B4”なので静観していると、オランダ局が2局入感し、そのうち新局をコールしてWkd。

その後ドイツ、ベルギー局が入感し始め、”Big Open” の様相に。

16時頃からデコード数が減り始めたが、16:05にルクセンブルグの LX1JX のCQingが-18dBで入感。直ぐにコールして1局待ってリターンを得られ、無事「RR73」を受領した。その数分後にはフェードアウトして再浮上することはなかった。
CQシーケンスを含めわずか6回のデコードであり、千載一遇のチャンスを掴めたのは幸運であった。

最終デコードは17時のオランダ局。その後もEUをコールされているJA局は多数見えるがこちらには入感はない。

入感のピークは15時半から16時頃で、15:50:00のピリオドが最多で24局をデコード。EU局のデコード数の推移をグラフにすると以下のとおり。

本日の結果は20QSO。入感したエンティティは14、入感局は89局で、先週のBig Openと比べて小規模ながら、QSO数は今期最多となった。

20時過ぎにBYのNew Grid局 BG0AYW(NN21)とQSO。同じ時間帯で EY8MM が-9dBで入感。その後、EX/KZ1Rが安定して入感し始めて21時頃にQSOできた。

7/2(木)

 8時過ぎにリモートでワッチ。常連局の W7GJ(MN)が入感しており、静観しているとNew局の K0AV(CO)を-13dBでデコード。いつもながら、浮き沈みが激しく何度かコールしていると「-09」でリターンを得たが、シーケンスは続かず「73」未受領のままフェードアウト。念のため Club Logを確認するとNILであった。

17時過ぎに帰宅してワッチすると、EUをコールされている1エリア局が見えるが、こちらでは入感せず。17時半を過ぎてベルギー、オランダの3局が入感。いずれも”QSO B4”なので静観。

7/4(土)

夜の20時半頃からカザフスタン局が入感し次第に局数が増え始める。数分後にドデカネスの常連局 SV5DKL のCQシーケンスが-18dBで入感。暫く静観していると、カザフスタンのNew局が見え始めコール開始。

21:09になってジョージアの 4L/SP1MVG のCQシーケンスが-18dBで入感。リターンを返すタイミングで相手のDFへQSYするパターンで運用している。

コール開始5分後に「-02」でリターン。しかしながら運悪く次のピリオドでデコードできない。順序的に見て「RR73」を返している可能性はあるが、Live Streamやオンラインログは使用していないので確証がない。こういう時こそデュアルワッチしているWSJT-X側でデコードできていればよいのだが、そう上手くはいかない...

暫く「R-18」を送り続けるがレスポンスが得られないので再チャレンジすることに。コール開始5分後に「R+03」でリターンがあり、今回は無事「73」を受領できた。ジョージア局のWkdは2021年7月以来であるが、この時も苦戦したことを思い出した。

同じ時間帯でロシアの RA7A が安定して入感しており、また他のジョージア局(4L7T)をコールされている局も見えたが、こちらには入感はなかった。

この日はカザフスタンのNew局含め計3局とQSO。カザフスタンの入感は23時を過ぎても続いていた。

7/5(日)

朝の10時半頃よりカザフスタン、BY局が広範に入感。13時過ぎからはASロシア局も入感し14時過ぎに RD9D、14時半に UN1L とQSO。同じ時間帯でEUロシアの RA3CQ やウズベキスタンの UK8OM も見える。

15時半頃に複数のEUロシア局が入感。”QSO B4”のため静観していると、イタリア、ギリシャをコールされている局が見え始めるが、こちらには入感はない。PSKReporterやXのポストによると、西日本では良好に入感しているようである。

17時過ぎからスロベニア、クロアチアが入感するもデコードは散発的。17時半頃になってイタリア、スロベニア辺りが複数局入感。多い時は1ピリオドに5~6局見えるが総じてSNRは低い。New局を見つけてコールするもデコードは続かずに数分でフェードアウト。

19時頃から再びカザフスタン局が複数入感し、New局をWkd。本日はカザフスタンの3局とQSOできた。

2026年6月29日月曜日

329. 50MHz DXing 2026(2)

6月に入り、マルチホップEsのピークとなる夏至(6/21)頃まではコンディションに恵まれなかったものの、6月後半になってヨーロッパ方面が立て続けにオープンした。QSO数はそれほど伸びていないが、この期間の状況をまとめておく。

■ 6/5(金)

朝7時前にK9DR(AZ)が-15dBで入感。その後、CA・TX・KL7の常連局が見え始める。7エリアでは東海岸(MA・RI)まで入感している様子。

8時過ぎにはCO2XNをコールされている1エリア局が4〜5局見えるが、こちらでは入感なし。同局のQRZ.comにある Log Search を確認すると数局がQSOに成功されている。

■ 6/6(土)

午前中からBYが強力にオープン。14:50にEX9QTが-14dBで入感し2回目のコールでリターンを得た。その後JT1DNが15dBで入感し、こちらも難なくWkdできた。同じ時間帯でUK8OMも安定して入感している。15時半頃にはRA7A(-18dB),UN9L(-8dB)が入感するも”QSO B4”のため静観。

