現在、HF帯~50MHzのアンテナ系にはコモンモードフィルター(CMF)を挿入し、補完的にフェライトコア(FC)を数ヶ所にクランプしている。しかしFCについては、必ずしも明確な根拠に基づく設置とは言えず、よく揶揄される“おまじない” の域を超えていない可能性もある。
そこで、FCの効果を定量化するためにAIを活用し、フロアノイズ低減(SNR向上)を目的とした環境の再構築を行った。
■CMF/FC の役割整理
①コモンモード抑制
CMFは特定帯域(HF帯など)で高いインピーダンスを得るよう設計された専用フィルターであり、アンテナ系に乗るコモンモード電流を大きく抑える。FCは広帯域で緩やかに効く素子で、複数個を直列にすることでインピーダンスを積み上げられる。CMFで取り切れない残留コモンモードを追加で抑える役割を担う。
②ノイズ抑制(SNR向上)
CMFはアンテナ(同軸外皮)に付着したノイズを入口で遮断する一次対策であり、SNRに対して大きな効果を持つ。設置はアンテナ直下が最適だが、タワー上での障害切り分けが煩雑になるため、現在は屋内側のみで使用している。FCはCMFでは遮断しきれない「別経路のノイズ」、すなわち長尺の制御線に途中で付着するノイズ、シャック内の電子機器からケーブルを介して放射されるノイズなど、アンテナ(主線)とは異なる経路で入り込むノイズに対して広帯域で効果を発揮する。
■FCの設置計画
ケーブル取り込み口の直下で5本のケーブルにFCをクランプすることは物理的に困難であり、また並列にした場合、FC同士が磁気的に接触し効果が薄れるため、直列配置にしつつ最短でも互いの距離を3cm以上(コア1個分相当)離すよう設置。デスク裏の壁面が少し雑然となるが止む無しとした。

次にシャック内で無線機に繋がるLAN、USBケーブルもPC側/TS-990側双方の端子にFCを取り付け、更にノイズを発生させるモニター2台に繋がるHDMI、ACラインにもFCを追加した。

次にシャック内で無線機に繋がるLAN、USBケーブルもPC側/TS-990側双方の端子にFCを取り付け、更にノイズを発生させるモニター2台に繋がるHDMI、ACラインにもFCを追加した。
■観測方法・概要
TS-990 の FFT はノイズレベルを絶対値(dBm)として表示しないものの、縦軸が 10 dB/div の固定スケールで描かれるため、フロアノイズの相対的な高さを読み取ることができる。
ただし肉眼では微小な差異を判別できないため、 FCあり/なしの各状態で FFT 画像を撮影し、AI に読み込ませて高さの差分から dB差(効果)を推定することにした。
■観測条件・プロセス
・周波数:3.520MHz(家庭内/近隣ノイズの影響を受けやすい最もシビアなバンド)
・TS-990設定:AGC Off / P.AMP On / NB・NR Off / Filter 2.4kHz
・SCP設定:Grid 10dB / Span 20kHz / Averaging 2 / REF LEVEL固定
FCはあらかじめ決めた順序で “引き算方式” により取り外し、10分以内に全ステップを完了させることで伝搬変動の影響を最小化した。
■観測結果・効果
①分析基準
・固定スケールの確認(10dB=30px)
TS-990のFFT表示は 10dB/div の固定スケール。画像解析により「縦1マス=30px」が一定であることを確認。これが定量比較の前提となる。・換算レートの算定(1px=0.33dB)
10dBを30pxで割り、1px ≒ 0.33dB と換算。ピクセルの最小単位は整数(1px)だが、繰り返し測定した結果を平均することで、小数点以下の微細な変化も反映させた。
・ノイズ重心の定義
ノイズ波形は常に上下に揺れるため、波形の上側平均と下側平均の中点を「ノイズ重心」と定義。複数箇所のサンプリングと2枚の画像による平均化を行い、ノイズの「塊(かたまり)」としての動きを把握した。
② 観測結果
この観測結果からはでは、全ての対策によるノイズ削減効果は 5dB となり、無線機に届くフロアノイズを電力比で 約1/3(約32%) まで抑え込んでいる計算になる。
入力信号レベルが一定の条件下での測定であるため、このノイズ低減分はそのまま SNR の向上に寄与している筈だが、実運用でどの程度体感できるかは今後の確認となる。
今回の検証では、FC を用いた「多経路対策」の効果が明確になった。特に未対策だった制御線への FC 追加は、ノイズ床の低下が肉眼でも確認でき、同軸・制御線・周辺機器といった複数の侵入経路に対して段階的に対策を積み上げることの有効性が示された。
これにより「CMF で大元を遮断し、FC で周辺経路を封じる」という多層的なノイズ対策の方針が、実際の運用環境でも有効であることを再確認できた。
また、AI を用いた画像解析により、従来は感覚的だった FC の効果を視覚的に比較できた点も収穫である。ただし AI は得意・不得意があり、時に“もっともらしい誤答(ハルシネーション)”を返すこともあるため、一つのモデルに依存せず、複数の AI を使い分けて結果を照合することが解析の信頼性を高めるうえで重要となる。
入力信号レベルが一定の条件下での測定であるため、このノイズ低減分はそのまま SNR の向上に寄与している筈だが、実運用でどの程度体感できるかは今後の確認となる。
■総括
これにより「CMF で大元を遮断し、FC で周辺経路を封じる」という多層的なノイズ対策の方針が、実際の運用環境でも有効であることを再確認できた。
また、AI を用いた画像解析により、従来は感覚的だった FC の効果を視覚的に比較できた点も収穫である。ただし AI は得意・不得意があり、時に“もっともらしい誤答(ハルシネーション)”を返すこともあるため、一つのモデルに依存せず、複数の AI を使い分けて結果を照合することが解析の信頼性を高めるうえで重要となる。
<後記> 2026/5
今回、マルチモーダル AI による FFT 画像のピクセル差分からノイズ削減効果を推測したが、 後日、Python を用いて画像解析したところ、算定した数値は当初より小さい値となった。
この背景には、AI は見た目のノイズ床の高さを広く捉えて変化を評価するのに対し、 Python はノイズ分布の重心位置のみを数値化するため、変化が小さく算出されやすい。このように評価指標が異なるため、同じ画像でも結果が一致しない結果となった。
いずれにせよ、FFT 画像だけでノイズ低減量を定量的に求める方法には限界があり、反対に実際のノイズ減衰量が画像に十分反映されない場合も考えられる。実際に肉眼でノイズ床の低下は確認できるものの、 数ピクセル単位の変化量から算出した数値は、あくまで参考値として扱うのが妥当だろう。




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