2026年11月8日日曜日

341. EMEチャレンジ(1)

10月半ばにふと思い立ってEME(Earth-Moon-Earth)通信にチャレンジすることにした。構想から運用までの記録をまとめておく。

<ルックバック>


月面反射通信(Moon Bounce Communication)は、1950年代に米海軍がワシントンD.C.とハワイを結ぶ長距離通信の研究・実験を行ったことで知られている。一方で、アマチュア無線家も早くからその可能性に着目し、EME通信として独自の発展を遂げた。アマチュア無線におけるEME通信は、1960年7月に北米局同士が1.2 GHzで成功したのが最初とされている。

CQ ham radio誌では1970年代半ばから、EME通信に関するさまざまな記事が紹介されており、バックナンバーを幾つか目にしたが、大出力送信設備や巨大なアンテナシステムとその追尾制御、さらには微弱信号の受信技術など、どの記事も専門的な知識と技術力に加え、相応の設備投資が求められる内容であり、「とても簡単には手を出せない……」という印象しか持てなかった。


しかし近年、そのハードルは大きく下がったように感じる。無線機材などハードウェアの進歩はもちろんだが、何より2000年代に入り、JT65に代表される微弱信号通信方式が登場・発展したこと、そしてインターネットを通じて技術情報の共有や、運用に関する情報交換が容易になったことは大きい。さらに最近では、AI(LLM)の活用により、技術情報の調査や運用上の疑問点解決も手軽に行えるようになってきた。

現在では比較的コンパクトな設備による運用例も多く報告されており、ネットで国内外の事例を見ているうちに、設備や運用方法を工夫すれば十分挑戦できるのではないかと考えるようになった。

とはいえ、EMEは往復約77万km、地球約19周分に相当する距離を伝搬し、約2.5秒後に戻ってくる電波を利用する
。アマチュア無線の運用形態の中でも、依然として難易度の高い分野の一つである。

<基本スタンス>


今回は実験的な運用と位置づけ、アンテナの設置については、将来的な移動運用も視野に入れ、自宅の庭にアンテナを仮設することを前提に検討を進めた。

コストを抑えるため、アンテナや同軸ケーブル類は新たに購入するものの、無線機にはサブ機として所有しているFT-991AMを活用し、アンテナの方位・仰角の調整も手動で行う。

運用周波数については、無線機の制約から144MHzと432MHzの二択となるが、限られたスペースでもアンテナを設置でき、比較的高い利得が得られる432 MHz帯とした。

<マイルストーン>


11月末にARRL EMEコンテストが開催されることから、それまでの到達目標として以下の計画を立案。

・アンテナ等の選定・発注を終え、必要となる機材一式を揃える。(10月中)
・アンテナのセッティングを終えて運用可能な状態にする。(11月初旬)
・自局信号のエコー受信(スペクトル成分の検出)に成功する。(11月中旬)
・EME局の信号受信(デコード)に成功する。可能であれば ”Big Station” とのQSOを実現する。(11月下旬)

<アンテナ構成>


自宅の庭にアンテナを仮設する上で、平面図を描いて全体のイメージを固めた。
ウッドデッキの支柱(9cm角)に、直径32 mm、長さ1.8 mのアンテナマストを2本継いで固定し、約3 mの地上高を確保する。

この位置からは、仰角15度以上であれば、道路を挟んだ家屋な
どの障害物を越えるため、真東から南西の範囲で月が捉えられる。


アンテナは取り回しやすさ(回転半径2.5m)と重量(7.8kg)そしてフロントゲイン(22dBi)とのバランスを考慮し、クリエ-ト・デザイン製の20エレスタック(2x720)を発注。ちょうど販売店のセールス期間と重なり、少し安く入手できた。
アンテナ直下には、同軸ケーブル損失による受信系雑音指数の悪化を抑えるため、低NFのRFプリアンプを接続する予定。

<損失と給電電力>


同軸ケーブルは損失を極力抑えるため、8D-SFA-Liteを使用し長さは6.5mに留めた。それでもプリアンプを挿入する前提で、無線機から各アンテナの給電点までの損失を計算すると約1.54dBとなり、50W送信時にアンテナに給電される電力は約35W(17.5W+17.5W)となる見込み。

EME通信としては比較的小電力の運用となるが、この出力でどこまで通用するかが一つのテーマとなる。


<続く>



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