■ 6/9(火)

17時半前にTA6Bが-13dBで入感。アンテナをダイレクト方向へ向けると-4dBまで上昇。コール開始後、1局待ってリターンを得た。EU方面まで伝搬が伸びるか期待したものの、同局は数分でフェードアウトしEU局の入感もなかった。

■ 6/11(木)

8時前にミネソタ州の常連局N0TBが-12dBで入感。PSKReporterでは五大湖〜東海岸に多数フラッグが立つが、こちらでは入感はない。多くのJA局がコールされているW局は“QSO B4”の常連局のため静観。

Xの情報では、ここ数日、EU–W間でBig Openが続いているとのこと。

■ 6/12(金) -EU Open-

15時半頃からハンガリー局が見え始め、15:45にHA8BEとQSO。その後もハンガリーの新局2局とQSO。続いてチェコ・ウクライナ・イタリア・ボスニア・ロシアが入感し、新局を見つけてコール。

PSKReporterではベラルーシの2局がこちらの信号をデコードしているものの入感なし。Big Openとは言えないものの、18時頃まで散発的に入感が続き、計8局とQSO。

■ 6/13(土)

14時半前、韓国のNew Grid局とQSO後(アンテナ真西)、VU2KPHが-17dBで入感。直ぐにコールしてリターンを得た。

その後は夕方までBYが強力に入感するものの、EU方面はオープンせず。

18時半過ぎにVU2DED(-19dB)が入感し、コール直後にリターン。続いてVU2ATNともQSO。一日にインド3局とQSOできたのは初。

■ 6/14(日)-EU Open-

朝6時半前にWA4Q(KY)が-17dBで入感するも、コールする間もなくフェードアウト。IA・IL・MO局が入感するが“QSO B4”のため静観。7時前には全く見えなくなる。

14:46にUK8OM、14:52に9K2GR、その後ウクライナ・ロシアが入感するも続かない。

16時過ぎにドイツ・チェコ・モルドバ・ポーランドが入感するが信号は強くない。PSKReporterではベラルーシも入感しているようであり、西日本ではZB2・CNをデコードしている局もいる。

Wide Graph上、odd側はEUをコールするJA局が3000Hzを超えてびっしり並んでおり、空きDFを見つけることが困難な状況であったが、こちらではEU局のデコードは限定的。

16時半にEA7Lを-18dBでデコードし、直ぐにコールしてリターンを得た。その後、多くのJA局が引き続きEU局をコールされているが、こちらではフェードアウト。

■ 6/21(日)

16:45にUN7GRKが-22dBで入感し、数分コールしてリターン。PSKReporterでは西日本でベラルーシ・北欧・イギリスまで入感している様子。

16:51にLX1LXが-18dBで突然入感。多くの局がコールされているが、PSKReporterではルクセンブルグ付近ではJAの信号はデコードされていない。その後、ウクライナ・ラトビアの“QSO B4”局が入感するも限定的。

■ 6/25(木)

午前中に北米がオープンしていたようだがワッチできず。15時頃にリモートで確認すると、西日本中心にEUがオープンしており、2〜6エリア局が多数コールされているが、こちらでは全く入感なし。

PSKReporterでは北欧〜南欧まで広範にオープンしている様子で、16時半頃にはZB2・CNとQSOされている西日本局も。こちらでは自動受信でイスラエルの常連局のみデコードできていた。

■ 6/26(金)-EU Open-

13:43にYO9HPが-10dBで入感。続いてポーランド・ハンガリー局が入感するもSNRは総じて低い。

14時頃にはウクライナ・ギリシャ局が入感し、新局をコールするが次のシーケンスでデコードレベル以下に落ちることが多く、なかなかリターンが得られない。

15時半頃にはドイツ・スペイン・イタリア局が見え始め、スイス・マケドニア・サルデーニャ島なども入感。多い時で1ピリオド12局ほど見えるが“QSO B4”が多く、またNew局はコールするもデコードは続かない。PSKReporterでは西日本ではモロッコまでパスが伸びているが、こちらでは入感なし。

New局がデコードできたタイミングでコールし続け、17時頃までに6局とQSO。こちらの信号はベラルーシを含め比較的多くの局にデコードされていた。

AIで集計した本日の入感状況は以下のとおり。

■ 6/27(土) -EU Open-

台風7号・8号の同時襲来で強風を懸念したが、進路が東寄りとなり房総半島への上陸はなく、アンテナへの影響もなかった。

13時半に4X1GAが-19dBで入感。直ぐに沈むも再浮上したタイミングでコールしてリターンを得た。同時にZ32ZMもマイナス一桁台で入感しており、パイルアップになっている。

YU0Xが見え始めるがデコードは散発的。YO9HP・SV9CVYなどの常連局も見え始める。

New局が現れないままワッチしていると、14:22にEW4Mが-17dBで入感。直ぐにコールし、3分後に「+01」でリターン。今シーズンの目標であったベラルーシをようやくWkdできた。

その後、1時間ほどNew局を探してコールし、ベラルーシの2局目ともQSO。ピークは15:15頃で1ピリオド10局程度が同時入感していたが、15時半頃には入感局数が減り、16時頃にはEU側は全く見えなくなった。

