今の時期(2018年)はサンスポットの最下降期であるため、DXは7MHzのCW中心となると考えたが、7MHzの八木系アンテナでは、どうしても回転させた際に両隣の敷地に大きくはみ出すため断念せざるを得ない。また垂直系は、打ち上げ角が低くDX向きと言われているが、ゲインが無くタワートップに取り付けることは構造的に無理がある。結果として、短縮形ロータリーダイポールをタワートップに設置して(地上高は半波長以上が理想であるが、17 m程度が限界)打ち上げ角を可能な限り低く抑える計画とした。
しかしながら、候補と考えていたミニマルチ社のアンテナが、部材メーカーの事情により納期が大幅に遅れるとの連絡があり、また、バランを用いない給電方式のため、QROした際にインターフェア発生に不安が残ることから計画を変更することにした。
なお、同社のホームページに記載されているアンテナのエレメント長などの数値が、取り寄せたpdf資料と異なることが多く、また既に販売していないアンテナがメンテナンスされずそのまま掲載されているためにメールで何度も確認し、結果、徒労に終わることが多かった。
その後、工人舎のversaシリーズ、KA-404Liteを検討。いわゆる「巻尺式アンテナ」の特長であるWARCバンドを含む7-50MHzのオールバンドが全帯域SWR値1.2以下で運用可能であり、回転半径も許容内であったため、ほぼ決めかけたが、オプション(50MHzパッシブエレメントなど)や事前組み立て費用を含めるとアンテナだけで60万円を超える額となる。(ミニマルチ社でのアンテナ見積額の約4倍)また、機械構造のため、故障時(アンテナが故障するというのも滑稽であるが..)は、全バンドで運用できない虞や修理の必要性があることに鑑み断念。
アンテナは、あくまで「空中線」としての機能だけを愚直に有するものとして、最終的には、7MHzダイポールがオプション設定されているクリエイトデザイン社の318-40(14/21/28/3エレ)を選んだ。
50MHzは、318-40のブーム長(5.0m)とのバランスに鑑みCL6DX(6エレ/ブーム長5.7m)とした。50MHzの6エレでは、F2層によるDXには力不足であることは否めないが、8エレ以上のクラスになると、それ一本とHF帯はマルチバンドダイポールという構成にならざるを得ないため、今回は様子見とした。
なお、この2本のアンテナは、1970年代には既に発売されており、何度か改良されているが基本仕様は変わらず、極めてスタンダードな(廃番にならない程度に普通に飛ぶと解釈)アンテナであると考える。
アンテナの配列はタワートップから1.0mの位置に318-40を、更にその上1.5mの位置にCL6DXを設置。この構成での受風面積(45m/s)は、約15㎡となり(クリエイトデザイン社による試算)KT-15Cの許容負荷を僅かに越えるが、強風時にはアンテナを降下させることで対処する。
144/430MHzのグランドプレーンは、エアバンド受信ができるコメット社のGP-5(全長2.4m)を富士無線のセールス時期に購入・保管しており、これをタワー中腹部(屋根の高さを越えるレベル)にアンテナアーム(AM26B/2.7m)を用いて取り付けることにした。アンテナマストの先端に取り付けない理由は、ローテーターの回転により、捻れに弱いSFAケーブル(10D-SFA)のトラブルを防ぐことと、ケーブルによる減衰量を少なくするためである。
結果として、GP-5を除く全てのアンテナ、ローテーター、タワー関係の部材がクリエイトデザイン製となった。1社に限定した方が、メールでの問い合わせも効率的であった。
全体の構成は下図のとおり;

タワー建設工事に関する業者への発注に先立ち、ご近所への挨拶文として「アンテナ鉄塔工事のお知らせとお願い」を作成し、両隣、道路を挟んだ2軒および自宅裏の2軒の計6世帯に配布。文面は、アマチュア無線を全くご存知ない方を想定してなるべく解り易い表現に心がけた。
