FT8を運用する上で、普段から他局に妨害を与えない「綺麗な電波」を送信することを心掛けているが、先般、50MHz FT8でDX局をコール中、Free Messageにて「JA1AFR DIRTY」というメッセージを受信した。
「DIRTY」が具体的に何を意味しているのかは不明であり、発信者も確認できないため、そのメッセージ自体を気にすることはなかったが、以前から計画していた検証実験を行うよい機会と捉え、自局設備から送信する電波の品質を実際に観測・評価することにした。
まず、今回の検証対象となるスペクトラムと、その発生要因および現在実施している対策について整理する。
・バンド全体の入感状況や空きDFの選定
その中で、時折、以下のようなスペクトラムを示す局が見られる。
・送信DF近傍で左右に広がって見えるスペクトラム(以下「スカート」)
・送信DFを中心として左右等間隔に現れる不要スペクトラム(俗に「子」、さらに外側に現れる高次成分は「孫」と呼ばれている)
特に後者は、本来使用していない周波数領域にもエネルギーを放射することで、近接したDFで運用するDX局のデコード性能を低下させる要因となりかねない。
一方、スカートと子・孫は、いずれも送信DFを基準として現れるものの、その性質や発生要因は必ずしも同じではない。このため、今回の検証では両者を区別して観測することとした。
・電源ラインへの高周波回り込み
・USB・LANケーブル等への高周波回り込み
「DIRTY」が具体的に何を意味しているのかは不明であり、発信者も確認できないため、そのメッセージ自体を気にすることはなかったが、以前から計画していた検証実験を行うよい機会と捉え、自局設備から送信する電波の品質を実際に観測・評価することにした。
まず、今回の検証対象となるスペクトラムと、その発生要因および現在実施している対策について整理する。
■ WideGraph上の特徴的なスペクトラム
FT8運用では、WideGraphに表示される受信スペクトラムを見ながら、以下を視覚的に判断している。
・おおよその信号強度
・他局との被り具合
・マルチスレッド運用の有無 ・バンド全体の入感状況や空きDFの選定
その中で、時折、以下のようなスペクトラムを示す局が見られる。
・送信DF近傍で左右に広がって見えるスペクトラム(以下「スカート」)
・送信DFを中心として左右等間隔に現れる不要スペクトラム(俗に「子」、さらに外側に現れる高次成分は「孫」と呼ばれている)
特に後者は、本来使用していない周波数領域にもエネルギーを放射することで、近接したDFで運用するDX局のデコード性能を低下させる要因となりかねない。
■ 不要スペクトラムの発生要因
不要スペクトラムの発生要因として考えられるものを整理すると、概ね以下のとおりである。
① RF回り込みの影響
・AFラインへの高周波回り込み・電源ラインへの高周波回り込み
・USB・LANケーブル等への高周波回り込み
② AF入力レベル過大
以下の設定値が過大
・PC Sound Volume・JTDX Transmit Digital Gain
・TS-990 Optical Audio Input Level
・TS-990 Speech Processor In / Out
③ RF増幅系
・リニアアンプへの過大入力・リニアアンプの定格出力近傍での運用
※過大入力や定格近傍での運用により、増幅器が非線形領域で動作しやすくなる。
④ 受信・表示系の影響
・受信機内部での飽和・過入力※受信信号が強すぎると、受信機内部で不要なスペクトラムが発生する場合がある。
・WideGraphの表示特性
※強い信号では実際より広く表示される場合がある。
■ 現在実施している対策
① 物理対策
・PC→TS-990間のAF伝送路のSPDIF(光デジタル)化
・TS-990およびIC-PW1の同軸ラインへのコモンモードフィルタ挿入
・TS-990およびIC-PW1の電源ラインへ高周波チョーク・フェライトコア挿入
② 設定・運用対策
・PCおよびJTDXのAF出力レベルを低めに設定
・TS-990のALCがほとんど動作しないレベルに調整
・TS-990内蔵オシロスコープによりAF波形が飽和していないことを監視
・IC-PW1のALCが保護領域(レッドゾーン)へ入らない範囲で運用
・50MHzでのリニア使用時の出力は600Wとし、最大でも800Wを上限として運用
■ 実証実験の前提条件
① 送信側(TS-990+IC-PW1)
・PC Sound Volume: 20 / 100
・JTDX Transmit Digital Gain: -10.5 dB
・TS-990 Optical Audio Input Level: 30 / 100
・TS-990出力: 25W
・IC-PW1出力: 600W
普段から運用している上記設定のまま、Speech Processor In/Outを可変させTS-990のALCメータおよびオシロスコープでAF波形を確認しながら、以下の3ケースについて検証を行う。
Case1:ALCが全く振れない/AF波形が飽和していない

Case2:ALCが動作するがブルーゾーン内に留まっている/AF波形は飽和している

Case3:ALCが動作しレッドゾーンを超過している/AF波形は飽和している

※意図的にAF入力レベルを過大とした試み
② 受信側(FT-991)
・各種設定:ATT:Off AGC:Fast NB:Off IPO:AMP1 SHIFT:0Hz WIDTH:3000Hz・アンテナ:Diamond HR5V(1.8mH)
・電源系統:Jackery Explorer 2000 + DM-330MV
・ハードウエア:DELL Inspiron 14 5405 (Ryzen5)
・ソフトウエア:JTDXv2.2.159-32A
受信側の設定は実運用を再現した状態のまま固定し、上記ケースと測定距離による違いのみを比較する。
・ソフトウエア:JTDXv2.2.159-32A
受信側の設定は実運用を再現した状態のまま固定し、上記ケースと測定距離による違いのみを比較する。
<参考> ALCについて
ALC(Automatic Level Control)は、送信機(TS-990)へ入力されるAF信号が過大となった際に、送信出力を一定範囲内に保つための自動利得制御機能であり、送信系が過大入力や非線形領域へ入ることを抑制する役割を担っている。
AF入力レベルが適正であれば、ALCはほとんど動作しない(メータはほぼ振れない)が、AF入力レベルが高くなるとALCが動作し、送信系ゲインを自動的に下げる。
TS-990徹底解説集(24P)によると、ALCは終段PAを直接制御するのではなく、中間周波(IF)増幅段のゲインを制御することにより、結果として送信出力を一定範囲内に収めている。
ALCが大きく動作する状態は、送信系が過大入力または非線形動作に近づいていることを示しており、その結果としてIMD(相互変調歪:非線形動作により本来存在しない周波数成分が発生する現象)や不要スペクトラムが発生する可能性が高くなる。
KENWOODでは、ALCで出力を抑えるのではなく、適切な入力レベルに調整した結果としてALCがほとんど動作しない状態を推奨している。このためFT8では、PCのAF出力、TS-990 の Optical Audio Input Level、Speech Processor In/Outなどを調整し、ALCメータがほとんど振れない、または僅かに触れる程度となるよう設定することが望ましい。
すなわちALCの表示は、送信品質そのものを示すものではなく、送信機が適正な状態で動作しているかを確認するための一つの目安である。
参考までに、IC-PW1のALCは送信品質を直接制御するものではなく、リニアアンプを過入力から保護するための機能である。本検証で使用する600W運用では、ALCは保護領域(赤色領域)に達しておらず、過入力による送信品質への影響は考え難い。
<第2回>観測結果と品質評価 に続く~
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