PSKReporterでは3エリア以西で引き続きFBに入感しており、コンディションが西へ移ったと推察。17時過ぎから再びイタリア・スロベニア・ドイツが入感するもデコードは散発的。西日本では遅い時間帯まで入感が続いていた様子。

本日の入感状況は以下のとおり。

6/3のBig Openも台風が日本列島を通過するタイミングであったが、今回たまたまなのか、何か関係性があるのかは不明。

■6/28(日)-EU Open-

15:10にチェコ局が入感し、直ぐにウクライナ・フランス・イタリアが入感し始めるが”QSO B4”なので静観。
その後、スペイン・マルタ島・バレアレス諸島の新局が入感しコール開始。QSBが激しく、次のピリオドではデコードできないことが多い。加えてeven側でJAとQSOする強力なBY局や国内Esで入感するJA局によるQRMでかき消される状況が続く。それでも1時間で5局とQSOできた。

16時過ぎには一旦終息し数十分後に再び入感し始めるも常連局しか見えない。コールされているJA側も3エリア以西が目立つことからコンディションは西に移ったと思われる。

16時半頃にスペインの新局が入感。コールして2局からリターンを得るも1局は「RR73」未受領で終わる。

17時半頃からモロッコのCN2DX, CN8LIをコールされている西日本局が見えるが、こちらには入感はない。PSKReporterをチェックするとスペイン局をコールしていたタイミングでCN8LIがこちらの信号をデコードしていた。

EUの入感は18時頃まで続いていたが、全て常連局でありコンディションの上昇は見込めないため終了。
本日の入感状況は以下のとおり。

3日続けてのEU Openは今シーズン初めてであり、長時間にわたり広範に入感したが、QSO数はトータル20局に留まった。


2026年6月5日金曜日

328. 50MHz DXing 2026(1)

5月後半から、ようやくマルチホップEsによる北米・EUがオープンし始めた。ワッチできた範囲で入感状況をまとめておく。

■5/22

朝10時前にメキシコの XE2X が -15dB で入感。今季初の北米オープンであったが “QSO B4” のため静観。

夕方16時半頃からフランス、ドイツが入感。こちらも今季初のEU入感となり、フランスの新局をコールするもQSOには至らず30分ほどでフェードアウト。
入感局は少なかったものの、こちらの信号は比較的広範囲に届いていたようである。


■5/24

17時半頃からフィンランドが入感。新たに2局とQSOでき、これが今季初のEU局とのQSOとなった。

PSKReporter(ALL-JA)をチェックすると広く
オープンしていたようだが、こちらでの入感は限定的であった。


■5/28

15時半過ぎにEUロシアの RD4F が -15dB で入感。続いて RK4FF も入感し、それぞれとQSO。昨年秋に50MHzが開放されたとされるベラルーシ方面までの伸びを期待したが、それ以上の広がりはなく終息。

■6/3 -EU Big Open-

台風6号接近のため昨夜よりアンテナを真北方向で降下させていたが、12時半過ぎにインドのVU2FWGが -9dB で入感。試しに何度かコールしていると「-20」でリターンを得た。しかしながらシーケンスが繋がらず、3回目で他局へ移ってしまった。

その後、風が弱まってきたためアンテナをフルアップにしてワッチ。14時頃から北米西海岸が見え始め、新局をコールするもフェードアウト。こちらの信号は多くの局にデコードされていたようである。
15時前にハンガリーのHA8CEを -19dB でデコード。以降、セルビア、クロアチア、チェコなどが入感し始め、Big Open の気配。まずボスニアのE76CとQSO。その後、入感エリアは広がりデコード数も急増しピーク時には20局ほどが同時に入感。

エンティティとしては、Newとなるベラルーシ(EU7A)も見えたが、数回のデコードでフェードアウトしてQSOには至らず。

その他にモンテネグロ(4O6AH)、モルドバ(ER5GB)、コルシカ(TK5JJ)なども安定して入感。後半にはカナリア諸島(EA8/DF4UE)も見えていたが、いずれも “QSO B4” のためワッチのみ。
最終デコードは18時過ぎのベルギー局(ON4IQ)であり、最初の入感から3時間以上オープンしていたことになる。

PSKReporter をチェックすると、こちらの信号が広範囲に届いていたことが確認できる。本日の成果は17QSO(9エンティティ)となった。
参考として、入感時間帯(約3時間分)のWAVファイルをAIで解析し、約5,500件のデコードデータから入感したエンティティおよびEU局のデコード数が最も多かった時間帯/シーケンスを集計した。結果は以下のとおり。

■入感した30エンティティ(時系列)

■デコード数が最も多かったシーケンス(上位10)



2026年5月22日金曜日

327. FFT画像を用いたノイズ測定の手法比較

先月、TS-990 のバンドスコープ(FFT画像)を用いてノイズ低減効果を評価する際、マルチモーダルAIで画像の“見た目の変化”を観測した。

その後、同じ画像をプログラム言語の Python を用いて解析したところ、算定した数値(px/dB)に差異があり、また、ノイズの変化量自体が小さいため目視との比較でどの程度の変動があったのか判り難かった。