文書配布の趣旨は、事前に工事について告知することと、この工事が市役所に連絡した上で、法令に基づきまた、必要な手続きに則り行う旨(要するに違法性が無いこと)を伝えること。特に自宅に近い3軒については、直接、文書をお渡しして説明し、快諾いただけた。

タワー建築の翌日、自宅と同じブロック内および道路を挟んだご近所など計24世帯に挨拶文をお配りした。この際、文面を少し加筆し、アンテナは主に受信用途であることや電波が発射される様子(=数秒間の送信を数分間断続して行う)を具体的に記して、もし家電製品に雑音等が入った場合は、ご連絡いただくようお願いする旨を記載した。
その後、同じ南側道路に面している少し離れた9世帯についても、車で行き来する際に、目に入ることから念のため同様の案内文を配布した。
アマチュア無線のタワーは、建築基準法および都市計画法で言うところの「工作物」に該当し、建築基準法第6条の定めにより、15mを超えるものは「工作物の確認申請」を地方自治体に行う必要がある。ちなみに15mを越えるという意味は、15.0mは含まず、15.1mは含まれる(小数点以下の四捨五入に非ず)。したがって、KT-15Cの地上高は15.3mであることから、0.3m深く掘ることで地上高を抑え、確認申請を不要とした。
市役所の建築住宅課にメールで問い合わせを行い、15m以内の工作物を建柱する場合は工作物の確認申請が不要である旨を確認。次に市役所の都市計画課に連絡し工作物の建設に関して地区計画(都市計画法に準拠)で定めている「行為の届出書」を提出した。
地区計画とは、当該地区に居住する住民の合意に基づき、自治体が法的拘束力を持つよう文書化した様々な制約(市の条例と同義)であり、これは住宅販売会社が小規模開発、例えば敷地を分割して狭小住宅を建設し販売することを防ぐためや、景観を維持することで当該地区の環境を一定基準に保つ目的がある。
この地区計画の中に「建築物の高さ制限」の項目が含まれている場合があるが、工作物(すなわちタワー)が建築物に該当するかどうか、またその高さ自体も、同じ自治体(市内)であっても、それぞれの地区計画によって定義、解釈が異なるようである。
タワーの高さについては、住宅地区(第一種低層住宅専用地域)であることから、ご近所にも配慮し15メートル以下で検討。クランクアップタワーは、クランクダウンすれば目立たないものの予算の大幅な増加だけでなく基礎コンクリートを打つ面積が広くなり、結果、巨大な構造物を庭に設置することになるため最初から検討外とした。
そもそも計画の出発点は、ルーフタワーによるアンテナ設置でのリスク軽減であるため、選択肢としては、小型から中型規模の自立タワーであるクリエイトデザイン社のKT-Cシリーズとした。KT-Cシリーズは、タワーの横幅が最大でも60cmとスリムな構造であり、基礎工事の面積が0.9m×0.9mと狭く(KT-Rシリーズは1.2m×1.2m)またエレベータキットによるアンテナの昇降で、台風時の懸念を払拭することができることから、KT-13C(12.7m)またはKT-15C(15.3m)を選ぶこととした。
エレベータキット(AE1A-13C〜15C)は、タワーの許容負荷を超える受風面積のアンテナ設置であっても、強風時に下降させることを前提とすれば設置可能であるが、HFアンテナのエレメントが屋根と干渉するので、実際には、家屋の高さと同じ8mまでしか下がらず、アンテナ調整などはタワーに登って実施する必要がある。
ちなみにクリエイトデザイン 社によるとKT-15Cの許容負荷(45m/s時)は、カタログ値では2.0㎡であるが、エレベータキットを取り付けた場合、1.4㎡まで下がるとの事。
なお、基礎部については、オプションとして、コンクリート・レス仕様があるが、設置には地盤の強度を考慮する必要があり、設置する前提で住宅建設時に地盤調査した地耐力を改めて確認してみると、深さ2.0m地点でN値が2〜3の軟弱地盤であった。
クリエイトデザイン社にメールで、止めてくべきかを打診したところ、そもそもこの地耐力では、カタログ掲載の基礎工事ですら強風時にアンテナをエレベータで下降させない場合、風下方向に傾く虞もあるとの事であった。