そこで今回は、肉眼でも明確に差が見える画像を用いて、
①目視、②AI視覚推定、③Python解析
の三手法でどの程度一致するのか(変化を捉えられるのか)を検証した。

■使用画像


使用した画像は、TS-990 で 50.350 MHz を受信した際の FFT 表示で、 上段がダミーロード終端、下段がアンテナ(CL6DXZ)接続時のもの。

ダミーロード接続時は無線機の内部ノイズ(スパイク成分)のみであり、 アンテナ接続時は内部ノイズに外来ノイズが加算され、ノイズ床全体が持ち上がっていることが肉眼で確認で
きる。


測定条件は以下のとおり。
・測定時間帯:深夜 1 時(信号の入感がなく伝搬状態が安定している)
・TS-990:AGC Off / P.AMP On / NB・NR Off / Filter 2.4 kHz
・SCP:Grid 10 dB / Span 20 kHz / Averaging 2 / REF LEVEL 固定
・アンテナ系:コモンモードフィルタ、フェライトコア装着

■目視による観測


撮影した2枚の画像を拡大して凝視すると、 ダミーロード時のノイズは最下段の基準グリッドから 1 グリッド(10 dB)以内に収まっており、全帯域(2,000Hz)の面積でみるとノイズが占める割合は2 割程度。

アンテナ接続時は同じ領域でノ
イズが 8~9 割を占め、 さらに 1 グリッドラインを超えるノイズ成分もある。感覚的には 7~9 dB 程度ノイズレベルが上昇しているように見える。


■AI による視覚推定


AIはFFT画像のノイズ帯を画像認識で検出し、横方向の各位置ごとにノイズの“上端”を読み取って、その高さを線として可視化する。AIの推定結果にはわずかな揺らぎが生じるため、同じ条件で2回観測し、そのばらつきの範囲を確認した。

・FFT下端を基準(0 px)として評価
・青色ノイズ帯+白色波形線・白色ピーク線をノイズ成分として扱う
・10 dB/div(1グリッド=30px)を基準とし、1 px = 0.33 dB として換算
・「中央値包絡線」「90%包絡線」「高レベル側包絡線」の3軸で比較
 ※包絡線=各列のノイズ上端を統計的に代表させた線


■Python による解析


AIによる視覚推定と同じ基準となるよう算定条件を定め、FFT表示領域(ROI)からノイズ成分の上端位置を抽出して統計処理を行った。

包絡線の定義や換算条件はAI側と同一で、各列の上端位置から中央値や上位側の代表値を求め、複数の指標で比較した。

■算定結果


AI/Pythonの両者によるノイズ差分(DL→ANT接続時)測定結果は以下のとおり。



どの指標軸を用いるかにより結果が異なるが、AI/Pythonともノイズ差分は5〜9 dB前後となった。これは、ノイズ帯のどの部分を“代表的な高さ”として読むか(中央値・上側の高さなど)の違いによって数値が変動するためで想定内といえる。

■まとめ


AI視覚推定およびPython解析とも、肉眼で感じられたノイズ増加傾向と概ね整合する結果となった。

この範囲内で更に精緻な値を求める場合は、ノイズレベル(dBm
)を直接測定できる安価なスペクトラムアナライザ (例:TinySA Ultra)を使用するのが妥当であろう。

今回の主な目的は、AI による画像分析手法と Python解析に慣れることであった。学術的な研究ではないにせよ、AIを用いて定量的な評価を行う場合、AIは過去の算定結果やこちらが目指そうとしている方向性を会話から敏感に読み取り、アンカリングやハルシネーションを起こす可能性が高い。これはAIが“学習”しているわけではなく、あくまで会話の流れに引きずられる傾向が構造的にあるということ。

そのため、先入観を排除する指示を冒頭に必ず入れることが不可欠であり、検出した結果の再現性を確認(複数回、同じ条件で実施)したり、結果を他のAIで検証するなど二重三重の安全策が必要あった。

因みに今回使ったAIは Chat GPT Plus (GPT-5.4 Thinking 標準)である。最新の推論モデルでコーディング・数学・資料作成に強いとのこと。

前回試した他のマルチモーダルAI(無償版)では、AIが作成したPythonコードをPC側のPython環境(事前インストール・パス設定・コマンド操作が必要)で動かす必要であったが、ChatGPT PlusではAI側にPython実行環境(サンドボックス)があり、プロンプトだけで解析が完結した。

2026年5月10日日曜日

326. ローバンド用アンテナチューナーの導入

1.9MHz帯(160m)の運用を始めるにあたり、アンテナチューナー(MFJ-989D)を改めて導入したので纏めておく。
MFJ-989D

■経緯


昨年末、80m用 Inv-Vee の高SWR(2.0前後)対策としてMFJ-986 を導入したが、奥行き45cmという大きな筐体は現行のラックからはみ出し、使用頻度の少ない常設機材として置いておくのがためらわれたので一旦手放して
いる。

4月に160m用の短縮型 Inv‑Vee を新設するにあたり、低地上高による低インピーダンス化が予想されたため、より広い整合範囲を備えかつ筐体の奥行が短い同機種を探していたところ、状態の良い中古品を入手できた。

■特長

既に無線機材の製造を終了しているMFJ社がネット上で公開している 986 と 989D のマニュアルをAIを用いて比較検証。その結果、ローバンド運用における 989D の特長としては以下の点が挙げられる。

① 広範なインピーダンス整合範囲

両者のインピーダンス整合範囲(公称値 / 抵抗成分R)は次のとおり。

・MFJ‑986 :35〜500Ω(1,500W PEP時)
・MFJ‑989D:6.5〜3,200Ω(1,500W 定格時)

160m短縮型 Inv-Vee のSWR、インピーダンスを改めて測定した結果は下表のとおり。

この実測値は、以前使用していた986の整合範囲にも収まっているものの、160m帯の短縮アンテナは、抵抗成分とリアクタンス成分が同時に現れる負荷になりやすく
、より広い整合範囲を持つ 989D の方がマージンが大きい。

② 回路構成と整合能力の差異

989Dは、大型エアバリコン(12cm×9cm)二基と高Qローラーインダクタ(10cm×5.5cm)を組み合わせた、オーソドックスなTネットワーク構成を採用している。

一方、986は一つのノブで操作可能な「差動コンデンサ(Differential Capacitor)」を用いる独自のディファレンシャル・T回路であり、調整の容易さが特長だが、構造上、両方の容量を同時に最大化することができない。そのため、160mの低インピーダンス負荷に対しては、追い込みの幅に限界が生じる。

対して989Dは、二基のバリコンが独立しているため調整には慣れを要するが、各々の容量を最大限に活用して、今回のような負荷に対しても、最適なマッチングポイントを追い込める自由度がある。

160m/80mのようなローバンドでは、整合のために大きな容量(C)と損失の少ないインダクタンス(L)が求められるが、989D の重厚なパーツ構成はこの帯域で真価を発揮する。特に80mでハイパワー運用する場合、この物理的な「大きさ
」がそのまま耐圧性能と運用上の安心感に直結する。

MFJ-989D

③ 高耐圧・高信頼性のバラン内蔵


989D は 1:1 電流バランを内蔵しており、今後、ロングワイヤ系や不平衡アンテナを使う際にも外付けバランを追加せずに運用できる。


④運用性と設置性


・内蔵ダミーロード

989D は300W の非誘導ダミーロードを内蔵しているため、送信機のプリチューンや出力確認が単体で行える。


・ピーク/平均パワーメーター

989D のメーターはピーク電力(PEP)と平均電力を切り替えて測定できる。なお、メーター駆動には外部電源(12V)が必須である。一方、986 は外部電源なしでもメーターが動作するため、この点は989D のデメリットと言える。

・適正な筐体サイズ

989D の筐体は奥行きが35cmであり、986 よりも10cm短い。縦/横幅は986よりも4.5cm大きくなったが、ガラスキャビネットの上に設置しているFRG-7の上に乗せたところバランス良く収まった。
MFJ989D、FRG-7

■マッチング状況・総評


各バンドにおける整合時(VSWR:1.1)のダイヤルポジションは以下のとおり。

160mの短縮型 Inv-Vee はインダクタンスが「37」(カウンター値)と少ない値で整合しており、アンテナ側が1.840MHz付近で良好に動作していることを示している。

実運用ではチューナー側で軽く補正するだけで整合が取れており、回路内の損失も最小限に抑えられていると考える。

80mの Inv-Vee においても妥当なインダクタンス値「71」で整合しており、バリコン側にも十分な操作上の余力を残している。

実際の調整では、ローラーインダクタのハンドルを回してゲージをマニュアルに記載されているプリセット値に持っていったところ、その周辺でストンとSWRが落ちて、あとは二基のバリコンを微調整するだけで完了した。いわゆる「追い込み」操作は不要であり、極めて素直な挙動であった。

以上により、MFJ-989D がどちらのアンテナに対しても無理なく動作しており、広い整合範囲と低損失なTマッチの特性が実測値からも裏付けられた。

また、整合時の各ダイヤルポジションは、今回の実測インピーダンスから想定される調整位置と一致しており、測定値とチューナーの動作が矛盾なく対応していることを確認できた。

2026年5月2日土曜日

325. 3/4月のレビュー

■サマリー

QSO数は162となり前年同期(167 QSO)とほぼ同水準。QSOの中心は相変わらずDXペディション局で全体の7割弱にあたる110 QSOを占めている。4月には DXCC Challenge AwardがWkdベースで2,300を超えたものの、LoTWベースでは2,257に留まっている。


■エリア別/バンド別状況

エリア別ではDXペディション局のXX9WとS21WDをオールバンド/オールモードで追いかけたことでQSO数が増え、アジアが3割強を占めた。バンド別では特筆すべき偏りは見られなかった。


■エンティティ別状況

3Y0KをはじめとするDXペディションによりBand Newの積み上げに注力し、16エンティティを追加した。内訳は以下のとおり。


■50MHz DXing

春シーズンのF2伝搬による南米方面からの入感は確認できなかった。また、近隣アジアを除いて未QSO局が入感した際は基本的にコールしているものの、QSO数は12に留まった。