上記を踏まえ、また、KT-15Cを選択した場合は地上高を15.0メートル以下に調整するため(後述)、標準工事(深度1.8m掘削)よりも更に0.3m深く掘り下げ、且つ、KT-Rシリーズのように底部を扇形に広げることで、基礎を少しでも強化することにした。

ルーフタワーでは屋根にかかる荷重が台風などの強風時には更に増すため、スレート瓦であっても屋根を痛める懸念があり、最悪、ステーワイヤーが切れて倒壊した場合、家屋、近隣に被害をもたらす虞があることや、自宅の構造上、アンテナの調整等でベランダから屋根に登ることが厳しいこと(折り畳み式のアルミ梯子では、ひさしの雨樋部分に干渉し傾斜がつけられない)、そして、命綱なしでの屋根への昇り降りは今は難なくできるとしても、5年後、10年後を考えれば、事故の危険性が高まる事は考えねばならず(自らの体力、注意力を過信しないこと)改めて思案することとした。
道路に面した南側の庭にタワーを建てるスペースはあるものの、自宅の外観を損なうであろうとの想いから、当初は考えてはいなかったが、ルーフタワーを搭載した家屋のイメージを作成するために撮影した自宅の画像にタワーのイメージ図を重ねてみたところ、思っていたよりも違和感を感じなかったことから、タワー化計画を併せて検討開始。
タワー化のメリット・デメリットを洗い出して検討した結果、最終的にはアマチュア無線に対するモチベーションを高く保つことができ、創意工夫の可能性が広がるタワー建柱として進めることにした。
<メリット>
→タワー上でのアンテナ調整等の作業やタワーへの昇り降りが、高所作業用の安全帯を装着すれば比較的安全に実施できる。
→ルーフタワーと比べ、比較的大きな(重い)アンテナを搭載することが可能であり地上高も稼げる。これは、1kWにQROする際には、インターフェアの防止にも有利となる。
→台風時に家屋および近隣に被害が及ぶ心配はまずない。エレベータキットでアンテナを昇降させれば、更に安心感が得られる。
<デメリット>
→小〜中型のタワーであっても工事費用がかさむ。ルーフタワーでの施工と比べて倍額以上は必要。
→ご近所からすれば、建築当初の威圧感、違和感、そして、よくわからないが大きなアンテナから電波が発射されることに対する不安感は否めないと考えるため、近所への事前説明など気遣いが必要。
→コンクリート基礎となるため、一度建設したら将来的に基礎部分を撤去することは困難になる。腹を据えて決断する必要があるということ。
→行政への届け出など書類手続きが必要となる場合がある。
2018年3月、隣の空き地に家が建つことが判明。2階のベランダに設置しているHF〜50MHzのグランドプレーン(CP5HS)のラジアル5本のうち3本が1mほど敷地の外に出ていることから、数ヶ月後のうちに撤去する必要が生じた。

これがきっかけとなり、数年前にルーフタワーによるアンテナのグレードアップ化について検討し、そのまま保留していた計画を再スタートさせることとした。
改めて見積条件を決めて、工事業者(2社)に概算見積を依頼。なお、基本コンセプトは次のとおり;
●アンテナのエレメントが敷地外にはみ出さないサイズ(回転半径)に抑えること
●7-14-21-50MhzにQRV。14と21MHzではDXペディションなどを追いかけることができるレベル、50MHzでは、次のサイクルでF2層によるDXが可能となる最低限のレベルを確保すること
●エアバンドの受信を含め144-430MHz用のグランドプレーンを上げること
HF〜50MHzのアンテナは、サイズがコンパクトで頑丈な作りとして定評のあるミニマルチ社から候補を絞った。ルーフタワーは、屋根との干渉軽減と少しでも地上高を稼ぐためにクリエイトデザイン社のCR-30(3.1m高)を選んだ。
同軸ケーブル、ローテーターなどの部材を含め工事総額の見積は約50万円。予算は想定内であったが、屋根に乗せる総重量を計算すると60kg超となった。アンテナ自体を軽量なものに選んだとしても、例えば、アンテナマストを頑丈なクリエイトデザイン社のM3(5.3m/60φ)とするだけで21kgとなる。
全体の構成は、下図のとおり;