一方、4/5に T31TTT と FO5QB の2つの Band New を得られたのは幸運だった。特にタヒチ(FO)は、高校生の頃にCWでアクティブだった FO8DR を連日コールした思い出
が鮮明に残っており、今回ようやくQSOできたことは感慨深い。

■WAZ Award

28MHzで Z81D をCfmできたことで、5 Band WAZ まで残すところは 3.5MHz の5ゾーンとなった。いずれもこれまで一度も入感を確認したことがない難関ゾーンであり、達成にはまだ時間を要しそうである。

参考までに50MHzを確認すると、こちらは7ゾーンが残っている。このうち3つは過去に入感実績があるが、残る4ゾーンは伝搬的にもかなりハードルが高い。
それでも何が起こるか分からない ”Magic Band” であり、サイクル25のピークを過ぎた今、今後数年間は夏季シーズンでのマルチホップEsによる入感に期待したい。

2026年4月25日土曜日

324. AI解析の差異について

フェライトコアのノイズ抑制効果を生成AI を使って検証した際、 AI によって分析結果が異った。ノイズを定量化する際の基準となるパラメーターであったため、 その差異がどこから生じたのかを整理しておく。

■差異発生箇所

TS-990のメインディスプレイ(FFT表示/7インチ/800×480)のグリッド縦1マスあたりのピクセル数


AI①:40 px (1px = 0.25dB)
AI②:30 px (1px = 0.33dB)


1マス=10dB(10dB/div)であるため、1ピクセル当たりのノイズ量を算出する際の基礎値となる。

■AI①の回答

「この画像の垂直解像度は 480px である。GUI設計の一般的な定石に基づけば、表示エリアはキリの良い 400px 程度に設定されるのが通例であり、それに合わせてグリッドも 40px 間隔(10分割) または 20px 間隔(20分割)で配置されるのが最も合理的。」

「画像全体のレイアウトから推測しても、目盛り幅が 40px であると考えるのが統計的に最も妥当である。」

■AI②の回答

「提示された画像データの垂直軸を解析した結果、グリッドの配置には明確な幾何学的規則性が確認できる。」

「具体的には、y座標 100px 地点に第1グリッド、y座標 130px 地点に第2グリッドが位置しており、その座標差は正確に 30px である。この 30px の間隔は画面内の全グリッドにおいて一貫しており、画像の解像度(800×480)に対する相対的な位置関係とも完全に整合する。」

「したがって、1マスに相当する値は統計的な推測に頼るまでもなく、物理的に 30px であると確定できる。」

■AIの特性

AI①:推測ベースの判断(LLMの特性)


膨大なテキストデータを基盤とする LLM(大規模言語モデル)であり、画像を厳密な数値として処理するプロセスが不得手。そのため、全体の解像度や過去の学習パターンから「このサイズなら目盛りは 40px 程度が妥当だろう」といった統計的推測を優先したと考えられる。

実際には計測できずとも、指示に応えるために“測ったような体裁”を整えてしまう傾向がある。一方で、こうした特性は、曖昧な情報からでも即座に大まかな見立てを提示できるという強みの裏返しでもある。

AI②:視覚ベースの判断(マルチモーダルの強み)

画像の形状や比率を比較的正確に読み取ることができるマルチモーダルAIモデル。画像の形状・密度・規則性を直接読み取り、グリッド線の間隔やパターンを構造的に把握する能力を持つ。
厳密な座標計測を行うわけではないが、画面上の相対的な位置関係を正しく捉える点で、推測ベースのAI①とは本質的に異なる。この特性により、FFT表示のような規則構造を含む画像では、実際の画面表示に整合する値を返しやすい。

■差異原因の深堀り

両者の主張をそれぞれにフィードバックし、反証を求めるやり取り(議論)を数回繰り返した結果、 AI①も最終的に「1 マス=30 px」であることを認めた。さらに別の AI に全てのやり取りを検証させて整合性を確認。
注:画面の実寸(14.9×8.9cm)から求めたピクセルピッチと TS‑990 の画像データ(800×480px)は計算上一致する。

この検証過程を踏まえ、正解は視覚的に読み取ったAI②の回答(30px)と断定できる。そしてAI①の誤回答は単なる計算ミスというよりAIの構造的な違いに起因している。改めて
整理すると以下のようになる。

AI①は 言語モデルとしての「推論能力」を基盤にしており、 画像を数値データとして扱わず文脈や過去のパターンから “もっともらしく見える答え”を組み立てる(推測する)言わば
「文系AI」

AI②は 画像を映像的に扱える画像解析エンジンを備えており、 ピクセル位置や座標差といった物理量を直接扱うことができる。 そのため、視覚に基づく判断を積み上げた言わば「理系AI」
 同じデータ解析を指示したことで、両者の個性がより明確になった。

■AI活用のポイント

今回の検証で明らかになったのは、生成AIは同じ画像を見ても、その内部構造によって “見え方” や “考え方” もまったく異なるという事実である。

検索・言語モデルは、曖昧な状況でも素早く結論を提示できるが、長さや座標といった「物理的な数値」の扱いには「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」が混じりやすい。

対して画像解析に長けたモデルは、測定において圧倒的な信頼度を誇るが、情報の取捨選択や文脈の解釈には別の知能が必要となる。

AIそれぞれの特性を理解し、状況に応じて「どの知能」を使うか。その選択の重要性を、今回の実験は改めて示してくれた。


2026年4月23日木曜日

323. フェライトコアの効果検証とノイズ対策の再構築

現在、HF帯~50MHzのアンテナ系にはコモンモードフィルター(CMF)を挿入し、補完的にフェライトコア(FC)を数ヶ所にクランプしている。しかしFCについては、必ずしも明確な根拠に基づく設置とは言えず、よく揶揄される“おまじない” の域を超えていない可能性もある。

そこで、FCの効果を定量化するためにAIを活用し、フロアノイズ低減(SNR向上)を目的とした環境の再構築を行った。








■CMF/FC の役割整理


①コモンモード抑制

CMFは特定帯域(HF帯など)で高いインピーダンスを得るよう設計された専用フィルターであり、アンテナ系に乗るコモンモード電流を大きく抑える。

FCは広帯域で緩やかに効く素子で、複数個を直列にすることでインピーダンスを積み上げられる。CMFで取り切れない残留コモンモードを追加で抑える役割を担う。

②ノイズ抑制(SNR向上)

CMFはアンテナ(同軸外皮)に付着したノイズを入口で遮断する一次対策であり、SNRに対して大きな効果を持つ。設置はアンテナ直下が最適だが、タワー上での障害切り分けが煩雑になるため、現在は屋内側のみで使用している。

FCはCMFでは遮断しきれない「別経路のノイズ」、すなわち長尺の制御線に途中で付着するノイズ、シャック内の電子機器からケーブルを介して放射されるノイズなど、アンテナ(主線)とは異なる経路で入り込むノイズに対して広帯域で効果を発揮する。

■FCの設置計画

現在のCMF設置状況を踏まえ、最適なFCの設置場所と数量をAIとの対話により決定。
設置計画は以下のとおり。

これまで特に対策を講じていない多芯・長尺の制御線(Versa用コントロールケーブル、ローテーターケーブル)は周囲のノイズを取り
込み易いため同軸ケーブル同様、ケーブル取り込み口に集中配置した。

ケーブル取り込み口の直下で5本のケーブルにFCをクランプすることは物理的に困難であり、また並列にした場合、FC同士が磁気的に接触し効果が薄れるため、直列配置にしつつ最短でも互いの距離を3cm以上(コア1個分相当)離すよう設置。デスク裏の壁面が少し雑然となるが止む無しとした。

次にシャック内で無線機に繋がるLAN、USBケーブルもPC側/TS-990側双方の端子にFCを取り付け、更にノイズを発生させるモニター2台に繋がるHDMI、ACラインにもFCを追加した。

■観測方法・概要

ノイズの定量測定にはスペアナが必要であるが所有していないため、TS-990のバンドスコープ(FFT表示)を簡易測定器として活用。

TS-990 の FFT はノイズレベルを絶対値(dBm)として表示しないものの、縦軸が 10 dB/div の固定スケールで描かれるため、フロアノイズの相対的な高さを読み取ることができる。

ただし肉眼では微小な差異を判別できないため、 FCあり/なしの各状態で FFT 画像を撮影し、
AI に読み込ませて高さの差分から dB差(効果)を推定することにした。


■観測条件・プロセス


測定の再現性を担保するため、以下の条件を固定。

・周波数:3.520MHz(家庭内/近隣ノイズの影響を受けやすい最もシビアなバンド)
・TS-990設定:AGC Off / P.AMP On / NB・NR Off / Filter 2.4kHz
・SCP設定:Grid 10dB / Span 20kHz / Averaging 2 / REF LEVEL固定

FCはあらかじめ決めた順序で “引き算方式” により取り外し、10分以内に全ステップを完了させることで伝搬変動の影響を最小化した。

観測プロセス(5ステップ)は以下のとおり;


■観測結果・効果


①分析基準


解析にあたり、以下の3つの基準を設定。

・固定スケールの確認(10dB=30px)

TS-990のFFT表示は 10dB/div の固定スケール。画像解析により「縦1マス=30px」が一定であることを確認。これが定量比較の前提となる。

・換算レートの算定(1px=0.33dB)

 10dBを30pxで割り、1px ≒ 0.33dB と換算。ピクセルの最小単位は整数(1px)だが、繰り返し測定した結果を平均することで、小数点以下の微細な変化も反映させた。

・ノイズ重心の定義

ノイズ波形は常に上下に揺れるため、波形の上側平均と下側平均の中点を「ノイズ重心」と定義。複数箇所のサンプリングと2枚の画像による平均化を行い、ノイズの「塊(かたまり)」としての動きを把握した。

② 観測結果

画像分析(注)の結果、各対策によるフロアノイズの抑制量を観測した。

注:グリッド変化値(px)はAIによる視覚的分析に基づく。Python等による定量的な画像解析は行っていない。

この観測結果からはでは、全ての対策によるノイズ削減効果は 5dB となり、無線機に届くフロアノイズを電力比で 約1/3(約32%) まで抑え込んでいる計算になる。

入力信号レベルが一定の条件下での測定であるため、このノイズ低減分はそのまま SNR の向上に寄与している筈だが、実運用でどの程度体感できるかは今後の確認となる。

■総括


今回の検証では、FC を用いた「多経路対策」の効果が明確になった。特に未対策だった制御線への FC 追加は、ノイズ床の低下が肉眼でも確認でき、同軸・制御線・周辺機器といった複数の侵入経路に対して段階的に対策を積み上げることの有効性が示された。

これにより「CMF で大元を遮断し、FC で周辺経路を封じる」という多層的なノイズ対策の方針が、実際の運用環境でも有効であることを再確認できた。

また、AI を用いた画像解析により、従来は感覚的だった FC の効果を視覚的に比較できた点も収穫である。ただし AI は得意・不得意があり、時に“もっともらしい誤答(ハルシネーション)”を返すこともあるため、一つのモデルに依存せず、複数の AI を使い分けて結果を照合することが解析の信頼性を高めるうえで重要となる。

<後記> 2026/5


今回、マルチモーダル AI による FFT 画像のピクセル差分からノイズ削減効果を推測したが、 後日、Python を用いて画像解析したところ、算定した数値は当初より小さい値となった。

この背景には、AI は見た目のノイズ床の高さを広く捉えて変化を評価するのに対し、 Python はノイズ分布の重心位置のみを数値化するため、変化が小さく算出されやすい。このように評価指標が異なるため、同じ画像でも結果が一致しない結果となった。

いずれにせよ、FFT 画像だけでノイズ低減量を定量的に求める方法には限界があり、反対に実際のノイズ減衰量が画像に十分反映されない場合も考えられる。実際に肉眼でノイズ床の低下は確認できるものの、 数ピクセル単位の変化量から算出した数値は、あくまで参考値として扱うのが妥当だろう。


2026年4月19日日曜日

322. タワーアース工事

先般、1.9MHz帯アンテナを検討する中で、タワーの接地について改めて調べたところ、周囲への落雷による誘導雷のリスクが無視できないことが分かった。そこで安心して運用を続けるためにタワーのアース工事を行うことにした。

■ 周囲環境と落雷リスク

自宅は第一種低層住宅地で周囲に高い建物はないが、タワーより高い構造物として以下がある。
東方向 90m:野球場のネットを支えるコンクリートポール群
西方向 130m:高圧線鉄塔
南方向 400m:地上高60m超の高圧線鉄塔

タワー自体の高さは15m(マストを含めると18m)なので直撃雷の可能性は低いと考えていた。しかし、周囲の鉄塔などに落雷した際、静電誘導や電磁誘導による誘導雷および接地電位上昇のリスクは否めない。

タワー建設から8年間、近隣で落雷被害の話は聞かなかったため深く考えていなかったが、通勤で利用する駅舎(2階)から見ると、タワーが周囲より頭一つ抜けて見える。この状況を踏まえ、リスク低減と安心のためにアース工事を行うことにした。

■ 業者選定と工事方針

以前、ハイパワー変更工事の際に200V配線とアース工事をお願いした電気工事店(ご隠居)に連絡。その日のうちに現地調査に来ていただき、以下の方針で進めることにした。

・被雷対策としての保護接地のため、接地抵抗はA種接地相当(10Ω程度)を目標とする
・アース棒(1,500mm)を連結して「深打ち」することで低い抵抗値を確保する
・タワーの3本柱それぞれにアース線を繋ぎ、どの柱に雷が落ちても大地へ逃がせるようにする

3日後「今から工事しますが・・」との連絡が入り、急遽、立ち会いながら(手伝いながら)作業を進めた。

■ 作業工程

①掘削

タワー東側の柱から約1.2m離れた地点を70cmほど掘り下げる。

②配管ルートの確保

掘削地点までの経路を掘る(深さ30cm程度)。そこにPF管に通したアース線(22sq)を配線。

③アース棒の深打ち

連結式アース棒(Φ14×1,500mm)を電動ハンマで順次打ち込んでいく。
電動ハンマー

④接地抵抗の測定

アース棒を打ち込む毎に抵抗値を確認。
接地抵抗

⑤タワーとの接続

タワー基部(東側柱)のボルトにアース線端子を装着し、他の2本の柱とリンク接続して終了工事時間は2時間強であった。
タワーアース

■ 接地抵抗の推移

アース棒を1本打ち込んだ段階(先端深さ2.2m)での測定値は 21.0Ω。 その後、測定しながら4本まで深打ちした結果は以下のとおり。
接地抵抗
最終的にタワー本体から測定した接地抵抗は3.9Ωとなった。
この値から逆算(並列合成抵抗の計算)すると、タワー単体の接地抵抗は 約12.8Ω。もともと地中の湿り気や土質が良く(軟弱地盤であるが)、タワー基礎の鉄筋がしっかりと大地と結合していることが証明された。

今回、接地抵抗として「3.9Ω」という極めて低い値を得られたことで、Low Band運用における高周波的な安定も期待できるため、タワーそのものを輻射体とするシャントフィード等の検討もしたい。